競合メーカーがこぞってベンチマークに据えるほど高性能なスーパースポーツカーを送りだすマクラーレン。新たに追加されたのが765LTスパイダーと720S GT3Xである。前者は一般道でもサーキットでもドライビングを満喫できるロードカーに対し、後者はより高度なコーナリング性能を実現するためのサーキット専用車として仕立てられたという違いがある。連載【NAVIGOETHE】Vol.64
手足のように操れるスーパースポーツカー
スーパースポーツカーの楽しみ方はいくとおりもある。優美なスタイリングを愛(め)でるのもいいし、サーキットやワインディングロードで純粋なスピードに酔いしれるというのも、楽しみ方のひとつであるに違いない。
イギリスの名門F1チーム“マクラーレン”が手がけるスーパースポーツカーもまた、そういった歓びに溢れているが、それだけに留まらない。ドライバーが意のままに操れる扱いやすさ、という面でも、マクラーレンは傑出した存在なのである。
「扱いやすいスーパースポーツカー」という表現に軽い違和感を覚える生粋のクルマ好きも少なくないはず。しかし、同様の思想はF1グランプリを戦う最新のレーシングカーにも息づいている。なぜなら、レーシングカーの速さを引きだすレーシングドライバーもまた、ひとりの人間に他ならないからだ。
そんなマクラーレンを操っていると、あたかもクルマが自分の四肢の延長線上に存在しているかのような、不思議な感覚を覚えることになる。この、クルマとドライバーの深い結びつきこそ、マクラーレンの真骨頂といっていいものである。
720Sの動力性能をさらに引き上げた2台
先ごろリリースされたマクラーレン 765LT スパイダーも、クルマとドライバーの結びつきをとりわけ重視して造り上げられたスーパースポーツカーといえる。765LT スパイダーをドライブするために訪れたのは、スペイン北部のバスク地方。そのオープンロードとサーキットで、マクラーレンの最新モデルを駆った。
765LT スパイダーを一般道で走らせてまず印象に残ったのが、その乗り心地のよさだ。荒れた路面でも足回りからのショックが効果的に吸収され、不快な印象を与えない。しかも、意のままに操れるドライバビリティは健在。おかげで、スペインのカントリーロードをゆっくりと流しているだけでも、世界最高峰のスーパースポーツカーと深くつながりあっているという筆舌に尽くしがたい歓びを味わうことができた。
その一方で、エンジンを高回転域まで引っ張った時のパワー感やサウンドは、数あるマクラーレンのなかでもトップクラスに位置するほど官能的。しかも、スイッチひとつで開閉できるルーフを開け放てば、圧倒的な開放感とあいまって、765LT スパイダーの官能性は何倍にも増幅されるのだ。
試乗の舞台をサーキットに移しても、765LT スパイダーは輝きを失わなかった。前述した高回転域のエンジンパワーをフルに駆使すれば、コーナリング中にリアタイヤのグリップを失わせ、いわゆるオーバーステアの姿勢を引きだすこともできるが、そこまで踏みこめる腕利きは滅多にいないはず。むしろ、765LT スパイダーの圧倒的なコーナリング性能に舌を巻くドライバーが大多数だろう。
それでも不服という強者には720S GT3Xが用意されている。これはレーシングカーさえ凌ぐパフォーマンスが与えられたサーキット専用車で、価格も1億円オーバーと超ド級。これで腕を磨けば、レースでも通用するドライビングテクニックが身につくはずだ。
マクラーレン 765LT スパイダー
ボディサイズ:全長4600×全幅1930×
全高:1193mm
ホイールベース:2670mm
エンジン:V型8気筒DOHC+ツインターボ
排気量:3994cc
最高出力:765ps/7500rpm
最大トルク:800Nm/5500rpm
駆動方式:RWD
変速機:7速DCT
乗車定員:2名
マクラーレン 720S GT3X
ボディサイズ:全長4746×全幅2040mm
全高:未公表
ホイールベース:未公表
エンジン:V型8気筒DOHC+ツインターボ
排気量:3994cc
最高出力:720ps/7000-7500rpm
最大トルク:770Nm/5500-6500rpm
駆動方式:RWD
変速機:6速セミAT
乗車定員:2名