GOLF
2024.09.22
ジャック・ニクラスの名言「スタンスは楽に動ける幅であって、長いクラブでは強い動きに耐えられなければならない」
この言葉は、1977年に刊行された『ジャック・ニクラス トータルゴルフ』(小学館)というイラスト付きのレッスン書に記されていたものだ。
プロの強烈なスウィングを支えるフットワーク
正しいフットワークは、アドレスで始まる。スタンスは楽に動ける幅であって、長いクラブでは強い動きに耐えられなければならない。
ニクラスのスウィングは、大きなヒールアップとダイナミックなニーアクションを伴う、強烈なフットワークが特徴だった。それほどの大きなフットワークをするには、しっかりとした土台がないと、再現性が低くなってしまうはずだ。ニクラスの、ズボンがはちきれそうなほど太い大腿部は、しっかりとした土台であり、強烈なフットワークの原動力をも生み出していたに違いない。
下半身の土台がスウィング中に崩れてしまうようでは、いいショットは望めないだろう。よって、ニクラスのように大きなフットワークを使うスウィングは、下半身を鍛え上げた人にはできるが、足の筋力が弱い一般アマチュアや高齢者ゴルファーには難しいといえる。
下半身の土台の崩れは大きなミスのもと
私のような高齢ゴルファーには、当然ながらニクラスのような大きなフットワークのスウィングは無理だ。フットワークは抑え気味にし、身体の回転による遠心力を生かしたスウィングのほうが、衰えつつある筋力でもヘッドスピードを維持しやすいのではないかと思っている。
実戦では、体重移動も小さ目で、フットワークも抑えたスウィングをしているつもりだが、それでも稀にではあるが、足がすべって大きなミスショットになってしまうことがある。すべってしまうのは右足で、ダウンスウィングで蹴るほうの足だ。これがすべってしまうと、体重が左へ移動せず、むしろ右へ動いてしまうから引っ掛けボールのミスか、チョロになってしまう。
今年のシニア選手権決勝ラウンドのマッチプレー2回戦でも、大詰めの17番(その日の35ホール目)で、右足をすべらすミスがティショットで出て、このホールを取られて追いつかれしまった。結果、エキストラホールまでもつれての敗退につながってしまったという苦い経験になった。
やはり、大きなフットワークでも小さなフットワークでも、下半身の土台が崩れると大きなミスにつながることは間違いないようだ。足をすべらせないためには、ニクラスの言うように、楽に動ける適度なスタンスの幅と、長いクラブでのスウィングにも耐えられる足のグリップが大事に違いない。
足のグリップを見直す――シューズ
ウォルター・ヘーゲンも「グリップは手だけのものではない。スタンスにおける両足の『グリプ・オブ・ザ・グラウンド』は、手のグリップにまさるとも劣らないほど重要なのだ」と言っている。
足のグリップをしっかりさせ、すべってしまうミスをなくすには、どうすればよいか。そのためには、足がすべってしまう原因がどこにあるのかを考えれば、対策も考えられると思う。
- シューズがすべりやすくなっている
ニクラスの時代は、金属製の鋲がついたスパイクシューズだった。しかし、最近は金属スパイクのシューズを禁止しているゴルフ場がほとんどだ。したがって、樹脂製のソフトスパイクシューズかスパイクレスシューズでプレーしているだろう。
ソフトスパイクや、スパイクレスシューズの靴底の突起がすり減ってしまっていると、すべりやすい。とかく忘れがちなのだが、たまには靴底をチェックして、劣化が進んでいるようであれば、スパイクを交換する。スパイクレスシューズなら、買い替えが必要だ。
シューズも結構なお値段なので、長持ちさせたいが、なるべくカート道などの舗装道路を歩かないようにしたほうがいいだろう。その意味でも、家からスパイクレスシューズを履いてコースへ行くのではなく、ロッカーで履き替えて、シューズは芝生の上専用と考えるのがいい。芝生に悪い雑菌や油汚れ、雑草の種子などを持ち込まないためにも、ぜひそうすべきだ。
足のグリップを見直す――足元の環境
- 芝生がすべりやすい状態になっている
芝生が水に濡れていると、靴底と芝の間に水の膜ができて、すべりやすくなるものだ。朝露による水滴、雨による水滴のほか、スプリンクラーの散水による水滴にも注意が必要だ。あまりにもヌカるんでいる場合は、カジュアルウォーターの救済を受けたほうがいい。そのまま打つ場合でも、重心をすこし落とす意識で大振りはしないように心掛けたい。
春先などは、肥料を混ぜた砂を撒くこともあるが、所どころに砂が多く堆積しているスポットがあり、これも要注意だ。スタンスをとったところに、そういう砂の堆積があるとバンカーと同じぐらいにすべるのだ。特に、多くのプレーヤーが狭い範囲内でショットするティーイングエリアは、入念に砂を撒く傾向がある。スタンスを取ってみて、砂が溜まっているところにあたるならば、ティーアップする場所を少しずらしたほうがいい。
- スタンスする場所のライがすべりやすい斜面になっている
フェァウェイやラフは、マウンドがあったり斜面になっていたりする。傾斜が急なライでは、うまく体重を支えにくく、やはりすべりやすい。飛距離を稼ぐために強振すると転倒して怪我をすることもあるから、欲張って強振はしないほうがいい。
急斜面では、もとより不安定だから、普通はコンパクトなスウィングをせざるを得ないものだが、左足上がりのアップヒル・ライの場合はボールを上げやすい状況でもあるので油断しがちだ。しかし、右足が低くなる傾斜だから、実は右足の踏ん張りがあまりきかず、意外にすべるのだ。やはりどんな傾斜地でも、すべりやすいことを一応は想定しておいたほうがいいだろう。
ティーイングエリアなどでも、油断しないでスウィングを
いかにもすべりやすいとわかる状況であれば、誰でも注意してスウィングしようと思うから、すべったことでミスショットになることは少ないものだ。問題は、あまり注意が必要と思えないような場所でスウィングするときだ。すべることをケアしていないから、すべったときには大きなミスになってしまうからだ。
前述のアップヒル・ライも、油断しがちなケースだが、すべって大ミスになるのは、意外なことに真っ平なはずのティーイングエリアなのだ。ドライバーショットの狙いどころを考えたりと、コースマネジメントのほうに意識が向いているし、平坦だから「すべるかも?」とは、つゆほどにも思わないからだ。
しかし、芝生が濡れていたり、砂が堆積していたりすることですべることもあれば、飛ばすためにフットワークを大きくつかうことによって、すべることもある。それに複合して、シューズの底の突起が減ってしまっていると、なおさらなのである。
すべる可能性をまったく考慮していなから、不意にすべることになり、ミスの度合いが大きくなってしまうのだ。高齢ゴルファーは、それで股関節や膝関節を痛めてしまうことにもなりかねないから、あまく見てはいけない。
スウィングするとき以外、例えばティーイングエリアへ上るときや、降りるときも注意が必要だ。ティーイングエリアは土を盛り上げて台地状に作られているから、実はその法面は急斜面なのだ。
ティショットの行方を見ながら、足元を見ずに歩き出して法面で転んでしまう人を、私は何回も見ている。昇降用階段も滑り止めが十分でなく、木材やラバーで枠を整えていたりすると、濡れたときにはすべりやすくなることもあるのだ。
私が以前に見たのは、プレーヤーが昇降用階段で転倒し、気の毒にも足首を骨折してしまって救急車待ちをしていたシーンだ。こうなっては、楽しいはずのゴルフが悲劇になってしまう。
最近は天候が不安定で、ゲリラ雷雨が増えている。雷雨は比較的短時間で過ぎ去っていくため、プレーを再開することも多いと思うが、くれぐれも足元には注意したいものである。
参考資料:
久保田滋編『ザ・ゴルフ【ゴルフ名言集】』出版芸術社、2006年
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