見城徹が、25年ぶりに思い出の味に再会した『レストラン カナユニ』 ゲーテイスト2018

名店であればあるほど、味わいや店の雰囲気は他には真似できない。見城と小山氏が一生忘れることのできない店を語り尽くす。復活を心待ちにしていた名店とは――。

知る人ぞ知る秘密の店が華麗に復活

「この店のオニオングラタンスープ、エスカルゴは、僕がずっと探し求めていた『パスタン』の味だったんだ」と見城。

『パスタン』というのは、五十年以上前に外苑前で開業したフレンチレストランのこと。

「4テーブルしかない小さな店で。夜中の3時くらいまでやっていて、文化人が集まるサロンのような雰囲気。五木寛之さんとよく食事をしたんだ。秋元もエスカルゴ初めて食べたのはこの店って言ってなかったかな? 25年くらい前に閉店して以来、寂しい思いをずっと心に持ち続けていた」

その思い出の味に再会した『カナユニ』は1966年の創業。繁華街の喧騒から少し離れた元赤坂の路地にひっそりとある隠れ家的存在。古城のような木の扉を開けると、地下に続く階段が現れ、その先からジャズの調べと人々の笑い声が漏れ聞こえてくる。フレンチレストランなのだが、名前の由来どおり「かなりユニーク」。

初代オーナーの横田宏氏は、心から楽しんでほしいと徹底して客主体のサービスを独自に創造。「1品とワインだけ」「バーでカクテルだけ」という客も歓迎し、高度成長期には深夜営業も。三島由紀夫も常連で、エッセイでは、オニオングラタンスープを絶賛していた。また、〆の食事にチャーハンやうどんも用意するなど、当時としてはかなりの常識破り。名店ながら、広くあまねくというよりも、知る人ぞ知る秘密の店として、コアな常連に愛されてきた。

この初代『カナユニ』がビルの取り壊しのため50年の歴史に幕を下ろしたのは2016年3月のこと。あの独特の雰囲気を再現するのは大変なことだったに違いないが、昨年12月のクリスマス付けで横田氏の息子・誠氏から顧客の元に1通の嬉しい手紙が届いた。

「もう一度、真っ白なところからカナユニを始めます」と。

「残念ながら、赤坂の店は縁がないまま行けずじまい。でも、友人の誘いで新しい店にいち早く行けたのは本当によかった」

以前は故・藤村俊二氏が経営していた『オヒョイズ』 だった場所。天井の古木の梁が前の店を彷彿させる。 家具もピンクのクロスも赤坂の時と同じもの。テーブルに赤いバラを1本飾るのも創業当初からのスタイルだ。奥に見えるのは、初代『カナユニ』の扉。

料理スタッフも若いメンバーに代替わりしたが、料理長・赤羽弥穂(みほ)氏は「昔のままのレシピで受け継がせていただいています」と、『カナユニ』歴8年を経た今も謙虚に店の味を毎日丁寧に仕込んでいる。

「サービスにも心がこもっているし。温かみのある素晴らしい店だと感心した。なかなか出合えない店に、今年早々に縁がつながり、本当に嬉しいよ」

Restaurant Kana-uni
TEL:03-3404-4776
住所:東京都港区南青山 4-1-15アルテカベルプラザB1
営業時間:17: 00〜L.O.24:00
休み:日曜・祝日
席:カウンター4席 、テーブル24席 個室1室(〜8名)※4席×2も可能

Text=藤田実子 Photograph=原 務