立ち止まりつつ20代を生きる
22歳にして主演としての風格と、少女のような瑞々(みずみず)しさを併せ持つ、広瀬すず。自身のキャリアにおける勝負所は、17歳の頃に主人公の千早を演じた映画『ちはやふる』だったと振り返る。
「試されているな、と感じました。そもそも原作漫画のキャラクターが、高身長でロングヘアだったので、“いや私、ちっちゃいしボブだし”みたいな(苦笑)。作品の規模的に、一度参加したらしばらく抜けられないというプレッシャーもありました。今考えると、周りの人たちが応援してくれていたことがわかるけれど、当時は、自分に向けられる期待が苦しかった。自分を保つためにはひとりで戦うしかない。自分をそんなふうに奮い立たせていた記憶があります」
当時、本誌のインタビューで、「戦い続けていつか『私、女優やってます』と言えたらいい」と発言した。彼女がその後の勝負に勝ち続けていることは、その活躍を見れば明白だ。
「今は“戦う”という意識はなくなって、楽しくやりたいという気持ちが大きいです。あと、デビューしてからずっと休みがなくても平気だったんですけど、去年、家でゆっくり過ごす時間を知ったせいか、働くということに対して『仕事か……』とため息をつくこともあります。だいぶ大人になりました(笑)」
がむしゃらに邁進(まいしん)した10代を終えて、立ち止まりつつ20代を生きる広瀬すずの、最新主演作は『ドラマWスペシャル あんのリリック–桜木杏、俳句はじめてみました–』。人付き合いが苦手な芸大生役だ。
「以前は自分とかけ離れた役を負担に感じることもあったけれど、最近は等身大の役が増えてきました。役と自分のテンションが合うとすごく楽しいです」
等身大の役柄だからこそ、作中の出来事や台詞、そして作品が孕(はら)むメッセージが、広瀬自身にダイレクトに響くという。
「俳句の先生の、『俳句に優劣はあるけれど、点数が高いからいい句であるという絶対的評価にはならない』という台詞に、私自身が救われました。無責任に聞こえるかもしれないけれど、興行成績や視聴率といった数字に縛られたくないんです。自分たちはその作品が面白いと思って参加しているし、ある人から『主人公を演じているすずが面白いと言わなくてどうするんだ』と言われたこともあって。だから私はこれからも、自分が出ている作品は面白いんです、と言い続けようと思います」