韓国の5人組ガールズグループNewJeans(ニュージーンズ)の勢いが止まらない。デビュー曲からすべての楽曲が韓国と海外の音楽チャートで異例の快挙を達成。短期間で爆発的な人気を博している、アイドルグループの仕掛け人とは。ビジネスパーソンもキャッチアップしておきたい。連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
米タイム誌が選ぶ「次世代のリーダー」
韓国の5人組ガールズグループNewJeans(ニュージーンズ)の勢いが止まらない。
2022年7月22日のデビューから1周年を迎えたばかりというのに、もはやK-POP業界やZ世代のトレンドを引っ張る存在だ。アメリカの時事週刊誌『TIME』が発表した2023年の「次世代のリーダー(Next Generation Leaders)」にも選ばれている。
NewJeansというグループ名には、時代を問わず老若男女から愛されてきたジーンズ(Jeans)のように、「時代のアイコン」になるという抱負が込められている。さらには「New Genes(新しい遺伝子)」になるという覚悟もあるそうだが、それがまさに現実になった感じだ。
K-POPアーティストとしては唯一、名を連ねた。
メンバーは全員10代。最年長のMINJI(ミンジ)が2004年生まれの19歳で、最年少のHYEIN(ヘイン)が2008年生まれの15歳だ。全員が満遍なく優れた実力とビジュアルを持っており、それぞれが個性豊かでありながらもグループとして絶妙に調和を成す。
仕掛け人はBTSが所属するHYBEのCBO
そんなNewJeansをプロデュースしたのは、少女時代やEXO、NCTらのビジュアルディレクターを務めたミン・ヒジン氏だ。
彼女は韓国3大芸能事務所のひとつと言われるSMエンターテインメントで平社員から役員に昇りつめた“伝説の人”として有名だが、SMを退社後、BTSが所属するHYBEのCBO(最高ブランディング責任者)に就任。2021年末にはHYBEの傘下で独立レーベル「ADOR」を立ち上げ、大規模のオーディションを開催した後に初の所属アーティスト、NewJeansを世に送り出した。
業界最高のプロデュース力と資本力、優秀なメンバーたちが集まっただけに、NewJeansの成功はある程度予見されていた。しかし、こんなに短期間で爆発的な人気を博し、社会現象を巻き起すなんて誰が予想できただろうか。
デビュー曲「Attention」をはじめとしたすべての楽曲が韓国と海外の音楽チャートで異例の快挙を達成しており、2023年5月にはSpotifyストリーミング10億回再生を最短期間で達成したK-POP歌手としてギネス世界記録にも認定された。
広告だけでも100億ウォン(約11億円)超え
練習生という育成システムでアイドルをデビューさせるK-POP業界では、デビューまでにかかった費用をすべて差し引いてからようやくアーティストに高額ギャラが発生するといわれている。ギャラが発生するまでの期間は一般的に2~3年、長ければ5~6年といわれるが、NewJeansの場合はデビューからたった2ヵ月だったというから驚きだ。
メンバー全員がそれぞれ、シャネル、ディオール、グッチ、ルイ・ヴィトン、バーバリーなど世界的ラグジュアリーブランドのアンバサダーになるまでにも9ヵ月しかかからなかった。
彼女たちが広告モデル、アンバサダーなどに起用されたブランドは現在、計23社に及ぶ。契約の形態によってギャラのばらつきはあるだろうが、1年契約の場合に最低5億ウォン(約5500万円)以上と計算すれば、広告だけでも100億ウォン(約11億円)超えと推定される。
また、メンバーたちを象徴するウサギのキャラクターでIP(知的財産)ビジネスにも積極的であり、現在はLINE FRIENDS、Spotifyとコラボした公式グッズやキャンペーンを展開中だ。
勢いが止まらないNewJeans
このようなNewJeansの成功を受け、HYBEが傘下レーベル「ADOR」の保有株を100%から80%に下げたことは興味深い。
「中長期的な人材の確保とモチベーション向上のため、ADORの中核に持分の20%を売却した」というのがHYBEの説明だが、その中核とはNewJeansを手がけたミン・ヒジンで、彼女を後押しするための動きだというのが業界の分析だ。
2023年7月21日にリリースされた2nd EP『Get Up』が米ビルボードの「ビルボード200」で1位を記録するなど、まだまだその快進撃が続きそうなNewJeans。8月19・20日開催の「SUMMER SONIC 2023」にも出演が決まっているため、日本での注目度も高まっていくことだろう。今、エンタメ業界にはNewJeansという新しい時代の波が押し寄せている。
■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。
■連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」とは
ドラマ『愛の不時着』、映画『パラサイト』、音楽ではBTSの世界的活躍など、韓国エンタメの評価は高い。かつて「韓流」といえば女性層への影響力が強い印象だったが、今やビジネスパーソンもこの動向を見逃してはならない。本連載「ビジネスパーソンのための韓タメ最前線」では、仕事でもプライベートでも使える韓国エンタメ情報を紹介する。