美空ひばりの「川の流れのように」から坂道グループの楽曲まで、いつの時代も人々の心に響く詞を書き続ける作詞家・秋元 康氏。伝統を踏まえつつも新しい作品を生みだし、墨の魔術師と呼ばれる書道家・金田石城氏。稀代のクリエイターふたりが出会った時、どんな化学反応が起きるのか。
書という楽器で描くメロディー
坂道グループの楽曲のなかから作詞家・秋元康氏が46作品をセレクトした自選歌詞集、『こんなに美しい月の夜を君は知らない』。この歌詞集にインスピレーションを受けた書道家の金田石城(せきじょう)氏が、その作品のなかから14点を厳選。墨彩の屛風に仕立て上げ、展覧会『墨の魔術師 金田石城が描く 秋元康の詩の宇宙展』で披露した。
「秋元さんの詞を書にしたい! と自分からお願いしたのですが、これが実に難しい作業で。曲のなかからどこの歌詞を抽出し、行間の響きを表現するか。毎日、何枚も書き直しました」
会場では秋元氏とのトークイベントも開催。実際に作品を目の前にした秋元氏は、その迫力に驚いたという。
「楽曲用に書いた歌詞が、こんなにも筆や墨に合うのかと。書という楽器で描くメロディーが、この空間に満ちているのを感じます」
金田氏は、詞を額ではなく屛風にしたためた理由についてこう話す。
「秋元さんの現代的な歌詞を、敢えて古典的な形式で表現したかったんです。大きな屛風に描いたことによって、ロマンやスケール感をより感じさせる作品になったと思います」