ゲーテ2022年9月号の表紙を飾った二宮和也さんのスペシャルインタビューをお届け。【特集 涙するハワイ】
ハワイは、仲間が楽しそうにしているのを見て嬉しいなぁ、と思う場所
「皆さんとは少し違うかもしれませんが、僕はハワイに着いた瞬間からスイッチが入るというか、滞在中はずっと緊張しているんです」
23年前、デビューの会見を行った場所でもあり、その後仕事で幾度も訪れたハワイ。世界有数のリゾートも二宮和也さんにとっては戦いの場だ。
「時差ボケにならないように着いた瞬間から身体を調整して、仕事でパフォーマンスを最大限発揮できるようにする。食べ物も、仕事に影響するリスクがありますから、滞在中は完全に火の通ったものしか食べません。ステーキとかシーフードとか美味しそうだし残念ですけどね。撮影で海に行くこともありましたが、事故があっては周りに迷惑がかかるので、常にシビアに注意を払っていました」
エンタテイナーとして、どんな場所でも、どんな時でも気を緩めることはない。それが二宮さんの仕事のスタイルだ。
「僕が基本的にインドアな人間だからというのもあるのかもしれません。でも、ハワイで仲間たちがはしゃいでいるのを見るのはやっぱり特別でした。自由時間が終わって戻ってきて『あそこに行ったんだよ』なんて楽しそうに話しているのを聞いていると、ああ、よかったなぁ、って。仲間が楽しそうなのは僕にとって一番嬉しいことですから」
僕にとっては「冒険」とは、仲間とするもの
常に周りの仲間を思いやって進んできた二宮さんは、デビューから23年を経て、俳優としても確固たるキャリアを積んできた。最新作の映画『TANG タング』で挑んだのは「ひとりでの芝居」だった。
「ロボットと心を通わせていく男の物語ですが、ロボットはCGなので、撮影現場では僕ひとりで演じるんです。本作は『冒険ファンタジー』というジャンルになるのですが、僕にとっては『冒険』とは仲間とするもの。ずっとひとり芝居だったので、撮影では冒険感を感じづらかったですが、見ている方が冒険を感じてくれるのならば、それはスタッフさん、CGチームの力が大きいと思います」
台本を受け取った時点で、どこで感情を爆発させるべきなのか、自身でプランを練った。その結果、アドリブを入れたシーンもあるという。
「ダメな男が成長していく物語ではあるのですが、物語の設定は4日間ですし、彼がひと皮もふた皮もむけたっていう風にはしたくなかった。徐々に成長していくのを見せるというより、敢えて見えないようにして、最後に一歩だけ進めたことが伝わる感じにしたかったんです。ファンタジーではありますが、人間的なドラマとしても楽しんでもらえるものにしたかった」
撮影のほとんどはひとりでの芝居だったため、いくつかあるほかの役者との共演シーンでは心が躍ったという。
「純粋に現場に人間がいるのが嬉しかった(笑)。ひとりでの芝居はタイミングとか間合い、全部僕がやりやすいようにできますが、相手がいたらそうはいきませんよね。でもそのやりづらさが、やっぱり好きだなぁ、と実感しました。噛み合わないことがあっても『そうそう、これだよ、これが人間だ!』と。リモートワークになって久々に出社した感じに近いんじゃないかと思います(笑)。ずっとオンライン会議でいいかなと思っていたけど、でもそろそろ会社行きたいな、とか。実際に人に会うと、大変なこともあるかもしれないけど、そのストレスも生きるのには大事だった、ってことに改めて気づきました」
とあるシーン、リハで共演する武田鉄矢さんのお芝居を見て震えるほど感動した。
「武田さんを間近で見ることができただけで、この作品に参加した価値は何十倍にも上がりました。凄まじすぎて本番では違ったテイストにしたようですが、とてもカッコよかった」
人から刺激を受けながら仕事をする。そんな当たり前なことすら、変わりつつある近年。ハワイの風を思い出しながら仲間を思う原点に、二宮さんはこの撮影のシャッターがおりる瞬間、立ち戻っていた。
──二宮和也のさまざまな表情が見られる、ゲーテ2022年9月号は必見!
Kazunari Ninomiya
1983年東京都生まれ。’99年に「嵐」としてハワイにてデビュー会見。クリント・イーストウッド監督作『硫黄島からの手紙』、山田洋次監督作『母と暮らせば』などで役者としても高い評価を得る。公開待機作に『ラーゲリより愛を込めて』がある。
『TANG タング』
ベストセラー小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の映画化。記憶をなくしたロボットと、妻に家を追いだされたダメ男の世界を巡る冒険ファンタジー。ふたりが見つけた人生の宝物とは? 監督は『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』などの三木孝浩氏。
8月11日(木・祝)全国ロードショー
監督:三木孝浩
脚本:金子ありさ
出演:二宮和也、満島ひかり、市川実日子、小手伸也、奈緒、京本大我(SixTONES)、武田鉄矢
原作『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(デボラ・インストール作 松原葉子 訳 小学館文庫)
配給:ワーナー・ブラザース映画