1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウエアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた熱き男たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「男を起動させる眼鏡#38」。
PERSON 38
騎手/武豊
「かけただけで、メイド・イン・ジャパンの品質のよさがわかる」
あまり知られていないことだが、ジョッキーになるためには視力の規定がある。競馬学校の応募資格は裸眼で両眼とも0.8以上の視力が必須。2022年から改定され、視力は両眼で0.8以上、左右共に0.5以上でソフトコンタクトレンズの着用も可となるが、レースに出るためには騎手免許が必要であり、更新の際には視力検査もある。ジョッキーとして長く活躍していくには、視力の維持はかなり重要な要素となる。
「もちろん視力はいいんですけど、視力が落ちないように気をつけているかな。長時間パソコンに向かわないとか、暗いところで本を読まないようにしようとか、あるいは日差しの強いところではサングラスをするとかね」
仕事では、眼鏡は不要。あくまでも周囲に気づかれないように素顔を隠すサポートするためモノとして、眼鏡を愛用している。そんな武さんが眼鏡をかけ始めたのは、二十歳の頃。
「当時流行っていた黒縁のタイプを選んだり、人気タレントを真似たり、ファッションとしていろんな眼鏡を楽しんできましたね。今でも眼鏡は必ず毎日持ち歩いています。移動中であまり話しかけられたくないなって時にも眼鏡をかけますね。あと最近手に入れたのは、老眼鏡かな(笑)。好みの眼鏡は、フレームが小さめでかけ心地が軽いタイプ。今日かけている眼鏡は、まさに理想です。これはアイヴァンのブティックで、スタッフの方と相談しながら選びました。レンズは薄いブルーにしています」
武さんが着用しているアイヴァンの「765」は、リムの上部が直線になっている“クラウンパント”のデザインを採用。素材はチタンだが、一枚のプレートから切削とプレス加工で作った贅沢なモデル。リムとブリッジを一体成型しているため、軽いのに極めて強度が高い。こういった製造方法は、眼鏡の聖地、福井県鯖江でなければ不可能であり、まさにメイド・イン・ジャパンの技術の粋が詰まっている。
「なるほどね。眼鏡をかけた時にすっとなじむ感覚には、理由があるんですね。日本製の製品は仕事がきめ細かくて、機能もしっかりしている。ジョッキーの間でも日本製の道具は人気で、海外選手も愛用していますよ。僕自身も国産の“あぶみ”を製作するプロジェクトを進めていて、日本のモノ作りのレベルの高さは実感しています。欠かせない存在ですね」
眼鏡の細部を子細に観察し、作りのよさに納得した武さんは、おもむろに取材の前日に出走したレースで使用したジョッキーゴーグルを取りだした。
「こういうゴーグルって、アイヴァンで作れないのかな(笑)。実はジョッキー用のゴーグルって専門の商品がないんです。みんなが使っているのはスカイダイビング用。天候が悪い時は3枚とか4枚とか重ねてつけて、泥などで前が見えなくなったら一枚ずつ外して視界を確保しながら、レースをしているんです。ジョッキーにとってゴーグルは必需品ですから、もうちょっと進化してもいいと思うんですよね」
アイヴァンの眼鏡のクオリティを知り、モノ作りのレベルの高さを知ったからこその提案。もちろん冗談ではあるが、ちょっと期待しているようにも見えた。
Yutaka Take
1969年3月15日、京都府生まれ。’79年乗馬を始め、’84年にJRAの競馬学校に入学。’87年に騎手デビューを果たし、翌年菊花賞を制しGⅠ初勝利。地方海外含め100勝以上のGⅠ制覇、史上最速・最年少(26歳4ヵ月)で通算1000勝達成、通算4300勝達成など数々の伝説的な最多記録を持つ。2005年、ディープインパクトとのコンビで史上2例目の無敗での牡馬3冠を達成。’10年の落馬負傷により、約3年に及ぶスランプに陥るも’13年の日本ダービーをキズナで制して完全復活。50歳を迎えた’19年には昭和・平成・令和と3元号GⅠ制覇を達成。'21年12月19日にはドウデュースで朝日杯フューチュリティステークスを制し、史上初のJRA・GⅠ完全制覇までマジック1とした。父は元ジョッキーで調教師も務めた故・武邦彦。弟は元ジョッキーで、現在は調教師を務める武幸四郎。
問い合わせ
EYEVAN 7285 TOKYO TEL:03-3409-7285