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2024.07.04

「末っ子」はアルコール依存症になりやすい? 甘え上手だが不安も強い優等生

きょうだい(兄弟・姉妹)といつも比較されて育った。嫉妬や怒り、憧れをおぼえる。特別扱いされていると感じる。きょうだいのために我慢してきた……。少しでも当てはまると思ったあなたは、「きょうだいコンプレックス」を抱えているかもしれません! 精神科医、岡田尊司氏の『きょうだいコンプレックス』の一部を抜粋してご紹介します。

親の愛情を独り占めできる「末っ子」の特徴

末っ子が特徴的な性格を示すことは、昔から経験的に知られてきた。その最大の理由は、下のきょうだいに脅かされることなく、親の愛情を独り占めできたということにある。長子といえども、その幸運はいつまでも続かなかったが、末っ子は、生涯その地位を脅かされることなく、親が生きている限り、その恩恵を享受できるのである。

親も年を取り、この子が最後の子どもだと思い、また短い期間しか一緒に過ごしてやれないと思うと、可愛さもよけいに募るものである。

その結果、母子分離が遅れやすく、長子以上に甘えん坊で、依存的な性格になってしまうことも多い。

上のきょうだいからの圧力はあるものの、末っ子だということで、むしろ大事にされていることが多く、脅かされた経験が少ないため、おっとりとした性格になりやすい。

一方、親の愛情を末永く独り占めしやすい立場にいるにもかかわらず、意外に不安感が強かったり、気をつかいすぎて疲れやすい面がある。その原因としては、先に述べた母子分離の問題が起きやすく、依存的で、不安が強い性格になりやすいということとともに、親が年を取ってきていることで健康問題も出やすく、若い頃のような前向きなエネルギーや楽観的な明るさを、子どもに与えられなくなるためだろう。夫婦間の愛情も、長子の頃のように熱烈とはいかなくなる。

末っ子の性格上のもう一つの大きな特徴は、衝突を避け、うまく立ち回る能力が高いということである。きょうだいの中では一番下っ端の地位にあるということもあり、まともに力で争ったのでは太刀打ちできないということを、小さな頃から学ぶ。

正面からぶつかったりすることは避け、人に取り入ったり、甘えたり、気に入られることで自分の居場所を確保しようとする

アルコール依存症のリスクも?

また、上のきょうだいたちを観察する中で、人間関係のダイナミズムを察知する能力に長けていることが多く、誰ともぶつからずに上手に立ち回るのがうまい。

こうした対人関係の調整能力や人に気に入られることで活路を見出す術は、社会生活においても、一つの武器となる。

親に依存する中で、良い子や優等生として振る舞うことも多いが、親の方も知らずしらず最後の子どもに依存し、行動を縛ってしまう場合もある。長子に対しては、可能性を好きなだけ追求することを応援したのに、末っ子に対しては、こぢんまりとした、現実路線を求め、親の都合に合わせさせようとすることもある。上の子たちを援助し続けた結果、資力も健康で働ける寿命も、残り少なくなってしまったという現実的な制約もある。

親が年取ってから生まれたという場合には、過保護になりすぎて、自己コントロールの弱い未熟な人間になってしまう場合もある。アルコール依存症と出生順位の関係を調べた複数の研究が、末っ子でそのリスクがもっとも高いことを報告している

母子分離の失敗と過保護が、ストレスに脆く、自己コントロールに欠け、溺れやすい性格を生んでしまうのだろう。

末っ子の偉人としては、他にマザー・テレサ(慈善活動家)、マハトマ・ガンジー(インド独立の父)、マリー・キュリー(物理学者)、坂本龍馬(幕末の活動家)、福澤諭吉(慶應義塾大学創立者)、松下幸之助(パナソニック創業者)などがいる。親の安定した愛情に恵まれやすく、一家の平和を愛する末っ子には、博愛的で社会への奉仕に生きた人や、不可能を可能にする活躍を見せた人も多い。

サービス精神の旺盛さからエンタテイナーにも末っ子が多く、映画俳優のマーロン・ブランド、ジョニー・デップなど枚挙にいとまがない。小澤征爾の末弟である小澤幹雄は俳優として活躍している。スポーツ選手で大成する人も多く、野球選手の長嶋茂雄や落合博満などがいる。

一方、小説家の夏目漱石は末っ子に生まれたが、養子に出され、また実家に戻るという不安定な境遇で育ったため、末っ子らしくない、シニカルで人間嫌いな性格に育った。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:きょうだいコンプレックス
岡田尊司

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