ホテルとクルマを扱う異業種ながら、「ほかでは得られない体験価値」を提供し、業績を伸ばし続けている星野リゾートとStellantisジャパン。その経営者ふたりが、北海道・旭岳でパウダースノーを満喫しながら、これから提供すべきラグジュアリーの本質について語り合う。
ラグジュアリーの本質を知る“体験”が企業価値になる
国内外56ヵ所のリゾート施設を運営する星野リゾート代表・星野佳路氏と、ジープを始めとする8つのカーブランドを擁するStellantisジャパン代表取締役のポンタス・ヘグストロム氏。星野リゾートとジープは、過去に3回、イベントでタッグを組み、その4回目にして初めてトップ同士が顔を合わせ、北海道の旭岳で共通の趣味であるスキーを楽しんだ。ホテルとクルマ、業種は違えども、ともに顧客に“体験”を提供する企業。今後、どんな新しい体験が企業価値になるのか? ふたりの話が尽きることはなかった。
ヘグストロム 「星のや富士」はレセプションが離れにあって、そこから宿までの送迎車がジープ ラングラーだと聞いた時は本当に驚きました。
星野 日本初のグランピングリゾートをコンセプトにした宿なので、その最初の体験として、客室のあるキャビンに到達するまでに、日常から非日常へのトランスファーの仕かけを用意したいと思いました。それにはジープしかないと。実際に乗ったお客様のテンションは、予想以上のものでした。
ヘグストロム 私は、ただ寝泊まりする場所だった日本のホテルを、体験を提供し、家族や友人と過ごす大切な場所へと概念を変えたのが、星野リゾートだと思っています。
星野 ジープもそうですよね。とても個性的だし、憧れの存在だけど、単なるラグジュアリーではない。アドベンチャー、ワイルド、ネイチャーというイメージを、乗った瞬間から体験できるクルマですね。
ヘグストロム コロナ禍において、クルマは個人の空間のまま移動ができる安全な手段だと再認識され需要が増えました。そしてクルマでの旅は、日本の素晴らしさを再発見する大きな機会になったのではと思います。
星野 おっしゃるとおり。今まで海外旅行派だった方まで、国内旅行を見直し、しかも評価してくださった。そして私たちの業界にとっては、旅に出たいと気持ちを搔き立てるクルマがとても大事。ジープを見ていると通勤ではもったいない。やはり旅が似合います。そして私たちは、ジープで出かけた先にふさわしい宿や体験を提供する。そういう意味で、我々は相乗効果がある産業だと感じます。
ヘグストロム 今日の旭岳滑走も、とても有意義でしたね。星野さんはスキーの大先輩です(笑)。私の出身地であるスウェーデンはスキー大国と思われがちなんですが、実際は降雪量が少なく、寒いし暗い。子供の頃からスキーといえばアルプスまで行って、往復3000㎞。辛かった(笑)。それに比べ、300㎞でいろいろなスキー場に行ける日本は恵まれています。
星野 確かにそうですね。でもトマムやニセコ、アルツ磐梯(ばんだい)も集客がうまくいき利益が出ている反面、高級化しすぎてしまっている。もっと安いけど長期滞在ができ、スキーをたくさん楽しめる場所も提供すべき。例えば「ジープビレッジ」なんてどうでしょう。スキーリゾートの価値のひとつが、いかにスキー場に近い場所にホテルを造るかなんですが、それを建てるにはものすごい投資額が必要。でもスキー場の目の前にジープで乗りつけ、仮設の寝泊まりできる場所があって、中央にキャンプファイヤー、その周りにはキッチンカーが集まる……。楽しいと思いませんか?
ヘグストロム 非常に楽しい体験が提供できる、面白いプロジェクトですね。ぜひ実現したい。
星野 ラグジュアリーには豪華絢爛という軸があるけれど、これからは上質で、唯一無二の体験が得られてこそラグジュアリーと呼べると思う。私にとっては素晴らしい景色のなか、きれいな雪面に立てる。それがラグジュアリーなんです。
OMO7旭川 by 星野リゾート/1泊では惜しいほどグルメも観光も充実
OMOは星野リゾートが展開する都市ホテルブランド。人気観光地の富良野や美瑛、旭山動物園にも好アクセスな旭川。ホテルから徒歩圏内に、美味しいラーメン、ジンギスカン、居酒屋など多数の飲食店が連なっている。館内に高温サウナとミストサウナを持つ「サウナ プラトー」があるのもありがたい。「北海道の美しい朝食」を目指した朝食ビュッフェは、焼きたてのワッフルとローストビーフ山わさびごはんが名物。
OMO7旭川 by 星野リゾート
住所:北海道旭川市6条通9丁目
TEL:0166-29-2666(宿泊予約)
料金:1泊¥20,000〜(1名1室あたり、税込、食事別)