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2023.01.03

2023年を大予想! クルマは乗馬のような趣味になる!?

電動化と自動運転が進むと、「愛車」という概念が薄くなるかもしれない。ではそのとき、クルマという趣味はどのように姿を変えるのだろうか? 連載「クルマの最旬学」とは……

EQS450+にオプション装備、EQS53 4MATIC +に標準装備される「MBUXハイパースクリーン」

コックピットからファーストクラスへ

メルセデス・ベンツの電気自動車の最上級モデル、EQS450+試乗記でお伝えしきれなかったことがある。加速とか乗り心地とは別の部分に、未来のクルマの一端を見たような気がしたのだ。

試乗車はオプションのMBUXハイパースクリーンを備えていて、この装備を簡単に説明すると、助手席の正面にも液晶画面がどんと構えている。では、助手席に座った人は、この液晶画面で何を見るのか。カーナビ画面にして、「目的地まであと5kmか」という使い方もできるけれど、多くの人はそうはしないだろう。

アプリを立ち上げると、テトリスや神経衰弱といったゲームをすることができるし、ブラウザを立ち上げてYouTubeで動画を見たり、Googleで調べ物をすることもできるのだ。

EQS450+にオプション装備、EQS53 4MATIC +に標準装備される「MBUXハイパースクリーン」

EQS450+にオプション装備、EQS53 4MATIC+に標準装備される「MBUXハイパースクリーン」。運転席、センター、そして助手席の液晶画面を巨大なガラスで覆う形状となっている。助手席に座るパッセンジャーがBluetoothヘッドフォンをつないでドライバーに音が伝わらないようにすると、助手席側の液晶画面でテレビ以外の動画を視聴することができる。

電動化と自動運転に注目が集まるけれど、このふたつが実現した先の世界を、メルセデス・ベンツは見据えている。つまり、車内が静かで快適になり、運転をクルマに任せるようになったら、人はなにをするのか、ということを考えている。映画を観たり音楽を聴くエンターテインメント空間になるかもしれないし、インターネットにつないで仕事をする移動オフィスになるかもしれない。

電動化と自動運転が進むと、「切れ味の鋭いハンドリング」とか、「胸のすくような加速」といった従来のファン・トゥ・ドライブは、ほとんど意味を持たなくなる。だって自動運転だから。

それよりも、音質や画質のいいAV機器とか、豊富なゲームの種類とか、仕事のしやすいインターフェイス、あるいはゆっくりと身体を休めるシートなどが求められる。いままでのクルマの運転席は、飛行機のコックピットに例えられてきた。けれどもこれからの高級車の運転席は、飛行機のファーストクラスと近い存在になる。

BEV (バッテリーに蓄えた電気だけで走る純粋な電気自動車)に特化して設計されたメルセデス・ベンツEQS

当初からエンジンの搭載を想定せず、BEV (バッテリーに蓄えた電気だけで走る純粋な電気自動車)に特化して設計されたメルセデス・ベンツEQS。走行性能だけでなく、情報伝達とエンタメ機能を統合するインフォテインメント機能にも新機軸を見せた。

同じような考え方のコンセプトカーを、アウディが発表している。まず最初に、乗員が快適に感じる室内空間を設計して、そこからエクステリアをデザインするというコンセプトを採用しているのだ。

アウディは、ドライバーを取り巻く環境を「スフィア(球体)」と呼び、この空間で過ごす時間を最善のものにすることに心血を注ぐ。

従来であれば、デカくて重たいエンジンを中心にエクステリアをデザインして、最後に居住空間であるインテリアをデザインしたけれど、アプローチが逆になる。電動化と自動運転は、ただエンジンがモーターに切り替わるだけでなく、クルマの作り方やあり方を根底から変える。

Audi skyphere conceptというコンセプトカー

アウディは、まず乗員が快適に過ごせる空間をデザインするというコンセプトを打ち出す。写真はAudi skyphere conceptというコンセプトカー。

左からAudi skyphere concept、Audi grandsphere concept、Audi urbansphere concept。

左からAudi skyphere concept、Audi grandsphere concept、Audi urbansphere concept。「sphere(スフィア)」とは球体を意味し、ドライバーの周囲の環境をアウディはこう呼ぶ。次代のクルマはなによりもまず、スフィアの環境を整えることが大事だとアウディは説明する。

クルマ好きは死なず、消え去りもしない

2022年、カーシェアリングやクルマのサブスクリプションサービスを使う人が周囲にも増えてきた。交通エコロジー・モビリティ財団の調査によれば、カーシェアリング利用者は260万人を超え、対前年比でプラス17.4%増となっている。10年前の利用者は16万人程度だったというから、約16倍になっている。

トヨタとレクサスの車両を扱うサブスクリプションサービスを提供する会社、KINTOのデータによれば、クルマを所有していない人のうち51%がサブスクの利用を考えているという。

電動化と自動運転が進めば、カーシェアリングやサブスクはさらに増えるはずだ。自分の意志で動かすわけではないのでクルマに相棒といった感情は抱きにくいし、PCやスマホのように新しい機能のプロダクトにどんどん乗り換えたくなる。

ここで、「切れ味の鋭いハンドリング」を味わいたい従来のクルマ好きが絶滅するかというと、そんなことはない。好例が、コーンズが2023年に千葉県・南房総にオープンする「THE MAGARIGAWA CLUB」というプライベート・ドライビングクラブだ。

これは、コーンズの顧客だけでなく、審査をクリアすればだれでも会員になり、コースやクラブハウスを利用できる施設だ。会員権を譲渡したり売買できることも含めて、ゴルフクラブに近い。

施設には宿泊施設やスパ、プール、レストラン、そして専用メカニックが常駐するガレージ、さらにはハイキングコースやテニスコートまで整備されるという。

ちなみにヴィラ形式のオーナーズパドックは9戸のうち第一期募集の5戸が即日完売、2020年に2500万円で売り出された会員権は、2023年1月時点で3600万円になっている。

本連載で紹介したポルシェ・エクスペリエンスセンター東京の例もあるように、エクスクルーシブな環境でクルマを楽しむ流れは、さらに強まるのではないだろうか。

電動化と自動運転によってクルマ社会は大きく変わる。一方で、エンジン車を愛する人々は死なない。乗馬クラブで乗馬を楽しむように、クルマ趣味は生き残ると予想する。

Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

過去連載記事

■連載「クルマの最旬学」とは……
話題の新車や自動運転、カーシェアリングの隆盛、世界のクルマ市場など、自動車ジャーナリスト・サトータケシが、クルマ好きなら知っておくべき自動車トレンドの最前線を追いかける連載。

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TEXT=サトータケシ

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