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2021.08.17

【試乗】フォルクスワーゲンの異端的なワゴン「アルテオン」の底力

歴史ある名車の”今”と”昔”、自動車ブランド最新事情、いま手に入れるべきこだわりのクルマ、名作映画を彩る名車etc……。本連載「クルマの教養」では、国産車から輸入車まで、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材を行う自動車ライター・大音安弘が、さまざまな角度から、ためになる知識を伝授する!

新感覚のVWであるアルテオン、今年7月に初のマイナーチェンジ

フォルクスワーゲン(VW)といえば、ゴルフに代表されるハッチバックモデルがポピュラーだが、最近はティグアンなどのSUVにも力を入れている。それでもモデルラインは、実用的なモデルが中心。その中で異端的な存在が、2017年登場の4ドアクーペ「アルテオン」だ。VWにとっても久しぶりのクーペモデルだけに、かなり意気込んで開発されており、真面目なVWのイメージを打ち破るスタイリッシュなデザインと「ゴルフR」などのスポーツモデル譲りのアグレッシブな走りを融合させたスペシャルティなクーペに仕上げられていた。

日本では、VWのフラッグシップモデルの役目も担い、549万円からのプライスを掲げていたが、輸入車のフラグシップモデルとしては現実的な価格帯といえる。そのため、そのスタイルに惚れ込んだ新たな顧客層の開拓にも繋がった。そんな新感覚のVWであるアルテオンが、2021年7月に初のマイナーチェンジを受けた。

今回の改良は、化粧直しと各部のアップデートがメイン。キャラ立ちしたモデルでもあるため、イメージを変化させるような劇的な変更は加えられていないが、新たにワゴンタイプの「シューティングブレーク」が追加された。シューティングブレークとは、狩猟用の馬車を指す言葉。狩猟用といっても趣味性の高いものであり、いうなれば、お金持ちの遊び用の馬車であった。これが転じて自動車では、クーペのラゲッジスペースを拡大したスタイリッシュなワゴンを指すようになった。今回の試乗車は、新たに仲間に加わったシューティングブレークである。

流麗な4ドアクーペのアルテオンをワゴン化したシューティングブレークだけに、かなりスタイリッシュなスタイルにまとめられている。街中に溢れるステーションワゴンのようなビジネスライクな雰囲気はなく、リヤ周りの造形もクーペ風味が強い。多数派となる正統派ワゴンならば、もっとボクシーなスタイルに仕上げるだろう。その方が、積載能力も高まるからだ。互いのラゲッジスペースを比べてみると、シューティングブレークが標準時で565L~最大1632Lを確保。これに対してクーペは、標準時563L~最大1557Lとなる。意外とクーペも荷室が広いのだ。これは4ドアクーペながら、大型のテールゲートを備えるアルテオンの強みでもある。

しかし、そこがシューティングブレークの贅沢さ。デザインも趣味性を重視し、クーペであるアルテオンと世界観を共有しているのだ。このため、ボディサイズもほぼ同じ。大きな違いはルーフラインとリヤエンドのデザインにあるが、そのリヤデザインもテールランプ付近から下側は、クーペとデザインを共用している。そんな姿勢が、VWで使われるワゴンの指す「ヴァリアント」と名乗らず、シューティングブレークとする表現に繋がっているわけだ。

クーペかシューティングブレークなら?

ボディ形状とラゲッジスペース以外の違いはあるのだろうか。基本的な部分は、グレード構成を含め、アルテオンと全く同じ。装備内容は、フラッグシップモデルだけにどのグレードを選んでも充実の内容を誇る。メーカーオプションは、上位グレードに設定される「ラグジュアリーパッケージ」のみ。これを選択すると、大型の電動ガラスルーフと700Wの出力と11スピーカーのハーマンカードンプレミアムサウンドシステムを追加される。

メカニズムについても、クーペとシューティングブレークの差はない。パワーユニットは、2.0L4気筒DOHCターボの「2.0 TSI」を搭載。最高出力272ps/5500~6500rpm、最大トルク350Nm/2000~5400rpmを発揮する。トランスミッションには、湿式DCTの「7速DSG」を組み合わせる。全車が4WDシステム「4MOTION」であることも同様だ。

今回は、シューティングブレークのみの試乗となったが、マイナーチェンジ後のアルテオンがベースということもあり、熟成が図られたようで、明確な走りの違いを感じる。高出力エンジンと4WDを活かしたキビキビしたスポーティな走りは従来型からしっかりと受け継いでいるが、初期のクーペで感じた硬質な乗り味は消え、滑らかな走りを実現している。ワゴンボディ化による不利な面は、特に感じなかった。これはボディサイズに差がなく、重量も20kgアップの1720㎏に留められている点が大きい。通常ならばワゴン化すれば、リヤの重さや剛性の違いを感じさせることがあるが、それもない。

むしろ、リヤがしっかりしたようにさえ思える。実は、シューティングブレークの開口部は、クーペよりも小さいので、その形状もプラスに作用しているのだろう。ワインディングなど路面の変化が大きい道を走っても、ワゴンに乗っていることを忘れさせ、運転を楽しむことができた。ワゴンのシューティングブレークがここまでの良くなっているのだから、当然、クーペの走りも乗り心地を高めつつ、より楽しめる味付けにブラッシュアップされていることだろう。4年目の熟成で、アルテオンはフラッグシップモデルに相応しい質感も手にすることができたようだ。

さて最大の問題は、クーペかシューティングブレーク、どちらを選ぶべきかだ。やっかいなことに、クーペも積載性に優れ、シューティングブレークの走りも悪くない。どちらも、お互いの美点をしっかりとカバーできるだけの能力を備えているのだ。これはどちらを選んでも、失敗はないとも言い換えられる。

なんともオーナー思いのクルマなのだ。このあたりの作り込みの良さは、VWらしい良心的なクルマ作りの姿勢が表れるところ。ちなみに、シューティングブレークは、クーペの20万円高とあまり変わらない。どちらを乗りこなすかは、オーナーとなるあなたのセンスに委ねられている。

TEXT=大音安弘

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