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2018.03.21

盡|見城徹が、新しい才能との出逢いに生きていてよかったと思った。

名店であればあるほど、味わいや店の雰囲気は他には真似できない。見城と小山氏が一生忘れることのできない店を語り尽くす。復活を心待ちにしていた名店とは――。

盡

驚くべきセンスと技を持った秘蔵中の秘蔵の店

「1度しか行けていないが今回の秘蔵中の秘蔵です。旨いだけではない、他の店とは比較できない何かがある」と見城。

「いい店と出逢った」と人に話すと、たいていは、「和食?」「フレンチ?」などまずジャンルを聞かれるもの。しかし見城いわく「この店は、どう定義したらいいのかわからない。いろんな要素を含みながらも料理1品1品の印象は日本。つまり、料理人・佐藤 慶さんのなかにあるものをそのまま素直に表現していると答えるのが一番正解に近いのかもしれない。彼は、洋の東西を問わず、料理のジャンルも軽々と飛び越え、行き来する自由な魂の持ち主。そして、ひたすらに食材を深く見つめ、引きだしてきたイメージを実現することができる驚くべきセンスと技を持っているんだ」と。

『盡』が銀座にオープンしたのは昨年4月。それまでは、兵庫県・芦屋市に店を構えて佐藤氏。「より厳しい場所で挑戦したかったんです」と、とても穏やかな関西弁で話す。

アートが好きで、その道に進みたかったというが、運命の流れは料理人の道を示したようだ。イタリアンレストランで働いたのをきっかけに、好奇心が溢れだし、フレンチを学び、炭火を知るために焼き鳥店に弟子入りもした。さらに、魚介をはじめ食材を見る目を磨くべく市場で働きながら鮨屋で修行するなど、他ジャンルの経験を積んだことが今につながっている。

盡

炭火を使い、魚は串で、肉は塊で時間をかけて焼き上げる。

「いろいろな方の尽力のお陰で、毎日飛び切りよい食材を前にすることができます。その素晴らしい食材を前に考えることは、純度を上げるために何をしたらいいのか、と言うことだけなんです」と話す佐藤氏。極めて謙虚で、感謝の思いを食材に、客に伝えようと日々一生懸命だ。

「佐藤さんは人にも物にも虚心坦懐に向き合い、美しいものをまっすぐに見つめようとしている。料理も素晴らしいのだが、もてなしの雰囲気作りも秀逸。カウンターで素材を切ったり、揚げ物をしたり、炭火で焼いたりとすべてを見せて料理しているが、その所作は、まるで茶の湯の点前(てまえ)をしているかのような美しさ。厨房の設えも、本当に美しい。食事をしながら、ああ、生きていてよかったとつくづくと思ったよ」

盡

檜のカウンターと銅や真鍮でコ ーディネイトされた店内。茶釡で沸かした湯を使うなど、日本の伝統文化も取り入れて美しさと美味しさを追求している。

店名『盡』は ”尽” の旧字。「皿という字が入っているのが気にいって」と佐藤氏。1日6席のまさに心尽くしのおもてなし。当然予約は至難の業。今年は既に12月まで満席という。

盡

太刀魚とどんこの天ぷら。盛りつけたあと、最後 の仕上げに柑橘の果汁をミストして。※料理はコース¥20,000〜(食材によって変動)の一例。

盡

牡蠣とブルゴーニュワインのスープでいただく、 松葉ガニのしゃぶしゃぶ。

盡

ワインヴィネガーとゲランドの塩でもみ洗いしたのち、新海苔で〆たアジ。

盡

ハマグリのロワイヤル仕立てに、サクッと揚げた桜エビをのせ、魚の出汁のとろみあんをかけて。

盡

ホタテと白川をシャンパン、自家製バター、塩のみで蒸し上げている。

盡

北海道から届く生クリームで毎日お店で作っているバターと、その乳清を使った自家製パン。

盡

白子を香ばしくソテーして、熱々に熱した器で。 上に散らしたのは刻んだふきのとう。

盡

十勝・エレゾ社の極上の鹿。炭火で焼いてから、 骨と赤ワインのフォンでさらに火を入れている。

盡

和菓子職人、白石学氏が、1から目の前で作り上げる食後の甘味。銘は「寒紅梅」。

Jin
TEL:03-3289-5050
住所:東京都中央区銀座5-4-15 西五ビル6F
営業時間:最初の予約を入れた方に合わせて一斉スタート
休み:不定休
席:カウンター6席、個室なし

TEXT=藤田実子

PHOTOGRAPH=原 務

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