役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
価値観の異なるふたりが、旅を通じて生涯の友となる
今回、紹介するのは見事にアカデミー作品賞を受賞した 『グリーンブック』。滝藤、オッサンふたりに骨抜きにされました。
時代は1962年。アメリカでは’64年まで黒人をはじめ、有色人種に公共の場での行動を制限するジム・クロウという差別的な法律がありました。その対策として黒人が利用できる施設を記したガイドブックが『グリーンブック』。これを片手にNYから南部へ演奏ツアーに出かける黒人の一流ピアニストと、その運転手を請け負ったイタリア系用心棒のロードムービーです。
実在のピアニスト、ドクター・シャーリーを『ムーンライト』のマハーシャラ・アリが演じています。知的で気品があり、立ち居振る舞いが美しい。
一方、運転手のトニー・リップは強面だが家族思いの、その辺にいそうなオッチャン。モデルとなった方は『ゴッドファーザー』などマフィア映画に出ていたそう。このトニーを『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役で名を馳せた、ヴィゴ・モーテンセンが14㎏も増量し、開襟シャツを厚い胸板でパツンパツンにさせながら演じています。超いかついのに小鳥のような甲高い声がとてもセクシー。やはり男はギャップですねぇ。
そういえば、私がシチリア島に行った時、エスプレッソを片手に田舎町を満喫していると、半袖・短パンでバイクにまたがったやんちゃなオッチャンのグループが現れ、葉巻を片手にジェラートを食べていましたよ。めちゃくちゃ格好よくて、こんなオッチャンになりてーって思いましたもの。
この映画はトニーの息子が父親の自慢話を作品にしたことでも話題です。私の亡き父は寡黙で自分のことをあまり語りませんでした。なので、私は父のことをほとんど知りません。もっといろんな話をすればよかったと、今になって思います。そのせいか、子供たちが大人になった時に自慢できる、痺れるようなとっておきの仕事のエピソードを作って聞かせないと! とよくわからない使命感にかられる今日この頃でございます。
『グリーンブック』
『メリーに首ったけ』のピーター・ファレリーによる話題作。1962年、人種差別の激しい南部へとツアーに行くことになった黒人ピアニストとイタリア系用心棒の凸凹の旅模様を笑いと感動で描いたもの。本年度のアカデミー賞において作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞した。
2018/アメリカ
監督:ピーター・ファレリー
出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ
配給:ギャガ
3月1日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開