GOURMET

2021.01.21

銀座の老舗イタリアン「ラ・ベットラ」の魅力を痛感する特別ディナー

安心・安全な環境で食事ができる「NO密レストランプロジェクト」を行っている美食サロン「北参道倶楽部」。そのノウハウを活かして、銀座の名店イタリアン「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合 務シェフによるクリスマスディナーコースが昨年12月22日(火)に振る舞われた。北参道倶楽部のためだけに考案された特別メニューを愉しむ聖なる夜となった。

ベットラ

「ラ・ベットラ」秘密の部屋で贈るクリスマスディナー

オーナーシェフの落合 務氏といえば、誰もが認める日本のイタリア料理の先駆者。高校中退後、料理人を志しフランス料理を学ぶも、フランス旅行の帰りに立ち寄ったイタリアで食べた料理に魅了されイタリア料理に転向。約2年8ヶ月イタリアで修業したのち、1982年にオープンした赤坂のイタリア料理店「グラナータ」では、料理長を任された。当時日本ではまだイタリア料理に馴染みがなく、店にお客さんが入らない状態が1年余り続いたが、イタリアから持ち込んだ本場の味にこだわり提供し続けたそう。するとイタリア政府関係者や大使館員の目にとまり、評判が口コミで広まった。

1997年に「もっと気軽にイタリア料理を食べてほしい」と銀座に開いたのが、自身の店「ラ・ベットラ」。本場の味でありながら日本人の舌にも合うようアレンジ。そして飾らない雰囲気で、1年以上先まで予約が取れない人気店となった。長年の功績が認められ、今年の春には黄綬褒章を受章。今なお日本のイタリア料理を牽引し続けている。

今回の会場はその「ラ・ベットラ」別館の2階。本館の向かいにある建物の狭い階段を上っていくと、リビング・ダイニングのようなプライベート感が漂う部屋に辿り着いた。アットホームでどこか温かさを感じる雰囲気の秘密の部屋は、常連客しか入ることができない特別な場所だ。ここで出迎えてくれたのは、サンタクロースの帽子をかぶった落合シェフ。「今日は落合サンタです! 」と、にこやかに挨拶をしてくれた。気さくでおおらかな落合シェフの人柄も「ラ・ベットラ」の人気の理由なのだろう。

落合シェフ

今回のクリスマスディナーでは、落合シェフが特別に北参道倶楽部のメンバーの目の前で調理をしてくれた。北参道倶楽部のメンバーの期待も高まる中、この日だけのスペシャルコースが振る舞われた。

和の食材とイタリア料理を融合

落合シェフは、日本人の舌に合うようなアレンジをイタリア料理の定番として広めてきた。今でも時代に合わせたアイデアをメニューに盛り込み、イタリア料理を進化させ続けている。今回のコースでも、その『落合流アレンジ』が随所に感じられた。

まず供されたのが、パリソワーズと呼ばれるじゃがいもの冷製スープ 。白くてクリーミーなスープの下に隠れていたのは、かつおと昆布の合わせ出汁で作ったゼリーだ。コンソメの煮凝りが敷かれていることが多いパリソワーズに日本の出汁が入ることで、よりさっぱりとした味わいになる。出汁のゼリーが口に入れた瞬間に溶けだしてスープと混ざり、優しい旨味が広がっていった。

パリソワーズ

じゃがいもの冷製スープ。スープの下に柔らかい食感の出汁ゼリーが隠れている。

続いて登場したのは、前菜のカルパッチョ。実は、日本で一般的に出される魚のカルパッチョは、落合シェフが最初に考案したメニューだというから驚きだ。本場のカルパッチョは、生の牛肉を薄く切ったもの。しかし、日本人に出してもなかなか食べてくれなかった。そこで、落合シェフが刺身を好む日本人向けに生魚に変えて提供したのが、現在の魚のカルパッチョの始まりというわけ。 今回は豊洲市場で朝仕入れたカンパチを軽く燻し、最近お気に入りだという新潟産の生山椒を使ったドレッシングを合わせた、この日限りの特別なカルパッチョを用意していた。程よく脂ののったカンパチとドレッシングの酸味が調和していて爽やか。生山椒は舌がピリリとする独特の辛さは控えめで、華やかな香りが立つ。この生山椒の香りが燻製のスモーキーな香りをより引き立てていて、食べ終わった後も2つの香りの余韻が残っていた。

花びら

落合シェフお気に入りの生山椒を使ったカルパッチョ。野菜と飾りの花びらで見た目も華やか。

「ラ・ベットラ」のスペシャリテ・ウニのスパゲティも、落合シェフが大胆にアレンジしたものだ。「イタリアのウニのスパゲティは、ウニとにんにく・唐辛子を炒めたものなんです。ウニがボソボソしてしまい日本人の好みには合わないんじゃないかなって」落合流のウニのスパゲティは、ニンニクとアンチョビを炒めトマト・白ワイン・生クリームで煮詰めたソースに、北海道産の生のウニをたっぷり加え和えたもの。柔らかい舌ざわりのソースがパスタとよく絡む。磯の香りが鼻に抜け、その後ウニとソースの濃厚な甘さに満たされた。

うに

ラ・ベットラのスペシャリテ、ウニのスパゲティ。トマトの水分を飛ばすことでソースの鮮やかな黄色が出る。

鶏を丸ごと味わうスペシャルメニューを堪能

パスタを味わっている最中、オーブンで丸ごと焼かれた鶏を持って現れた店のスタッフが、1席1席を回っていた。クリスマスならではのスペシャルメニュー・丸鶏のローストは、旨味が流れ出ないようお腹にお米を詰めリゾットも同時に作るという一石二鳥のレシピだ。

tori

焼きあがったばかりの丸鶏。お腹にリゾットが入っているのでパンパンに膨れている。

目の前で切り分けられた丸鶏のローストには、黒トリュフを贅沢にもペースト状にして丸鶏の油で炒めた特製のソースが、これでもかと言わんばかりにかかっている。皿が目の前に置かれた瞬間からトリュフの芳醇な香りが漂ってきた。肉はナイフがいらない柔らかさで身がふっくらしている。ローストしたことで閉じ込められた肉の油と旨味が口の中で一気にジュワっと溢れだし、黒トリュフのソースと絡んでいく。至福の時間だ。付け合わせはジャガイモと豚バラ肉を塩漬けにしたパンチェッタ、エシャロットを合わせて焼いたもので、カリカリの食感と塩気は黒トリュフのソースと相性が良い。

トリュフ

丸鶏のロースト。ソースには、黒トリュフを7個も使用している。

お腹に詰められていたリゾットは、オムライスとなって供された。それもただのオムライスではない。半熟程度の焼き加減の目玉焼きをボールに移し、泡だて器で空気を含ませながら混ぜたものが乗った、落合シェフ特製のイタリア風オムライスだ。卵はスフレのようにフワフワで、黄身の香りがより際立っている。チーズがたっぷり入ったリゾットは鶏のだしと旨味が移っていて、まろやかな味わいに。「イタリアンのコースではこの順番でリゾットは出さないんだけど、日本人はシメが食べたくなるでしょ? 」という落合シェフの狙い通り、お腹がいっぱいのはずのメンバーもあっという間に完食してしまった。

オムライス

落合シェフ特製イタリア風オムライス。丸鶏のお腹で炊かれたお米を使ったリゾットの上にスフレのような卵が乗っている。

クリスマスディナーのデザートは、世界有数の栗の産地でもあるイタリアの栗をふんだんに使ったモンブラン。上品な甘さで、栗そのものの味が感じられる。いちごのサンタはサンドされたクリームにかわいらしい顔が描かれていて、その見た目からもメンバーを楽しませてくれた。

デザート

イチゴのサンタさんが乗ったモンブラン。カットされた栗がゴロゴロと入っている。

本場のイタリアの味を踏襲しつつも、日本のエッセンスを加えた料理が堪能できた今回のクリスマスディナー。自宅にいるかのようにくつろぐことのできる秘密の部屋で、あの落合シェフと会話を弾ませながら目の前で腕を振るってもらうなんて、この上ない贅沢だ。自分への、あるいは大切な人へのご褒美に相応しい、特別なひとときとなった。

※このイベントは12月22日に実施されました。

新型コロナウイルス感染症に罹患された皆さま、および関係者の皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。
北参道倶楽部では、会員、参加者の安全を第一に考え、また、運営サイドも安心して働けるよう、感染拡大の抑制と予防のため、引き続き対応してまいります。各店舗と安全対策を講じておりますが、より安心してご利用頂けるよう、飲食時以外でのマスクの着用にご協力をお願いいたします。

~NO密レストラン・ポリシー~
ウイルス感染リスクを最小限にし、お客様に安全・安心な環境で食事を楽しんでいただくことを第一に考えるのが、「NO密レストラン」です。
<NO密集>
1.同じ時間帯には、十分なフィジカル(=ソーシャル)ディスタンスを保てる組数に限って、お客様には入店、着席いただきます。
2. 同じ組(パーティ)のお客様は、原則として、お客様同士での感染のリスクのない同居されている方々に限らせていただきます(例外あり)。
<NO密閉>
3. 店内の換気を徹底し、密閉状態になることを避けます。
<NO密接>
4. 異なる組(パーティ)のお客様が、入退店の際や化粧室に立たれる際に近づかれることがないよう、ご案内に十分配慮します。
5. スタッフもお料理やお飲み物の提供時以外は、安全な距離を保ち、会話のタイミングや時間に留意いたします。
<その他>
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7.いらっしゃるお客様には各自、健康管理を徹底していただきますようお願いを申し上げます。
8.ご来店時にご体調のチェックをさせていただき、手指消毒をしていただきます。
以上に加えて、常に感染リスクを避けるために必要な情報を入手し、適切な施策を実施してまいります。

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TEXT=丸井汐里

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