2024年10月9日にカザフスタンで行われた卓球アジア選手権の女子団体決勝で、日本が中国を3-1で破り、2021年ドーハ大会以来2大会ぶりの優勝を果たした。中国を破っての金メダルは1974年横浜大会以来、50年ぶりの快挙。張本美和(16歳)が第1試合で世界ランキング4位の王芸迪(27歳)に3-2で競り勝ち、第4試合では同1位の孫穎莎(23歳)に3-2で逆転勝ち。2勝を挙げて歴史的な大金星の立役者となった。急成長中の16歳に迫る。
世界ランキング1位に勝利
半世紀ぶりの快挙の中心に、16歳の張本美和がいた。
「正直、50年ぶりということは知らなかったんですけど、自分がそのメンバーのなかに入ることができてすごく嬉しい気持ちです。(決勝の中国戦で)2試合も勝てると思っていなかったので、びっくり」
パリ五輪の決勝で0-3と完敗した中国との再戦。第1試合で世界ランク4位の王芸迪(ワンイーディ)を撃破した。第1ゲームを落としながらも第2、第3ゲームを連取。第4ゲームを失い並ばれたが、第5ゲームを11-9で制した。絶対女王の中国から先手を奪う白星。会心の試合だったが、ハイライトはまだ先だった。
第2試合で伊藤美誠が敗れ、第3試合で平野美宇が勝利。第4試合に再び、張本が登場した。今度は過去6戦全敗で世界ランク1位の孫穎莎(スンイーシャ)と激突。平野が通算1勝6敗、早田ひなが通算0勝16敗という日本勢の天敵だ。
第1、第2ゲームを落としたが、徐々に相手の速攻に対応。ラリーでも上回り第3、第4ゲームを制すると第5ゲームは11-6。0-2から3ゲーム連取する大逆転劇を演じ、歓喜をもたらした。
ここ数年の張本の成長ぶりには目を見張るものがある。シニアの国際大会に本格参戦した2023年に世界ツアーで2勝。2022年3月に624位だった世界ランクは7位(2024年10月17日時点)にまで上がった。
パリ五輪は選考レースで4番手だったが、中国勢に対する強さなどが評価されて早田、平野に続く団体要員の3枠目に滑り込んだ。
五輪本番では銀メダルに貢献。決勝で中国に敗れたが「全試合、楽しめた。最初から最後まで自分のプレーをできて、凄く良い大会だった」と充実した時間を過ごした。
パリから帰国後もほぼ休むことなく練習を続け、Tリーグや世界ツアーを転戦。アジア選手権はパリ五輪シングルス銅メダルで左手首付近の負傷明けのエース早田が試合のメンバーから外れるなか、フル回転した。
ロサンゼルス五輪での兄妹金メダルを目指す
2歳で卓球を始め、常に5歳上の兄・智和(21歳)の背中を追ってきた。小学生になると兄と比較される機会が増え「もう、やりたくない」とへこんだことは一度や二度ではない。
それでも小学1年で全日本選手権バンビの部(小学2年以下)で優勝すると、小学5年で同ホープスの部(小学6年以下)を制覇。神奈川にある木下アカデミーから誘いを受け、中学で上京した。
「五輪は夢だったけど、小学生の頃は『無理だったらいいや』ぐらいの気持ちだった。中1ぐらいから『絶対に行きたい』『金メダルを獲りたい』となった」
周囲も驚く成長曲線を描き、男子エースの兄と肩を並べる存在となった。小さい頃はゲーム機の取り合いでケンカすることもあったが、今も昔も変わらず兄妹仲は良い。
アジア選手権の男子シングルスで日本勢50年ぶりの優勝を果たした兄から「僕は中国選手に決勝で1回勝っただけだが、妹は決勝で2回勝った。僕より妹の方がすごい」と称えられ「妹が頑張っているから僕も勝ちを重ねられている。他の選手ではこういうモチベーションにならないので、ありがたい」と感謝された。
アジア選手権で張本は女子団体の金に加え、シングルス、女子ダブルスで銀メダルを獲得。3個のメダルを首から下げて帰国し「嬉しい気持ちが6割で、あとは悔しい」と3冠を逃したことを悔やんだ。
団体戦で中国選手に2連勝しても満足はしていない。向上心を持ち続け、年の世界選手権カタール大会、2028年ロサンゼルス五輪ではシングルスで、兄との兄妹金メダルを目指す。
張本美和/Miwa Harimoto
2008年6月16日、宮城県仙台市生まれ。2歳で卓球を始め、仙台ジュニアクラブでプレー。中学で関東に引っ越し、木下アカデミーに入る。今春に通信制の星槎国際高横浜に進学し、現在は木下グループ所属。Tリーグは2018年から木下アビエル神奈川の一員として戦う。父・宇さんがコーチ、母・凌さんは1995年世界選手権の中国代表。趣味はダンス。身長1m66cm。