ハリウッド ランチ マーケットを筆頭に、多方面で魅力的な店を展開する聖林公司。長年のファンを自認する見城徹が、都内某所にある聖林公司のゲストハウス「聖林庵」にて、その神髄に迫った。
背骨が太く貫かれているからこそ、人を惹きつける店や商品が生まれる
見城 こちら「聖林庵」にうかがったのは初めてですが、驚愕して言葉が出ません。和室の隅に倉俣史朗さんの「ミス・ブランチ」や骨董品があると思えば、世界各国の雑貨が整然と置いてある。趣味のいい唯一無二の世界を形成していて、圧倒的なグラウンドデザイン力を感じます。
垂水 ここは父(創業者のゲン垂水氏)がインスピレーションを得たものを集めた場所です。なかには石ころやセミの抜け殻などもあります。直感的に「いい」と思うもの(心に響いた物)を集めたこの聖林庵が、聖林公司らしさを直に感じていただける場所なので、見城さんにぜひ見ていただきたくて。
見城 ハリウッド ランチ マーケット(以下HRM)というお店ひとつとっても独自の世界観に没入するのに、こういった精神世界を貫いている場所があるからこそ、多くの人を惹きつける商品が生まれるのでしょうね。
垂水 先代が熱中してきたものを軸に、店や商品を形にしてきた部分はこれまで多々あります。例えばオクラという店は自分たちがむかし見た景色を再現したいという気持ちを軸にして、そこからスタッフを巻き込んで内外装を整えました。販売する商品は試行錯誤しながら、後から追いつくという具合に。
見城 まさに「たった一人の熱狂」だったんですね!
HRMを着こなすことが密かな誇りとなって
見城 今でこそ古着やアメカジのアイテムを置く店は多くありますけれど、世界観を貫きながら多くの店を展開できたのは、背骨の太さが全く違ったからなのでしょうね。ちなみにHRMは、アメカジ系の店としては、東京では最も古いショップですか。
垂水 もっとも古いショップかは不明ですが、アメリカで出会った一枚のメイドインジャパンのアロハシャツの言葉にできない花柄と色彩の美しさ、西洋とも東洋とも言えない不思議な魅力を感じ、古着の持つ独特な温かさやナチュラルな感覚の魅力を、1972年当時、日本に伝えました。
見城 僕は映画『大脱走』のスティーブ・マックイーンが好きで、彼のジーンズとTシャツの着こなしに今でも憧れています。それにはHRMのジーンズを着こなさないとダメだと思っていて、せっせと身体を鍛えているわけです。73歳でこんなにガッツリと買い物をする人はなかなかいないでしょうから、HRMの服を日常で着こなすことは、僕の密かな誇りです(笑)。
動き続ける姿勢が創業者の神髄を表している
垂水 見城さんがそう思ってくださるのは、感慨深いものがあります。父が1972年当時の日本に紹介したいと思ったアイテム(古着、パックT、インディアンジュエリー、デニム、インセンスなど)を並べてHRMをオープンし、それを50年後の我々も未だに魅力的だと思い同じアイテム紹介し続けていることも同じことかもしれません。ずっと動き続けているからこそ、変わらない部分が根底(NEVER CHANGE LIFE)にあるという。
見城 単なる思いつきで始まった店じゃないからこそだと思います。だから同じ世界感で今までずっと続いて、人の心を捉えているんです。聖林公司はカンパニーロゴに、「ARIGATO」という言葉が入ってるのが、またとてもいいですよね。
垂水 病弱だった私の兄が闘病中にいつも回りの人達に笑顔で伝えていた言葉で、兄が亡くなった後も側でその姿をみていた私の両親の経験がベースになっています。生きていられること、人と出会えること、関わる全てに感謝の気持ちを持たなくてはいけないという意味で、タグなどに入れるようになったのは相当前からです。
見城 桑港さんはそういったご両親の姿をずっと見て育ってきているわけですからね。僕もHRMに行くといつも思うことだけれど、スタッフの接客が全く押し付けがましくなくて親切なんです。
垂水 本当にありがとうございます。お客様の目線に立って、できる限りのサービスとホスピタリティ(目配り、気配り、心配り)は、常に大事にするようにしています。
熱狂・熱中できるものを常に探し続けていきたい
見城 HRMが千駄ヶ谷にオープンした1972年は、僕がちょうど就職した年。そして僕が興した幻冬舎があるのも、同じ千駄ヶ谷。社会人一年生の時にHRMが同じエリアにあったのだと思うと感無量です。桑港さんが聖林公司の社長を継いで4年ですが、将来的なビジョンはどういうものをお持ちですか。
垂水 NEVER CHANGE LIFEという言葉の通りに、これかも人の心に響く喜びと楽しさを提供出来るよう精進していきます。また他者をも巻き込むような、熱狂・熱中できるものは常に探していきたいと思っています。コラボレーションなどの取り組みもいくつかやっているので、そこからのご縁が広がって、いい方向に繋がるものが出てくるかなと思っています。
見城 HRMから始まって、これだけのショップやブランドを生み出していますからね。とにかく背骨がしっかりとある会社だと確信しました。これからどうなっていくかが、とても楽しみです。ちなみに今日、桑港さんが着ていらっしゃる服は、ご自身のお店の商品ですか。
垂水 ブルーブルー 神田店限定のアイテムです。ショップがある神田神保町は昔ながらの喫茶店や古本屋がある風情がある街です。街の雰囲気に合う独自のアイビースタイルを提案したいということもあり、いろいろと挑戦しているところです。
見城 個人的にはハワイにぜひショップを作っていただきたいですね。今は年に2回オアフに行きますが、なかなか目を見張るようなアートショップがないことが残念で……。HRMのようなショップがあったら嬉しくて、通ってしまいそうです。
垂水 それは光栄です、まずはハリウッドからオープンしたいので、その次にぜひ一緒に作りましょう(笑)。
聖林公司のブランドリスト
■HOLLYWOOD RANCH MARKET
創業者のゲン垂水が働いていたL.A.の店名に由来。“聖林公司”は東洋と西洋の文化の融合を図り、世界とコミュニケーションを取りながら仕事をしたいという意味も。
■OKURA
「日本人が昔見た景色を再現したい」と、蔵を彷彿とさせる姿で1993年にオープン。内装は当時のスタッフで仕上げをした逸話もあり、他にはない世界観を堪能できる店に。
■HIGH! STANDARD
HRMが手狭になり、昭和初期に建てられた外国の元軍医宅を改装しオープン。ワーク、ミリタリー、スポーツ、アウトドアをテーマに、ベーシックを追求したアイテムが揃う。
■TOLL FREE
食材の食べごろを四季の移ろいとともに指す「はしり、旬、名残り」の「はしり」の部分を意識したショップ。現在は、OKURAの2階にて展開している。
■BLUE BLUE JAPAN NARITA
成田空港第1旅客ターミナルに、2014年にオープン。国の玄関口にあり、旅のHUBとなる聖林公司のアンテナショップとしての役割を担う。
■BOMBAY BAZAR
「食は生命の源」をコンセプトに、1993年に代官山にオープン。安全・安心で美味な有機野菜や無添加調味料を用い、オーガニックカフェの先駆けともいわれる。
■Lotus Baguette
2008年に代官山にオープン。現在は目黒川と横浜にも店舗を拡大。国産小麦と天然酵母で練り上げ発酵させた生地に、有機食材をミックスして焼き上げたパンが並ぶ。
■ウララ
昭和初期の趣を感じる店内と、風情のある中庭のテラスが心地よい古民家カフェ。自家製出汁のうどんをメインに、各種スイーツや軽食を提供。日光天然氷のかき氷も人気。
問い合わせ
ハリウッド ランチ マーケット TEL:03-3463-5668