2023年の“年グルマ”として「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」に輝いた軽の電気自動車、日産 サクラ。2022年5月の発売から4万台(※)以上を受注し、現在でも納車は半年待ちと大ヒットを飛ばす。その開発責任者、日産自動車でチーフ・ビークル・エンジニアの坂(ばん)幸真氏とCOTY選考委員の吉田由美氏が人気の理由を語り合った。連載「NAVIGOETHE」とは……
COTY2022-2023イヤーカー受賞!
吉田 日産 グローバル本社ギャラリーからリモートでつないでいます。まずはCOTYの受賞おめでとうございます。しかも軽自動車としては初めてのノミネートとなりました。
坂 どうもありがとうございます! 本日は厚木の日産テクニカルセンターにおり、お目にかかれず。おかげさまで今年は「COTY」はじめ、「日本自動車殿堂」「RJC カー・オブ・ザ・イヤー」と、3つの大賞をいただくことができました。
吉田 他の賞典ではインポート・カー・オブ・ザ・イヤーにヒョンデ アイオニック5、デザイン部門はBMW iXが選出されるなど百花繚乱。いずれも電気自動車で日本市場におけるEVシフトの始まりを象徴するかのようでした。そのなかでもサクラはCOTY選考委員の3分の1を超える23名から満点(10点)を獲得するほどのダントツ1位。私もCOTYで満点を入れましたよ。
坂 それはありがとうございます。受注好調という環境も追い風になったと思いますが、このサクラの受賞理由はやはり「商品力」。デザイン、価格、走り、どこをとってもよくできている。自分で言うのもなんですが、排気量660cc以下、長さ3.44m以下、幅1.48m以下、高さ2.0m以下の軽自動車規格という制約のなかで、次元の超えたものが商品化できたなと。
吉田 制約を最大限に活かした坂さんの巧名ですね。
日本の電動“花”を咲かせる存在となる
吉田 日産 サクラはお住まいの地域によりますが補助金の活用で、実質200万円で乗れます。必要にして十分な180kmの航続距離。軽自動車とは思えない“規格外”のクオリティと、乗り心地のよさにも驚きました。
坂 そこはこだわりましたね。
吉田 まさにいいとこずくめのサクラ。車両開発におけるチャレンジを教えてください。
坂 やはり価格ですね。世間にリーズナブルな電気自動車と思われるには何としても200万円台で売らないと市場には響かない。エントリーモデルとはいえ、見た目もこれまでの軽自動車を超えたかったし、超えなきゃいけないクオリティと価格との均衡で、産みの苦しみでした。
吉田 無理を言った側、言われた側ですか?
坂 それは両方ですね(笑)。いかに不満のない航続距離で、バッテリーのコストを抑えるか。「この部品はもっとコストを下げられないのか?」「他車種と共用できないか?」。開発費を抑え、かけるところにはお金をかける、というメリハリも成功したポイントじゃないかなと。
吉田 なるほど。新しい技術開発はありますか?
坂 実はサクラのために作った新技術はないんです。サクラは日産が開発、三菱が生産を行い、日産だけでなく、サプライヤー、生産した三菱の工場の方々、みんなが頑張りました。
吉田 この完成度の高さを考えると、日本に電動化の花を咲かせる存在となってほしいですね。
坂 実は日本の電気自動車の普及率はまだ1%ほど。まずは多くの方々にサクラを見て、知っていただくことかなと。
吉田 日本の道で見る、桜花爛漫なサクラが楽しみですね。
YUKIMASA BAN
1963年愛知県生まれ。日産サクラの開発を指揮した日産自動車のチーフ・ビークル・エンジニア。愛車は日産の電気自動車、リーフ。
YUMI YOSHIDA
岩手県生まれ。1998年より、モデル業の傍ら日産の安全運転講習の指導員に。カーライフエッセイストとして活動する。COTY選考委員。
日産 サクラ
ボディサイズ:全長3395×全幅1475×全高1655㎜
ホイールベース:2495㎜
車重:1080kg
モーター(47kW/195Nm)
問い合わせ
日産自動車お客様相談室 TEL:0120-315-232
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