2022年5月初旬、タグ・ホイヤーの若きCEOフレデリック・アルノー氏が、2020年7月に就任後、初来日を果たした。この2年間の取り組み、その成果というべき’22年の新作、そしてビジネススタンスを語る。【特集 高級腕時計のシゲキ】
タグ・ホイヤーCEOフレデリック・アルノー、インタビュー
「謙虚な姿勢で、多くの話に耳を傾けることですね」
ビジネスパーソンとして大切にしていることをたずねると、若さに似合わぬ答えが返ってきた。フレデリック・アルノー氏、27歳。LVMHグループを率いるベルナール・アルノー氏の第4子。2020年、タグ・ホイヤーCEOに25歳で就任し、注目を集めた。
「この2年でタグ・ホイヤーのヘリテージをベースに、より強力な戦略を打ち立て、特に『カレラ』『アクアレーサー』のアイコン化を推進しました。我々はアヴァンギャルドなウォッチブランドを標榜していますからイノベーション力も重要です」
その成果が今年の新作時計見本市、ウォッチズ&ワンダーズで発揮された。
「『カレラ プラズマ』は象徴的なモデル。ナチュラルダイヤモンドではできないことを実現するために、ラボグロウンダイヤモンドを開発し、タブーに挑戦しました。『アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバー』は、本格派ダイバーズに注力し、メゾンのヘリテージを進化させました。モータースポーツとの絆をいっそう強化した『モナコ ガルフ スペシャルエディション』も、アヴァンギャルドなスタンスから生まれたもの。同時に、このモデルに象徴されるアヴァンギャルドさとタイムレスさとのバランスにも配慮しています。今後は、オートオルロジュリー、つまりトゥールビヨンをはじめとするハイエンドウォッチのジャンルにも積極的に取り組みたいですね」
今、時計界のみならずデジタル・ネイティブ層の開拓が急務となっている。自身もそうした世代に属す若きCEOは、この問題にどう向き合うのか?
「腕時計が徐々に必需品でなくなってきたのは事実ですが、私自身、時計は人となりを雄弁に語るモノだと思っています。若い層はデジタルを通じて技術やディテール、背景など豊富な情報にアクセスし、むしろ時計への関心は高まっている。適切なチャンネルを通じて彼らにアピールできれば開拓の余地は大きい。彼らを引きつけるコラボレーション、例えば藤原ヒロシさんとのプロジェクトや、任天堂とコラボしたスーパー・マリオのコネクテッドウォッチも世界中で好評を博しました。日本は重要なマーケットですし、日本のアーティストやブランド、企業などとのコラボレーションにも可能性を感じています」
ラグジュアリー界の帝王、ベルナール・アルノー氏のDNAが着々と花開きつつある。
Frederic Arnault
1995年パリ生まれ。LVMHグループを率いるベルナール・アルノー氏の第4子にして三男。2017年タグ・ホイヤーに入社。ʼ20年CEOに就任。「初めて手にした本格機械式時計はタグ・ホイヤー『アクアレーサー』。以来、タグ・ホイヤーひと筋です(笑)」
2022年、新作時計はタイムレスでアヴァンギャルド
1982年発表の1000m防水ダイバーズのレガシーを受け継ぐ1000m防水モデル。ヘリウムエスケープバルブを備え、飽和潜水に対応。オレンジを効かせたデザインがアイコニックかつ視認性も高い。実力派サプライヤー、ケニッシ社がタグ・ホイヤーのためだけに作成したキャリバーを初搭載。
人工的に製造されたラボグロウンダイヤモンドをケースにセットしたほか、リューズ、インデックス、ダイヤルにも採用。6時位置には、カーボン製のヒゲゼンマイによるトゥールビヨンを搭載。アヴァンギャルドさが際立つ1本。10気圧防水。
1960~’70年代にモータースポーツのスポンサーとして名を馳せ、ホイヤーとも関係の深いガルフ石油とのコラボモデルのアップデート仕様。ダークブルー、ターコイズ、オレンジのモダンなカラーリング。自社製キャリバー ホイヤー02を「モナコ ガルフ」としては初搭載。10気圧防水。
問い合わせ
タグ・ホイヤー TEL:03-5635-7054