「ザ・マッカラン33年」をシェリー、ミズナラの2種のカスクフィニッシュで仕上げた「A Study in Oak」が話題だ。今、ウイスキー市場で注目を浴びる“独立系ボトラー”が手がけた、世界限定195セット・300万円超のプロダクトの中身に迫る。

ウイスキーを探求する、独立系ボトラーの挑戦
昨今、ウイスキー業界で存在感を増している「インディペンデントボトリング(独立系ボトラー)」とは、“オリジナルボトリング”と呼ばれる蒸溜所ブランドからウイスキーを仕入れ、独自のブレンディングやリカスクを行う集団のこと。「A Study in Oak」を手がけたシンガポール発の「Ephemerus Concepts」はファインウイスキーの芸術と工芸に情熱を注ぐ 独立系ボトラーで、世界的な酒類品評会で金賞を受賞するなど高い評価を受けている。
共同代表のデヴィッド・ワン氏とクリスチャン・ルースダー氏は、投資銀行やコンサルティング会社でキャリアを積んだ異色の経歴の持ち主。もともとウイスキー愛好家だった2人は、その味わいだけでなく、製造過程にも目を向けた。
「ウイスキーの本当のおもしろさは、原料のモルトの発酵や蒸溜技術、熟成させる樽の選定に至るまで、すべての過程を知ることにあります。製品を作り上げた人々の話、彼らの努力、そして製品作りに込められた技術と情熱を知る。そうすることで、初めて本当の価値を理解し味わい尽くせるのではないでしょうか」(ワン氏)
「さまざまな蒸留所でのテイスティング体験から、原酒と熟成樽の関係に惹き込まれるようになりました。熟成期間一つとっても、ほんの些細な違いで味わいが全く変わってしまうこともあり、かけ合わせの面白さに魅せられていきました」(ルースダー氏)
独立系ボトラーの製品は、「この原酒にこの仕上げを加えたらどうなるのだろう?」という“ツウ”の心をくすぐるチャレンジで愛好家たちから注目を浴びている背景がある。例に漏れず、ワン氏とルースダー氏も、 “トップクラスに難しい”といわれるミズナラ樽を用いたウイスキー熟成のプロジェクトに着手。今回発売されたA Study in Oakは、その5作目となる。

参考小売価格:£14,500+税(2本セット、日本円換算で約¥3,080,000 ※2025 年1月15日時点 )
「山崎」を称えて、シェリーとミズナラの新しい可能性を追及
A Study in Oakは、その名の通り「樽と樽の相乗効果」の研究が大きなテーマだ。サントリーの「山崎1984年」や他のフラッグシップ製品にインスパイアされ、シェリーとミズナラの調和、バランスの再現を目指したという。
「『山崎1984年』ではシェリーとミズナラで完全に熟成されたウイスキーをブレンドするのに対し、A Study in Oakは、シェリー樽で熟成させたものをミズナラでフィニッシュしています。シェリーとミズナラが融合し、並外れた体験を生み出す『山崎1984年』のレシピを称えて始まったこのプロジェクトで、シェリーとミズナラの新しい可能性を楽しんでいただきたい」(ルースダー氏)

A Study in Oakは2本セットで 、マッカラン蒸留所の1991年ヴィンテージがベース。1本は、オリジナルのシェリー樽で33年以上熟成させたもので、「ザ・マッカラン33年」本来の味わいを楽しめる。もう1本は、その一部を北海道産のミズナラ樽に移し、 10ヵ月以上追加熟成させて仕上げられている。1つの原酒を2種類の樽にリカスクしたものを比較し味わうことで、熟成樽がウイスキーの香り、色、味わいにどのような違いを生むのかを学ぶことができるだろう。
世界限定195セット、300万円という価格設定からもA Study in Oakがどれだけ貴重なものかが分かる。世界のウイスキー愛好家を唸らせる独立系ボトラーの真髄を、ぜひ味わってみてほしい。