師匠か、恩師か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。連載「相師相愛」第62回は、デザイナーと経営者。
good design company クリエイティブディレクター 水野 学が語る、髙島宏平
いつ出会ったか覚えていないようなタイプの出会いってありますよね。まさにそうで、昔から知っているかのように、一緒にいると楽しい時間を過ごすことができるんです。飲んでいても、あっという間に時間が経ってしまいます。
頭脳明晰さと人情味の両方が備わっていて、全力で人を楽しませようとする人なんですが、出会って何年も経ってから一緒に仕事するようになって改めて思ったのは、人をとにかく大切にする人だ、ということ。例えば、デザインチームのトップの方は、創業期からいる人なんです。大学生でオイシックスに参加して、今も変わらない。大切にされているから、こんなにも残ってくれているんだと思うんです。何か仕事で大きな判断をする時にも、事業や経営の話の前に、必ず人についての話が出てくる。
一見ドライに見えるかもしれませんが、まったくそんなことはない。それこそ以前ウチのスタッフ交えて飲んだら、未だにその子の元カレの名前まで、覚えてるんですから(笑)。
もともとオイシックスのファンだったので、会社が大きくなって、デザインがその規模に収まらなくなってきているな、とは感じていました。性格的にどうしても気になっちゃうんです。もっとこうしたらよくなるなとか(笑)。そんな話をいろいろしてみる機会があって、そうしたら、やっぱり課題はもう認識されていたんですよね。本人もデザインに詳しいですし。
それで、単にデザインに携わるだけでなく、デザインチームのトレーニングにも携わるという、ちょっと新しい仕事の関わり方になりました。少しでもオイシックスの考え方が世の中に広まるために力になれたら嬉しいです。
オイシックス・ラ・大地 代表取締役社長 髙島宏平が語る、水野 学
会うたび、デザインやロゴについても話をしていたんですが、仕事をしたことはありませんでした。知り合って何年も経ったある時、和食をカウンターで一緒に食べていたんですが、水野さんがいきなりアルバムのようなものを出してきたんです。「プレゼンではありません、プレゼントです」と。中には、オイシックスに関して、いろんなデザインが描かれていて。びっくりして、キュンとして(笑)。
デザインに課題は感じていましたが、それこそロゴは、心を裸にできるようなデザイナーに出会えたら変えようと思っていました。じゃあ、全部委ねてみよう、と。そこから仕事が始まるんですが、なかなかデザインの話が始まらないんですよ(笑)。診断フェーズが長い。それで、いろんな話をして、ロゴだけ変えるんじゃなくて、全デザイナーの上司みたいな立場になってもらうことになって。事業が成長しないデザインには意味はない、と水野さんは本気で思っています。まさにプロフェッショナルなんです。
かかりつけ医みたいな感じですね。とにかくいろんなことを聞かれる。最近、困ってることは何ですか、みたいな。それで最後に処方箋として、デザインが出てくる。お願いしていないことまで(笑)。すごいなぁと思うのは、最終OKを出したのに、後から「こんなのを考えたんです」と追加で送られてきたりすること。僕を満足させることはどうでもよくて、オイシックスが成長するかどうかを見ているんです。
そんなに頻繁に食事をしたりするわけではありませんが、会う時は会いたい気持ちが抑えきれなくなった時ですね(笑)。だから、会うと思い切り、ふたりではしゃいじゃうんです。
Manabu Mizuno(右)
1972年生まれ。多摩美術大学卒。主な仕事にくまモン、相鉄車両デザイン・駅舎等、三井不動産CI、HOTEL THE MITSUI、JR東日本「JRE POINT」など。
Kohey Takashima(左)
1973年生まれ。東京大学大学院修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2000年にオイシックス設立。’13年東証マザーズ上場。’20年東証一部に指定替え。