1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウェアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた仕事人たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「人生を彩る眼鏡」の第10回は料理人・庄司夏子。「人生を彩る眼鏡#10」。
PERSON 60
料理人/庄司夏子
質の高い眼鏡も職人の高度な技術があってこそ
1日1組限定のフレンチレストラン「été(エテ)」。オーナーシェフの庄司夏子さんは、2020年に「アジアのベストレストラン50」の「ベストパティシエア賞」を、同2022年版では「アジアの最優秀女性シェフ賞」を、日本人女性として初めて獲得。ファインダイニングシーンにおいて、世界が注目する存在となった。
「普段から、サングラスやダテ眼鏡をよくかけています。人の目を見るのが結構苦手なんですが、かけていると視線をカモフラージュできる感じがして安心感があります。お守りみたいなものですね。それにレンズにカラーが入っていると、メイクをする時間がなくてもサっと目元の印象を作ることができるので」
授賞式など公の場で見せる、ファッションセンスの高さも関心の的に。今回の撮影も私服で臨んだ。着用した眼鏡は、EYEVANの「Optimo」。マットブラックのフロントに対し、艶やかに磨かれたべっ甲柄のテンプルが、さりげないアクセントを添える。
「真っ黒なものをかけることが多いんですが、このフレームはカラーが切り替えられたディテールが美しいなと。今回のような撮影の機会には自分のエゴに走らないようにしているので、こちらは操上さんやアイヴァンのスタッフの皆さんに選んでもらいました。いつもの自分と違う感じがして嬉しいですね」
どんな場面でも、つねに客観的な視点で自らがどうあるべきかを考える。その姿勢は、料理においても通底している。
「一番大事にしているのは、“お店に来てくださるお客様がいかに心地よく食事をしてくださるか”、ということ。もちろん自分の表現したいこともありますが、お客様が求めているものを提供することが、一番満足していただけるわけですから。営業中はお客様と向き合うことに集中して、食事のお好みやお酒の飲み方などによって味付けやメニュー構成、料理の順番を変えることもあります」
多くの人を魅了する、オートクチュールな料理やサービス。その華やかな一皿には、料理の価値、ひいては料理人や食材の生産者など作り手の地位を向上したいという想いも込められている。
「日本は食の都だと言われる一方で、それを支えている料理人や生産者に対する評価が低い国だと思っているんです。それは変えていきたいですね。眼鏡やサングラスも、工場の職人さんたちの技術があってこそ、クオリティの高いものが実現しているわけじゃないですか」
庄司さんは、これまで有言実行で名だたる賞を獲得してきた。そうして自身のインフルエンス力を高めることが、若い世代、なかでも女性の可能性を広げることにつながると考えてきたからだ。次なる目標はと聞けば、「今はもう自分の野望を叶えるより、自分が培ったものを次世代の子たちにシェアしていくフェーズなのかなと思っています」との意外な答えが。
「料理を学んだ若い子たちが、いざ起業しようとなった時、融資のことなど現実に直面するわけですよね。とくに女性はそこで諦めてしまうことも少なくないんです。ですから、料理人を目指す若い子たちが早いうちから知識を得ることで、サバイブできる環境を整えていきたいと思っています。私も、もう35歳になるので。やっぱり自分がまだ全力で働けている段階で次世代のことを考えないと、革命は起こせないですから」
庄司夏子/Natsuko Shoji
1989年東京都生まれ。駒場学園高等学校食物調理科を卒業後、「ル・ジュー・ド・ラシェット」(現「レクテ」)、「フロリレージュ」を経て、2014年、24歳で独立しパティスリー「Fleurs d’été(フルール・ド・エテ)」を開店。翌年にはレストラン「été」もオープン。2020年「アジアのベストレストラン50」にて「ベストパティシエ賞」受賞。2022年には「女性最優秀シェフ賞」も受賞している。
問い合わせ
EYEVAN Tokyo Gallery TEL:03-3409-1972