GOURMET

2023.08.24

食通を唸らす、サウナの聖地・北海道ホテルの天ぷら店

食材王国と言われる北海道で、この土地ならではの美味のストーリーを紡ぐ人々がいる。広大で肥沃な大地の恵みと料理人の叡智が感動をもたらす食空間を、旅の特別な目的地にしたい。今回紹介するのは、帯広の「蝦夷天ぷら 鶴来(つるぎ)」。【特集 北海道LOVE!】

「鶴来」のカウンター
2021年に内装をリニューアルし、カウンター6席のみのモダンな空間に。白木の美しいカウンターが映える。

北海道の恵みが満載! “蝦夷前”天ぷらの世界「鶴来」

北海道一の農業地として知られる十勝平野の中央に位置する帯広。酪農や畜産も盛んなことから、日本の食糧基地とも言われるが、自然の営みと生産者の叡智によって育てられた食材を、和食の伝統技法によって唯一無二の美味に昇華させる天ぷら店が話題を呼んでいる。

明治32年に前身の「北海館」として開業し、屋号を改めてからも国内外から多くのゲストを迎えてきた「北海道ホテル」は、全国からサウナ好きが訪れる“聖地”としても有名だが、食通の憧憬を集めている理由は、2021年にリニューアルをした「蝦夷天ぷら 鶴来」にある。

プライべート感に包まれるカウンターのみの空間で供されるのは、十勝産を中心に道産の食材にフォーカスを当てた天ぷらのコースだ。

東京では鮨と並んで和食の花形と言われる天ぷらを“蝦夷前”で堪能させるのは、食材が豊富な北海道ならではの試み。山や川、海のものはもちろん、料理長の稲垣泰英さんは「十勝の素晴らしい生産者さんが育てる野菜の美味しさを、天ぷらを通して伝えたい」と話す。

先付けに始まり、小鉢や刺身に続いて14品前後の天ぷらが登場するコースは1万4000円。生産者のもとに通い、時には美味しさを生かすためのアドバイスを受けることもあるという食材を、慈しみの心を込めて丁寧に揚げていく。

名残の姫竹に豆の瑞々しい甘みを感じるスナップエンドウ、穂先と根元を別々に揚げるアスパラや2年熟成させたメークインは驚くほどの生命力に溢れ、味や香り、食感の個性をそのまま引きだす揚げ技に感嘆のため息がもれる。

北方四島のウニや昆布締めにしたボタンエビ、5年熟成の味噌につけたサメガレイ、日高沖で揚がった大助と呼ばれるキングサーモンなど、ここでしか味わうことができないタネも充実。

自然の恵みを熟練の技で。無限に広がる蝦夷前天ぷらの可能性に心が揺さぶられる。

「鶴来」の料理長稲垣氏
Yasuhide Inagaki
帯広のふぐとすっぽんの店などを経て「蝦夷天ぷら 鶴来」の料理長に。食材と真摯に向き合い、美味を紡ぐ腕前に信頼を寄せる生産者も多い。

帯広|蝦夷天ぷら 鶴来/EZO TEMPURA TSURUGI
帯広駅からクルマで5分。緑に囲まれた「北海道ホテル」内の蝦夷天ぷらの店。檜の一枚板が美しいカウンターで厳選された北海道食材と磨き上げられた職人の技を。予約は前日17時まで受け付けている。

住所:北海道帯広市西7条南19-1
TEL:0155-21-0001
営業時間:18:00~、19:00~
定休日:水曜、木曜
座席数:6席

【特集 北海道LOVE!】

この記事はGOETHE2023年9月号「総力特集:北海道LOVE!」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら

TEXT=小寺慶子

PHOTOGRAPH=寺島博美

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