1963年にブルース・マクラーレンが設立したレーシングチームがブランドの始まり。その名はレースシーンを席巻し世界三大レース(F1・インディ・ル・マン)も制した。’90年代には3シーターのF1、2000年代にはメルセデス・ベンツSLRマクラーレンといった希少車を生産。そして’09年、レース部門から独立したマクラーレン・オートモーティブ設立。本格的なロードカーメーカーとなり、現在にいたっている。連載【NAVIGOETHE】Vol.61(後編)
新型GTに見るグランドツーリング性能
身につけているもののすべてに理由があるというマクラーレンのポリシーのもと、ツアラーという新たなスーパースポーツのステージ上に登場したマクラーレン“GT”。その存在理由もわかるドライブを九州の都市部から雄大な自然のなかで味わうことができた。
美しいフォルムはライバルたちと比べ200㎏以上も軽量かつエアロダイナミクスに極めて優れた機能/性能美を纏(まと)う。前後にラゲッジが備わるGTのとりわけ荷室後方のスペースは、GT独自の設計によりエンジン搭載位置に工夫を加えることで、ゴルフバッグやスキー板なども積載可能だ。
さらに意識的に後方ガラスエリアも大きくとられ視認性に優れる。これが実に感覚的な安心感にも繋がり、スーパーカーが最も苦手とする駐車時のストレスが軽減。日常のグロッサリーのハシゴも旅先でのスポット巡りも、積極的に行こうと思える点が素晴らしい。ちなみにマクラーレンの象徴的ともいえるディヘドラルドアもレーシングカーのような骨格構造を持つがゆえの乗降性への配慮であり、それは軽くスマートな所作を可能にしている。
目の肥えた大人をも満足させる上質な素材を採用したコクピット。シンプルに凝縮された計器類や操作器類に向き合うようにドライバーズシートに収まればスパルタンなスーパースポーツの世界感に包まれる。
走りだせば、0から100㎞/hをたった3.2秒で加速する4ℓV8ツインターボエンジンはたとえ1センチほどのアクセル踏度で街中を50㎞/hで、もしくは高速クルーズしていても、乗り心地に硬質さと滑らかさを伴いながらGTの音質とビート感を確かに伝えてくれる。
それはドライバーをいたずらに刺激するものではなく、スーパースポーツモデルを輩出するエンジニアたちがこのグランドツアラーに必要な加減と洗練を性能に採り入れた、まさにマクラーレンのインテリジェンスと真価が伝わるものだった。
その一方で“雲の上の避暑地”と銘打つ雲仙岳の麓を中心に仁田峠界隈のアップ&ダウンと幾重にも続く大小のコーナーでは、スーパースポーツのDNAの一面を覗かせる走りを楽しむことができた。控えめであったエグゾースト音も、女性の手にもなじむステアフィールも、GTの本懐はやはりスポーツだったかと思えるソリッド感が鮮明になる。このドライブフィールの変化=グラデーションこそGTらしさだと思えた。レッドゾーンは計り知れない。
目的地でのあれこれに想像を巡らしながらドライビングが快適に楽しめるモデルとのカーライフは実に豊か。世の中、それにかなうモデルはさまざまあるが、ことスーパーカーとなれば話は少し違ってくる。マクラーレンGTはさらに別格だ。
マクラーレン GT
ボディサイズ:全長4685×全幅2016×全高850mm
ホイールベース:3003mm
エンジン: V型8気筒+ツインターボ
排気:3994cc
最高出力:815ps
最大トルク:800Nm
駆動方式:MR
変速機:7DCT
乗車定員:2名
車両価格:¥200,681,070~[予定価格]
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