PERSON

2022.12.11

「雪山を中心に自分の人生を楽しみたい」松田翔太がリアルスキーライフを告白

スキーが好きという俳優やタレントは少なくないが、ここまで本気で入れこんでいる人物もほかにない。自らの脚で雪山に登り、パウダースノーを巻き上げて滑る。これはそんな松田翔太さんのリアルスキーライフ。【特集 絶頂スキーリゾート】

shota matsuda

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松田翔太、スキーという人生

数々のドラマや映画、CMで活躍する松田翔太さんは、冬になると多忙な俳優業の合間を縫って、足繁く雪山に通っている。それも好んで滑るのはいわゆるスキー場ではなく、リフトのない自然の雪山だ。

必要な冬山装備一式を背負い、朝早くから粉雪を踏みしめてピークに登り詰めると、いまだ手つかずの白い斜面に大きなターンを描く。都会の喧噪から遠く離れた雪山の奥深くにいるのは、自分と仲間たちだけ。見渡す限りに人工物は一切なく、雪世界特有の静寂感と肌を刺す冷気が心地よい。松田さんが愛して止まないのは、そんなバックカントリースキーの世界である。

フォロワー132万人超という松田さんのインスタグラムには、男前のポートレイトに混じって、かなりの頻度で雪山シーンがアップされている。それも世界中での滑走を自撮りした動画も少なくない。それを観れば「趣味はスキー」という段階を超越していることがわかる。

以前はたしか、プロフィール欄に「アクター」と並んで「スキーヤー」と併記されていたと思うが、それを見たスキー誌編集部がざわついたことを知っている。今はよりマニアックなスラングにアップデートされているが、その言葉を知っていること自体、コアなスキーコミュニティの真っ直中にいる証だ。

俳優一家に生まれ育ち、10代の頃から芸能界に身を置いてきた松田さんは、いったいどうやってそんなコアなスキーヤーになっていったのだろうか。

ワイルドで本格的な松田翔太のスキースタイル

まずは、子供の頃から登山とスキーに親しんできたというベースが松田さんにはあった。冬になると兄や妹とともに合宿制のスキー学校に預けられ、母親はその間を使って女優業に専念した。そんな冬休みの過ごし方からはじまり、中学・高校時代までスキーに親しんだ松田さんだったが、その後、留学や俳優業の関係でいったん雪山から遠ざかっていた。

そして20歳を過ぎた頃、松田さんは冬の八ヶ岳に登った。多忙だった仕事のストレスを発散させるために、ハードな環境で身体を酷使したいと考えたのだ。その時同行した冬山経験豊富な友人から聞いた話が、ひとつのきっかけになった。

「登山とスキーを組み合わせたバックカントリースキーというものがあるよ、と。雪山登山は好きですし、下りを滑って降りられるなんて最高じゃないですか。さっそく普通のスキーで試してみたのですが難しくて。それで調べてみると、専用のスキーやブーツがあることを知り、そこから少しずつ、新雪を滑る練習をしていきました。そうして気がついてみたら、こうなっていたというわけです」

バックカントリースキーにすっかり魅了された20代の松田さんは、寸暇を惜しんで雪山に通った。気圧配置を読みながら車中泊でパウダースノーを追いかけ、仲間たちとカナダの山奥にスノーモビールで分け入り、1ヵ月ほどのキャンプ生活で滑りまくる。それを何年間も続けた。私たちが知るのは都会の洗練を纏(まと)ったスタイリッシュな松田さんだが、その姿からは想像もつかない、ワイルドでチャレンジングな行動ぶりだった。

「20代の頃はとにかく滑りたかったから、そうして割り切ったやり方でスキーに集中していたのですが、今は家族と過ごす時間も大切にしているから、なかなかそうもいきませんね。それに経験を重ねたおかげで、時間の使い方も旅のスキルもアップしているので、さっと飛行機に乗って北海道に渡って、目いっぱい滑り倒してから東京に戻り、翌日はまるでワープしたかのようにスタジオで撮影している、なんてこともよくあります」

この気持ちのまま雪山と向き合っていたい

一般的なゲレンデスキーと違って、遊びというには大きなリスクが伴うのがバックカントリースキーだ。それを理解したうえで、松田さんが魅了され続けている理由は何か。

「夜明け前から起き出して準備をして、必要な食料と自分と仲間の命を守る装備を背負い、登るルートを決める。滑る斜面のコンディションを予測し、雪山の頂上に立って、そこからご褒美のようにスキーで滑り降りる。仲間と一緒ですが、基本的には誰にも迷惑をかけず、すべて自分で責任を負って行動する。その一連の過程が無心になれるというか、実に気持ちいいんですよね。目標を決めて、そこに向かって集中し、最後はボロボロになって帰ってきて、フカフカのベッドに倒れ込む。その充実感というか達成感がなんともいえないんですよ」

そんな自他ともに認める雪山好きの松田さんは、俳優業とスキーをしっかり両立させつつ、雪山とともにあるこれからの人生を考えているという。

「雪山に行き、ただ純粋にスキーを履く。今の僕は何かのためにスキーをやっているのではなく、それ自体がやりたいことなんです。いつまでも、この気持ちのまま雪山と向き合っていたいし、そうやって生きていきたい。あくまでも趣味なのですが、そうして雪山を中心に自分の人生を楽しんでいきたい。他の贅沢はできなくてもいいから、これだけはずっとやっていきたい。そう思っています」

ラニーニャ現象が起きた今年は、雪の多い寒い冬になるという。多くの人には迷惑な予報かもしれないが、滑る人にとってはこれ以上ない吉報だ。

「四季のなかで冬が一番好き」と語っていた松田さんも、今頃は各地の積雪情報に一喜一憂しながら、SNSから流れてくる仲間たちの初滑り自慢にヤキモキしているに違いない。あるいは、嗅覚を生かしてよい雪を当て、すでに幸先のいいスタートを切っているかもしれない。滑る喜びを知れば、寒い季節も楽しく過ごせる。待ちに待った季節はもうすぐそこだ。

Shota Matsuda
1985年東京都生まれ。近作に映画『ディアスポリス―DIRTY YELLOW BOYS―』(2016/熊切和嘉監督)、『オーバー・フェンス』(2016/山下敦弘監督)、 『東京喰種トーキョーグール【S】』(2019/川崎拓也、平牧和彦監督)、『一度死んでみた』(2020/浜崎慎治監督)、『望み』(2020/堤幸彦監督)など。2015年からのシリーズ「au三太郎」CMも好評。役者として第一線で活躍しながら「Skibum aristocrat.」を自称するスキー愛好家である。

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【特集 絶頂スキーリゾート】

TEXT=寺倉力

PHOTOGRAPH=TAKAY

STYLING=丸山晃

HAIR&MAKE-UP=KIKUCHI

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