CAR

2023.02.16

日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞の電気自動車、日産「サクラ」ヒットの理由

2023年の“年グルマ”として「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」に輝いた軽の電気自動車、日産 サクラ。2022年5月の発売から4万台(※)以上を受注し、現在でも納車は半年待ちと大ヒットを飛ばす。その開発責任者、日産自動車でチーフ・ビークル・エンジニアの坂(ばん)幸真氏とCOTY選考委員の吉田由美氏が人気の理由を語り合った。連載「NAVIGOETHE」とは……

日産「サクラ」と吉田由美さん

日本市場待望となる軽の電気自動車で、三菱eKクロスEVとの兄弟車。日産が車両開発を担当し、生産を三菱が担う協業によって開発された。軽自動車規格ながら上質なデザイン、180kmという航続距離、そして200万円(補助金活用)という手頃な価格が市場に受け入れられ、すでに約4万台以上の受注(※eKクロスEVとの合計)を記録した。¥2,548,700〜

COTY2022-2023イヤーカー受賞!

吉田 日産 グローバル本社ギャラリーからリモートでつないでいます。まずはCOTYの受賞おめでとうございます。しかも軽自動車としては初めてのノミネートとなりました。

 どうもありがとうございます! 本日は厚木の日産テクニカルセンターにおり、お目にかかれず。おかげさまで今年は「COTY」はじめ、「日本自動車殿堂」「RJC カー・オブ・ザ・イヤー」と、3つの大賞をいただくことができました。

吉田 他の賞典ではインポート・カー・オブ・ザ・イヤーにヒョンデ アイオニック5、デザイン部門はBMW iXが選出されるなど百花繚乱。いずれも電気自動車で日本市場におけるEVシフトの始まりを象徴するかのようでした。そのなかでもサクラはCOTY選考委員の3分の1を超える23名から満点(10点)を獲得するほどのダントツ1位。私もCOTYで満点を入れましたよ。

 それはありがとうございます。受注好調という環境も追い風になったと思いますが、このサクラの受賞理由はやはり「商品力」。デザイン、価格、走り、どこをとってもよくできている。自分で言うのもなんですが、排気量660cc以下、長さ3.44m以下、幅1.48m以下、高さ2.0m以下の軽自動車規格という制約のなかで、次元の超えたものが商品化できたなと。

吉田 制約を最大限に活かした坂さんの巧名ですね。

NCTY受賞の日産「サクラ」

「日本カー・オブ・ザ・イヤー」とは?
市販される乗用車のなかから年間を通じて最も優秀なクルマを選定する賞典。2022年12月、選考委員60名による選考会と表彰式が行われ、日産サクラ/三菱eKクロスEVが2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーならびにK CAR オブ・ザ・イヤーを受賞した。

日産「サクラ」新型発表会の様子

2022年5月のサクラ新型発表会では坂氏が登壇。発売前から受注は1万台に達し、その人気から2022年秋は受注停止に。2023年より受注再開。

日本の電動“花”を咲かせる存在となる

吉田 日産 サクラはお住まいの地域によりますが補助金の活用で、実質200万円で乗れます。必要にして十分な180kmの航続距離。軽自動車とは思えない“規格外”のクオリティと、乗り心地のよさにも驚きました。

 そこはこだわりましたね。

吉田 まさにいいとこずくめのサクラ。車両開発におけるチャレンジを教えてください。

 やはり価格ですね。世間にリーズナブルな電気自動車と思われるには何としても200万円台で売らないと市場には響かない。エントリーモデルとはいえ、見た目もこれまでの軽自動車を超えたかったし、超えなきゃいけないクオリティと価格との均衡で、産みの苦しみでした。

吉田 無理を言った側、言われた側ですか?

 それは両方ですね(笑)。いかに不満のない航続距離で、バッテリーのコストを抑えるか。「この部品はもっとコストを下げられないのか?」「他車種と共用できないか?」。開発費を抑え、かけるところにはお金をかける、というメリハリも成功したポイントじゃないかなと。

吉田 なるほど。新しい技術開発はありますか?

 実はサクラのために作った新技術はないんです。サクラは日産が開発、三菱が生産を行い、日産だけでなく、サプライヤー、生産した三菱の工場の方々、みんなが頑張りました。

日産「サクラ」のフルフラットシート

航続距離180km、普通充電と急速充電に対応する大容量バッテリーを床下に収めた独自構造を採用。広い室内空間では、ほぼフルフラットにシートを倒せる。

日産「サクラ」の車内

軽自動車とは一線を画した洗練のインテリア。

吉田 この完成度の高さを考えると、日本に電動化の花を咲かせる存在となってほしいですね。

 実は日本の電気自動車の普及率はまだ1%ほど。まずは多くの方々にサクラを見て、知っていただくことかなと。

吉田 日本の道で見る、桜花爛漫なサクラが楽しみですね。

リモートで取材を受ける日産「サクラ」開発責任者の坂幸真氏

神奈川県厚木市にある日産テクニカルセンターでオンラインで取材を受ける日産自動車のチーフ・ビークル・エンジニア坂氏。「サクラは見てよし、乗ってよし、使ってよし。これまで軽自動車では実現できなかったクオリティを目指しました。きっと喜んでもらえると確信しています」

YUKIMASA BAN
1963年愛知県生まれ。日産サクラの開発を指揮した日産自動車のチーフ・ビークル・エンジニア。愛車は日産の電気自動車、リーフ。

YUMI YOSHIDA
岩手県生まれ。1998年より、モデル業の傍ら日産の安全運転講習の指導員に。カーライフエッセイストとして活動する。COTY選考委員。

日産 サクラ
ボディサイズ:全長3395×全幅1475×全高1655㎜
ホイールベース:2495㎜
車重:1080kg
モーター(47kW/195Nm)

問い合わせ
日産自動車お客様相談室 TEL:0120-315-232

■連載「NAVIGOETHE」とは……
魂を刺激する、見て・乗って・操る楽しさのあるクルマ。所有欲をくすぐるステータスシンボルから、クルマと対話できる生粋のスポーツカー、ヘリテイジのある一台まで、連載NAVIGOETHEでは、大人の我儘をかなえる、心躍るクルマを紹介する!

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TEXT=吉田由美

PHOTOGRAPH=隈田一郎(K.Graphics-Inc.)

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