2020年に“上場”を果たした起業家たち。その一世一代の大勝負の裏には、「ここぞ」という時に食べるとっておきの勝負メシがあった。経営者、丸林耕太郎氏と武田和也氏の心身を満たし、上場への道のりを支えてくれたひと皿とは。
“手打蕎麦 松永”の「おろしせいろ」/クリーマ 丸林耕太郎
「溢れるアドレナリンをこの一杯でリセット」
会社にほど近い「手打蕎麦松永」には、上場前から週に2〜3回は通っていたというクリーマ代表の丸林耕太郎氏。
「僕にとって、この“おろしせいろ”は一種のマインドフルネスなんです」
経営者としての重圧、不安に押し潰されそうになった日々もあった。しかし、そんななかでも事業に対する情熱やスタッフへの信頼を胸に突き進み、上場を実現。そんな丸林氏の心身のコンディションを整えるために、この蕎麦は欠かせないという。
「今、この瞬間に向き合って無になるマインドフルネスのように、目の前の味に静かに向き合う、そんな感覚です。重要な意思決定を続けるうえで、自らの心をフラットな状態に保つことは必須。仕事で溢れ出たアドレナリンを、この一杯でリセットしています」
実は上場当日も、分刻みのスケジュールのなかタクシーを飛ばし、この蕎麦を食べに来た。
「特別な日だからこそ、日常どおりのフラットな自分に戻したかった。だからいつものように、入店待ちの列に並びました(笑)」
起業家のたぎる情熱に、立ち止まり自己を見つめる時間を与える、丸林氏の静かな“勝ちメシ”なのだ。
手打蕎麦 松永
住所:東京都渋谷区神宮前2-19-12
TEL:03-3402-7738
営業時間:11:30~ ※蕎麦が売切れしだい終了
休業日:日曜・祝日
丸林耕太郎
クリーマ代表取締役社長/クリエイティブディレクター。1979年神奈川県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、セプテーニホールディングスを経て、2009年に赤丸ホールディングス(現クリーマ)を創業した。趣味はDJ、音楽制作。
Creema
国内外から20万人以上のクリエイターが出店する、日本最大級のハンドメイドマーケットプレイス「Creema」を運営。今やその流通総額は、年間100億円を大きく上回っている。
会社設立日:2009年3 月3 日
上場日:2020年11月27日
資本金: 9 億8858万円
従業員数:103名
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“あき山”の「鯖鮨」/Retty 武田和也
「上場してからがスタートと気持ちを新たにした逸品」
食を通じて世界中の人々をHappyに、をミッションに掲げ、飲食店口コミサービスを展開するRetty。
「昨年は飲食業界にとって厳しい年でした。そうした時期に当社が上場したことが、飲食店や関係者の方々を少しでも勇気づけ、明るい気持ちになっていただけたとしたら嬉しいです」と、代表取締役の武田和也氏は話す。
「あき山」を初めて訪れたのは、上場準備を始めた2019年。
「シンプルなのに、どの料理もすごく美味しい。特に鯖鮨は絶品! 本来は季節ものですが、ご主人は僕が好きなのを知っていて、必ず出してくれるんです。そうした心遣いも含め、居心地がとてもいい。なので大切な人と、食事をしながらゆっくり話したい時に利用しています。上場承認が下りたあとも、当社の顧問とこの鯖鮨を食べながら、『これからが本当のスタートだ』と、想いを共有しました」
赤酢の利いたしゃりの上に、丁寧な仕事を施した〆鯖がのった鮨は、シンプルながら和食の技が詰まっている。起業の際、「日本が世界で戦えるものを」と考え、食をテーマに選んだという武田氏。この鯖鮨は、その原点に立ち返らせてくれる味でもあるようだ。
あき山
住所:東京都港区白金6-5-3 さくら白金101
TEL:03-6277-0723
営業時間:12:00~14:00/18:00~23:00
休業日:木曜、不定休
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武田和也
Retty代表取締役CEO。1983年愛媛県生まれ。青山学院大学在学中からECサイト立ち上げ、運営を行う。ネットエイジ(現ユナイテッド)で勤務後、起業準備のため渡米。2010年にRettyを創業した。
Retty
実名での口コミのため、信頼性の高い情報が見つかると人気の「Retty」を展開。現在の月間ユーザー数は4000万以上。飲食店向けテイクアウト支援など、新規事業にも取り組んでいる。
会社設立日:2010年11月15日
上場日:2020年10月30日
資本金:5億9600万円
従業員数:180名
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※営業時間等は、各店舗にお問い合わせください。
Illustration=東海林巨樹