
個性的なデザインながら、小林氏が立てば、そこは静謐な鮨職人の舞台となる。
日中はアートギャラリーで、夜は高級鮨店?
その違和感を軽々と覆すのが、現代美術ギャラリーNANZUKAと日本を代表する名店の鮨さいとう、そしてLDHがタッグを組んだ中目黒の3110NZ by LDH Kitchenだ。
「きっかけは僕のギャラリーで開催したあるパーティで、LDH会長のHIROさんがアートに囲まれて食事をする体験に感動したことなんです」と語るのはNANZUKAオーナー南塚真史氏。

今までのギャラリーのスキームとは異なる自由な発想が、強い印象を残す空間に。
そのアイデアから始まったこのスペースだが、気鋭のギャラリストならではの戦略も。
「日本のアートをいろんな方法で世界に紹介するのが、僕の仕事のひとつ。食のアートともいえる鮨と現代美術という日本が誇る文化の両方を、海外のお客様に存分に味わってもらえる場所にしようと思いました」

アーティストは毎月変更。撮影時は、1970~’80年代にかけてPARCOなどの広告にも起用されていた、山口はるみの展覧会を開催。
鮨とアートという日本のキラーコンテンツを世界に伝える場として、南塚氏が空間デザインを依頼したのは、現代アーティスト、ダニエル・アーシャムと、アレックス・マストネンがタッグを組む建築デザインユニットSnarkitecture。
自由奔放に切り取ったような壁や梁(はり)、同様の曲線を持つ椅子が並ぶ有機的感覚を持つ内部に、凜とした空気を放つのは一枚板の檜(ひのき)のカウンター。まさにこの空間そのものが、ひとつのアート作品たる存在となっている。

「提供するのはあくまでも江戸前スタイル。だからこそ、空間とのギャップも魅力です」と店主の小林郁哉氏。
「海外にもこんな形態のギャラリーは存在しない」という唯一無二の場所に、ここで展覧会をしたいという海外アーティストからのオファーも多数。さらに鮨×アートのコンセプトから着想を得て、新作を制作中のアーティストもいるという。既に、世界のアート界に刺激を与える場所となっている。

ミシュランで三つ星を獲得する予約困難な名店の味を、中目黒の地で楽しむことができる。
「アートをカタログやネットで購入できる今、ギャラリーに来なくてもビジネス的には成立する。今後もギャラリー自体の機能や形態は変化していくでしょう。だからこそ足を運び“体験”することが重要になるはず。ここを訪れた人の視覚や味覚に訴えかけ、価値を実感してもらう、その可能性を追求する場所にしていきたいと思います」

Shinji Nanzuka
1978年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部美術史学専修を卒業後、2005年NANZUKA UNDERGROUND(現NANZUKA)を開設。アートの枠を超えた発信を続ける。

隠れ家のような入口。この扉の向こうにアートとの新しい出合いが待つ。
3110NZ by LDH Kitchen
住所:東京都目黒区青葉台1-18-7 カスタリア中目黒
TEL:03-5422-3351
営業時間:11:00~17:00(NANZUKA)、18:00~23:00(鮨さいとう)
休業日:月曜
座席数:カウンター8席
料金:おまかせコース¥30,000
※ギャラリー入館料は無料
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