権力、野望、裏切り…消失した2兆ウォンの政治資金をめぐり、人生を賭けたマネーゲームが繰り広げられる『埋もれた心』。話題作はビジネスパーソンとしてもキャッチアップしておきたい。

『埋もれた心』ディズニープラスで2025年2月21日(金)より独占配信中
(C)2025 SBS & Studio S. All rights reserved.
大手企業を舞台にした本格リベンジ・サスペンス
ここ最近、女性主人公の活躍が目覚ましい韓国ドラマ。ところが今、復讐に燃える男性主人公の壮絶な闘いを描くドラマが久しぶりに大ヒットの兆しを見せている。
ディズニープラスで配信中のオリジナルシリーズ『埋もれた心』がそれだ。
同作は、莫大な裏金をめぐる主人公と黒幕の駆け引きを描く本格リベンジ・サスペンス。
大手企業の常務である主人公ソ・ドンジュは会長からの信頼が厚く、プライベートでは美人で有能な彼女と同棲している。仕事も恋も順風満帆、絵に描いたようなデキる男で、実はいつか自分が会社を掌握したいという野心も持っている。
それゆえに、後を継ぐ息子がいない会長の忠実な子分になり、賄賂や恐喝、その他の違法手段にも手を染める。エネルギー開発プロジェクトに関する韓国政府の政治資金2兆ウォン(約1058億円)を紛失させ、会社の裏金作りにも成功した。
そんな大役を果たし、会社にとって代えがたい存在になったと自負するソ・ドンジュ。この勢いで愛する彼女にプロポーズしようと決心した矢先、とても信じられない光景を目の当たりにする。さらには、裏金作りを仕切っていた影の黒幕から命を狙われるという始末だ。
ロマンスではなく、復讐に燃える男を演じるパク・ヒョンシク
先日、このソ・ドンジュ役の俳優パク・ヒョンシクが、ゲーテのためのオンライン独占インタビューに応じてくれた。

『埋もれた心』ディズニープラスで2025年2月21日(金)より独占配信中
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劇中では明るく笑うことなんて滅多になかったが、インタビュー中の彼は終始笑顔を絶やさない。そのギャップに驚きつつ、「女性ファンだけでなく、男性視聴者の心も掴めそうなドラマですね」と試聴した感想を伝えると、彼は次のように語った。
「そうなんです。言葉にしなくても目つきや雰囲気で語る、男同士のやり取りに共感していただけるんじゃないでしょうか。
それに、僕が演じたドンジュはとても現実的で、利害得失をしっかり計算する人です。仕事と恋を両立させようという欲もあって、そのために一生懸命努力する。僕は彼のそういう現実的な部分がとても魅力的だと思うのですが、日本の皆さんにもぜひ彼の魅力が伝わると嬉しいです」
これまでのパク・ヒョンシクは、女性主人公をサポートする、優しく正義感の強い役柄が多かった印象だ。ところが今回は、“フォトグラフィックメモリー(写真のようにものを記憶する能力)というドラマっぽい要素はあるものの、人間臭さい役柄。キスシーンはもちろん、ベッドシーンにも挑んだ彼の成長意欲の高さも垣間見える。
「世間から望まれる僕の姿はこれじゃないかもしれないという心配もありました。ただ、俳優として多様なジャンルやキャラクターに挑戦したいという気持ちのほうが、より強かったですね。共演する先輩の方々からもたくさん褒めていただいたので、自信を持って撮影に臨むことができました」
『埋もれた心』では、“影の黒幕”ヨム・ジャンソンに扮する大物俳優ホ・ジュノの演技も見逃せない。劇中ですさまじいオーラを放つホ・ジュノとの共演について、パク・ヒョンシクはこう振り返った。
「10年前、アメリカで一度だけ先輩とお会いしたんですが、それを覚えていてくださったんです。先輩から先に『覚えてるか?』と話しかけられて、一気に距離が縮まりました。
休憩の時はとても温厚で、イタズラ好きで、アドバイスも惜しまない先輩です。でも、本番に入ったらまるで別人になったように、おぞましいヨム・ジャンソンが座っている…。そういう姿を見ながら先輩への尊敬の気持ちがさらに深まりました」

『埋もれた心』ディズニープラスで2025年2月21日(金)より独占配信中
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尊敬してやまない先輩とパク・ヒョンシクが繰り広げるマネーゲームは、テンポよく進むので一瞬も目を離せない緊迫感がある。
このドラマが投げかけるメッセージについて、ドラマの原題である「宝島」を用いてパク・ヒョンシクはこう話した。
「今の時代、欲と野望が度を越えてしまったら、どこまでも無慈悲になれます。そういう時代を生きる僕たちは、どんな宝島を目指して進むべきでしょうか。人生のいろんな要素のなかで何を優先すべきでしょうか。『埋もれた心』は、人生の大切なことについて問いかけるドラマだと思います」
人間の欲深さをあぶり出しながら、ゾクゾクする展開が繰り広げられる『埋もれた心』。ドンジュの復讐心と野心がドラマをどう動かしていくのか楽しみだ。
■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。