俳優・滝藤賢一による本誌連載「滝藤賢一の映画独り語り座」。約6年にわたり続いている人気コラムにて、これまで紹介した映画の数々を編集部がテーマごとにピックアップ。この年末年始に、あなたの人生と共鳴する一本をご提案! 今回は、ロマンス編
『ファントム・スレッド』
倒錯していくふたりの恋愛模様、どんどん度を越えて……。
ダニエル・デイ=ルイス61歳、俳優引退作! だそうです。前も靴屋になるから俳優引退するとか言っていたような……。彼はひとつの役の準備に2年も3年もかけるとのことなので、燃え尽きてしまうんですかね。この『ファントム・スレッド』では1年間、仕立て屋で修業し、最終的には独力でドレスを作れる腕前になったそうで引退後は仕立て屋になるとか。もうこれ、役作りなのか何だかわかりません。それに引き換え僕なんて、未練タラタラ。死ぬまで俳優という職業にしがみついていく所存でございます。
作品のほうは仕事中毒である読者の方ほど響く内容かと推測します。舞台は1950年代のロンドン。ダニエル・デイ=ルイスが演じる主人公はオートクチュールのデザイナー。経営を担当する姉共々独身で顧客のために身を捧げてきたところ、ある若いウェイトレスのスタイルに惚れこみ、モデルに採用。しだいにこの若い女性が彼の生活を侵食し始める――。
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『博士と彼女のセオリー』
感動ラブストーリーと思ったら大間違い! 男心を掴む渋みがある!
この号が出る頃(2015年1月時点)には結果が明らかになっているアカデミー賞。頼まれてもないのに僕も予想をしてみました。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を除く候補作4本を観て、僕が“The Oscar Goes To…”と主演男優賞を指名するなら迷わず、『博士と彼女のセオリー』のエディ・レッドメイン。感情、肉体ともに表現が素晴らしく2回も観ました。
エディが演じるのは実在の宇宙物理学者、スティーヴン・ホーキング博士。徐々に身体の自由が利かなくなる「運動ニューロン疾患」の宣告を医師から受ける場面が印象的でした。『象の背中』という映画で役所広司さんは癌の宣告を受けた時、“笑う”という表現をしていて驚いた記憶がありますが、本作は余命2年と告げられた時、医師から目線を外さず、淡々と見つめ続ける。それだけで気持ちを想像させるんですよ。もし僕が演じたら、呼吸と目線を外し、驚いたような表現をしてしまうかも。でも、それは感情の説明であり固定観念でもある。僕自身、過剰な表現をしないという原点に立ち戻るべきだなと思いました――。
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『アリー/スター誕生』
自分の根っこの部分を掘り起こし続けること
誰もが知るレディー・ガガの女優デビュー作『アリー/スター誕生』。『アメリカン・スナイパー』『ハングオーバー!』のブラッドリー・クーパーが相手役の超人気ロックシンガーを演じます。彼の初監督作品でもある今作。本当はクリント・イーストウッドが監督する予定だったのを譲り受けたそうです。
レディー・ガガはデビュー前、ストリップクラブでダンサーとして踊っていたりと随分と苦労していたのは有名な話。今回、本名のステファニーの名で演じ、自身の過去を反映したような役どころです。歌手になることを夢見て、昼はウェイトレス、夜はバーで歌う日々。ロックスターとの出会いで大きく人生が動き、歌姫へと変身していく様は、まさにレディー・ガガ本人です。
私が無名塾時代、仲代達矢氏は「チャンスは3回訪れる」と仰っていました――。
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『ロマンスドール』
蒼井優に心を奪われる
「映画とは出会いの瞬間を描く媒体であり、よき俳優とは出会いのときめきを表現できるものである」By 滝藤賢一。
さて、私は『はなちゃんのみそ汁』で女子大生役の広末涼子さんに瞬時に心を奪われる記者を演じた経験がありますが、あの衝撃に匹敵するひと目惚れの瞬間に再び出会ってしまいました。
この幸せを読者の皆様にお裾分けしたい。私からのお年玉、ぜひ受け取ってください。
その映画のタイトルは『ロマンスドール』。ドラマ『東京独身男子』のタナダユキ監督と高橋一生さんがタッグを組んだ作品です――。
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Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。初のスタイルブック『服と賢一 滝藤賢一の「私服」着こなし218』(主婦と生活社刊)が発売中。滝藤さんが植物愛を語る『趣味の園芸』(NHK Eテレ)も放送中。