GOURMET

2024.08.22

噂の“280分焼き”ステーキとは? 西麻布の隠れ家的レストラン「GINA GINA」に潜入

モデルとしても活躍するオーナーのこだわりから生まれた“ここでしか出合えないステーキ”を求め、肉好きエグゼクティブがリピートする「GINA GINA」。その魅力を存分に味わえる全7品の「280分焼きステーキ」GINAGINAコースを体験してきた。

「GINA GINA」コースのメイン、280分火入れしたステーキ。部位は日によって変わり、この日は飛米牛のフィレが登場(「280分焼きステーキ」GINA GINAコースの一例)。

胃腸の働きまで計算した“軽やかなステーキコース”

飲食業を営む家系に生まれ、幼いころから食の英才教育を受けてきたモデルとしても活躍するオーナーの大森まなみさんが、「お肉の本当のおいしさを味わってほしい」と、2021年7月にオープンした「GINA GINA」。

イタリアやスペインの星つきレストランで研鑽を積んだ、小松岳史氏をシェフに迎え、絶品ステーキをメインに、旬の美味を生かした前菜や魚料理、季節のパエリアなど、月替わりのコースを提供。

ソムリエの資格を持つ大森さんがセレクトする料理を引き立てるワインとのペアリングも評判になっている。

「GINA GINA」が位置するのは、西麻布交差点のほど近く、六本木通り沿いのこぢんまりとしたビルの地下。

通りにサインの類はいっさいなく、専用階段を降りた先に深紅の看板が掲げられているのみという隠れ家的な佇まいも、ワクワク感とドキドキ感を駆り立てる。

店内は4~10名まで利用可能な個室と、パテーションで仕切られたカウンター席とテーブル席という3つのスペースで構成。いずれも1組限定でプライベート感を味わえるからか、会食やデートのほか、接待など、改まった席での利用も多いという。

シックで重厚感がある雰囲気は、大人のもてなしにぴったりだ。

今宵いただくシグネチャーメニュー「GINA GINA」コース(¥19,800)は、温泉卵に鶏の出汁をかけ、サマートリュフをのせた「岩崎さんの卵」でスタート。

トリュフの香りとあっさりとした鶏出汁の味わい、とろりと濃厚な卵……。やさしい味わいの温かい前菜は、「胃を温めて消化を促進することで、コースを最後まで楽しめるように」という配慮からだ。

次にサーブされた、北海道美瑛産の野菜を中心とした「40種類のサラダ」にも、こうした気遣いが反映されている。

たっぷりの葉物野菜の下には20種類以上の温めた果菜類、根菜類を敷き、ドレッシングはパプリカがベース。メインがステーキとはいえ、これだけの量と種類の野菜を摂れば、栄養バランスは申し分がない。

一見ボリューミーだが、異なる味や食感、香りを楽しんでいるうちに、ぺろりと平らげてしまった。

3品目の「季節のスープ」は、夏らしく、冷たいガスパチョ。

トマトをベースに、パプリカ、キュウリなどの夏野菜をミキサーにかけ、スペイン産のオリーブオイル、シェリービネガー、塩を加えたのみだという。

シンプルながら野菜の旨味が堪能でき、味わい深い。添えられている甘海老とモッツァレラチーズと共にスープを口に含むと、そこに濃厚さが加わり、また違ったおいしさが味わえるのもおもしろい。

引き締まった経産牛の赤身のうまさに驚愕

4品目の「旬の魚料理」として供されたのは、瀬戸内海でとれた新鮮なマナガツオを蒸し焼きにし、最後に皮目をパリッと炙り、ナスや万願寺唐辛子などを添えた一品。

マナガツオは釣ったその場で下処理するため、臭みがなく、脂に甘みすら感じられるほどだ。

そのままでも抜群においしいが、添えられている2種類のソースがまた秀逸。パプリカのソースは爽やかさを、チョリソーと生姜のソースはピリッとした刺激を与えてくれ、1品で3つの味わいが楽しめる。

おいしく魚料理を平らげたところで、大森さんから「この後お肉料理を2種類お出しさせていただきますが、お腹の具合はいかがでしょう?」と、たずねられた。

前菜から魚料理までかなりのボリュームだったにもかかわらず、野菜がふんだんに使われていたからか、まだまだ胃袋に余裕がある。普段は魚料理を食べ終えた後に、「肉料理は少なめに」と、リクエストすることもあるというのに。

「この後のお肉料理もですが、当店ではソースにクリームなどの脂肪分はほとんど使っていません。なので、一皿の量はそれなりに多いのですが、皆さま、最後までしっかり召し上がってくださいます」と、大森さん。

なるほど、温前菜で胃を温めたり、野菜をたっぷり使うだけでなく、ソースにも、最後まで美味しく食べるための仕掛けがあったとは! こうした気遣いも、胃もたれを実感しつつある年頃には嬉しいかぎりだ。

そんな説明の後に運ばれてきた肉料理の1品目は、飛米牛のハラミの炭火焼き。

肉の銘柄はその日によって異なるが、“経産牛の赤身を中心に仕入れる”のが大森さんのこだわりだ。

出産していない未経産牛が一般的ななか、あえて経産牛を選ぶのは、「和牛の赤身の本当のおいしさを知ってもらいたい」から。

「経産牛は余分な脂肪がなく、アスリートのように鍛えられた筋肉を持っているため、そのままでは硬く、味わいも淡白。けれど、出産の役目を終えた後に、餌や放牧に工夫を凝らして再肥育し、脂肪をつけさせると、旨味と風味が強い肉牛に生まれ変わります。

この赤身こそが、牛本来の美味しさだと、私は思っています。それに、役目が終わったら終わりではなく、出産への労りと感謝の気持ちを持ちつつ愛情をかけて育てるという試み自体、すばらしいことだと思うのです」(大森さん)

飛米牛は、A5ランクの黒毛和牛を産んだ母牛に、飛騨産のおいしいお米と水、牧草を与え、長期間飼育している。

丁寧に育てているぶん、出荷数が少なく、地元以外にはほとんど出回らないが、大森さんが畜産農家を訪れ、熱心に交渉。その熱意と志が生産者の心を動かし、直接卸してもらえることになったのだという。

そうした特別なストーリーを持つハラミは、噛めば噛むほど肉の旨味が口の中に広がり、「肉を食らっている!」感が大。黒ニンニクのソースと柚子胡椒が添えられているものの、何もつけずとも、この肉のポテンシャルの高さは存分に伝わってくる。

経産牛の赤身の余韻が冷めやらぬところで、いよいよ280分焼きステーキがお目見え。

部位は日によって変わるが、この日供されたのは赤身の王様、フィレ。美しいロゼ色をした肉にナイフを入れる。と、驚くことにドリップがまったく出ない。

「280分、鉄板とコンベクションオーブンを交互に使いながら、内部が42度に保たれるように火入れをしています。そうすることで、余分な水分と脂肪を落としつつ、ドリップを肉の中に閉じ込め、しっとりとしたミディアムウェルダンに仕上げているのです」

大森さんの解説を聞きながら、まずは何もつけずにひと口。すると、噛むごとに“肉汁の存在”が感じられ、上品なうまみが口の中に広がっていく。

ふた口目は肉の甘みが引き立つイギリスの岩塩をつけ、次は紅芯大根とエシャロット、粒マスタードをミックスしたソースで爽やかさを感じ、その次はカンボジア産の黒コショウでパンチを効かせる。まさに、おいしさの無限ループだ。

大森さんが手にするのは、本場スペインで腕を磨いた小松シェフのスペシャリテ、「季節のパエリア」。イカとスペアリブを具材に、トマトと塩、出汁で古米を炊いている。古米ならではのプツプツとした食感も楽しい。

その後、イカとスペアリブのパエリアと2種類のデザートが出て、「GINA GINA」コース全7品が終了。

胃の許容量はおそらく超えているものの、「重い」とか「もたれる」といった感覚はゼロ。むしろ、体に活力が加わるような気さえするほどだ。

今回はワインのペアリングもオーダーしたが、サラダにはイタリア産のフルーティーなガルガーネガ品種の白、魚料理にはチリ産のミネラル豊富なシャルドネ、280分ステーキには甘みの強いフランス産シャンベルタンの赤。

「料理の味を引き立てる」という軸に徹した大森さんのセレクト。ぶどうの品種はもちろん産地もヨーロッパからニューワールドまでと、バラエティ豊か。

ここでしか味わえないステーキを筆頭に美味の数々、ユニークなワインのペアリング、そして、10代で女優としてデビューし、現在もモデルとして活躍する大森さんの華やかさと巧みな話術、食に関する深い造詣。

肉好きエグゼクティブがリピートする理由にも納得の、充実の全7品だった。

TEXT=村上早苗

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