「仕事はバランスが大事。これからもっと楽しくなる予感がします」
12月31日公開の映画『明け方の若者たち』で、黒島結菜が演じる〈彼女〉の登場シーン。大人びた美しい横顔に、主人公の〈僕〉と同じく目が釘づけになってしまった。それを告げると「え! ホントですか!?」と驚いて、照れ笑い。そこに〈彼女〉の気配はない。どのようにあの大人っぽさを醸しだしたのだろうか?
「〈僕〉より2歳上なので、余裕を大事にしたいなと思いました。それを出すために、〈僕〉のことを可愛いと思ったり、動作をゆっくりしたり。〈彼女〉はよくよく考えるとズルい人なんです。でも、観た人に『嫌な人だったな』という印象を与えたくなくて。〈僕〉に対して嘘はなかったし、真摯に向き合っていたと思うので、そこを大事にしました。私も〈彼女〉と一緒に、〈僕〉とのすべての瞬間瞬間を純粋に楽しんでやる、と挑みました」
本作では落ち着きのある大人の女性を演じ、2022年度前期のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』ではヒロインの数十年に及ぶ人生を演じる。求められるものが増えた現在の心境は「仕事が楽しいです。これからもっと楽しくなる予感がします」と前向きだ。
「朝ドラは、キャストの皆さんもいい人たちですし、信頼できるスタッフさんが集まっていて、安心できる現場がもうできあがったようなもの。あとは健康に気をつけて一生懸命やるだけです。こんな風に、その時々で出合ったやりたいことを全力でやっていたら、この先もなんとかなるんじゃないかなと思うようになりました」
俳優業に対して「自信がない」と弱音を吐いた、かつての黒島結菜はもういない。
「プロが集まった仕事の現場で、そんなことを言うのは失礼だなと思ったので、自信がなかったとしてももう言いません(笑)。そもそも自信があるとかないとか、自分のことを考えすぎるのはやめました。一生懸命作品をつくって、それを観た人が『いいな』と思ってくれたらそれでいいんですよね」
仕事には100%の力を注ぐが、プライベートとのバランスは、仕事4.5でプライベート5.5が理想だという。コロナ禍で自分に向き合い、そのバランスに落ち着いた。
「この仕事は特殊ですし、体力的にも精神的にもきついことが多いので、仕事の割合が大きすぎると自分がなくなっていく怖さがあったんです。休みがあまりなかった時期は、家に帰って寝るだけの生活でした。休みの日は一日中寝て、次の日はまた仕事。今思うと、よくあんな生活をしていたなって(苦笑)。この1〜2年で自分のペースをつくることができました。自分なりに、ルーティーンに沿った生活をするようにしています」
保護団体から引き取った2匹の犬たちも、生活にいいリズムを与えてくれているという。
「どんなに忙しくても毎日散歩をするようになりました。犬が楽しそうな姿を見ると嬉しくなるし、癒やされます」
コロナ禍前の気分転換は海外旅行。初めてのひとり旅はキューバで、目的はアメ車だった。現在はドッグフレンドリーなキャンプ場で、お酒を飲みながらボーッとする時間がリフレッシュになっているという。
「キャンプは、ちょっと不自由なところがいいんです。一日くらいお風呂に入らなくても、突然雨が降ってきてもなんとかなるから、『全部大丈夫だ』という気持ちになれます」
『明け方の若者たち』
監督:松本花奈
原作:カツセマサヒコ『明け方の若者たち』(幻冬舎刊)
主題歌:マカロニえんぴつ「ハッピーエンドへの期待は」
出演:北村匠海、黒島結菜、井上祐貴ほか
12月31日全国公開
2012年、4月。就職先が決まった大学4年生の〈僕〉(北村匠海)は、飲み会で出会った大学院生の〈彼女〉(黒島結菜)に一瞬で恋に落ちるが、いつか終わりが来ることを予感していた……。恋愛と社会の両方で壁にぶちあたりもがく〈僕〉の、“沼のような5年間”を描く青春映画。
ベスト¥48,400、ボディスーツ¥59,400(ともにフミカ ウチダ/クリフ TEL:03-5844-6152) パンツ¥35,200(フィーニー TEL:03-6407-8503) イヤーカフ¥57,000(シャルロット シェネ/エドストローム オフィス TEL:03-6427-5901)