いよいよスーパーカー界にも“電動化”の波が押し寄せてきそうだ。英国のマクラーレンが次期型主力モデルとしてプラグインハイブリッドパワートレーンを積むミドシップスーパーカーを発表。PHVを載せた量産市販スーパーカー第一弾として、スーパーカー戦争がいよいよ本格勃発。
スーパーカーに宣戦布告
アルトゥーラという名で発表されたこの新型スーパーカー。540Cや570Sといったスポーツシリーズの事実上の後継となるようだ。
最大の特徴はもちろん、プラグインハイブリッドシステムを加えたパワートレーンにあった。核となるエンジンは全くの新開発となる120°V型6気筒ツインターボエンジンで、ユニット単独でも585馬力を発揮するというから、この時点ですでに既存のスポーツシリーズ570S用のV8エンジンスペックを上回った。
この新型エンジンと新開発8速DCTとの間に95psの電気モーターを挟み込む。新たなカーボンファイバーボディ構造は7.4kWhのリチウムイオンバッテリーを組み込んで設計された。バッテリー及びシステム補機類による重量増が気になるところだが、そもそもエンジンの気筒数が減っていることに加えて、他の構造的ダイエットも相まって、車両重量は1.5トン弱(DIN)というクラスの常識的な重さに抑えられている。
エンジンとモーターを統合したハイブリッドシステムの最高出力はなんと680psで、最大トルクも720Nmというから、車両重量を考えると十二分に戦闘力のあるスペックである。
マクラーレンの発表によるとその0→100km/h加速は3.0秒で、これは完全にワンクラス上の性能だ。電気モーターの瞬発力と車体パッケージによるトラクション性能の成果である。これまでのスポーツシリーズと遜色ないパフォーマンスを発揮しつつ、フルEVとしての航続距離は最大30kmというから、爆音を気にする都市型のエグゼクティブユーザーには朗報と言えるだろう。早朝の街中を誰にも気付かれず出発できるのだから。ちなみにバックギアはなく、後退はモーターの逆回転のみで賄っている。
エクステリアはシンプルかつダイナミックなもの。これ見よがしに派手な空力デバイスには全く頼ることなくまとめられており、そのキャビンフォワードのミドシップスタイルはビジネスエクスプレスとしても場面を選ばず使えそうである。
インテリアデザインもラグジュアリーさを随分と増している。機能的であることに変わりはないが、上質なスポーツイメージを新たに表現することに成功したと言っていい。なかでもメーターナセルに取り付けられた操作系がユニークで、ステアリングホイールから手を放さすことなく各種の操作ができるというメリットはドライビング重視派にも嬉しいニュースである。
パワートレーンやカーボンファイバーボディシェル、タイヤを含めたサスペンションシステムを全面的に刷新し、さらには電子デファレンシャルなど新たな装備も数多く追加。ラグジュアリーカーには不可欠のインフォテイメントシステムやADAS(運転支援システム)も著しく進化しているという。
悲願のオリジナルスーパーカーMP4-12Cでマクラーレンは数々の革新をスーパーカー界にもたらした。今回もまた量産スーパーカーとしては初となるプラグインハイブリッドモデルの“アルトゥーラ”を市場へいち早く投入することで、再びマクラーレンはゲームチェンジャーになる可能性が大きい。
アルトゥーラを見た他のブランドがどんなモデル攻勢に出るのか。新たなスーパーカー戦争が始まった。
マクラーレン アルトゥーラ
ボディサイズ:全長4539×全幅1913×全高1193mm
ホイールベース:2640mm 車両重量: 1498kg
エンジン:V型6気筒DOHC ツインターボ 総排気量:2993cc
システム最高出力:500kW(680ps)/7500rpm
システム最大トルク:720Nm(73.4kgm)/2250-7000rpm
トランスミッション:8速DCT 駆動方式:RWD
0→100km/h加速:3.0秒
最高速度:330km/h