苦楽をともにした仲間、憧れのアートピース。椅子とは座るための単なる道具ではなく、その存在を紐解けば、人生の相棒とも呼べる存在であることがわかる。本田圭佑が愛でる一脚と、そのストーリーとは? 「最高の仕事を生む椅子」特集はこちら!
よい椅子が、仕事のパフォーマンスを変える
これまで、本田圭佑さんにとって椅子は、どこか縁遠いものだった。サッカーの世界で椅子といえばピッチ脇のベンチ。例えば、イタリア語で公園のベンチなどを意味する「パンキーナ(Panchina)」は、サッカーの世界でもそのままベンチを意味し、ここから、控え選手を意味する言葉に変化したりもする。
プロサッカー選手になってほぼレギュラーでとおし、ベンチで出番を待つ機会があまりなかった本田さんと椅子が縁遠いのも、当然かもしれない。そんな本田さんが椅子のよさを知ったのは、ここ1年ほどのことだという。
「このコロナ禍で、椅子への価値観が、一気に変わりました。今まで椅子といえばソファとかのイメージ。ただ、僕の価値観が変わったというのは、仕事で使う椅子のことなんです」
今まで椅子にこだわりはなく無頓着だった。ずっと、いろんな場所を仕事場にしてきた。
「ベッドに枕を置いて座るか、ソファを利用していました。座っているのか寝ているのかわからない、ほぼ“半寝”ですよね(苦笑)。そんな姿勢で、携帯(スマートフォン)で仕事をしていました」
コロナ禍で、住環境を見直した。いつも一緒にいる専属トレーナーの助言で、仕事用の椅子から机まで、すべてを購入。導入前は、効果のほどを説明されても、「いやいや、たいして変わらんでしょ」と半信半疑だったが、届いた「エルゴヒューマンプロ」に一度腰かけると、価値観が根底から覆った。
長く座ることで、情報をキャッチする土台が整う
「座り心地が次元を超えていて仕事のパフォーマンスが上がりました。まず、座り心地がいいのでストレスフリー。長く座っていられます。その時点で、目の前の情報をキャッチする土台が整っているわけです。腰にもいいということが、もしかしたらマインドを変えているのかもしれない。座り心地のよさが、すべてを変えるんでしょう」
ピュアな本田さんは、ここから常人を超える熱狂ぶり。椅子に熱を上げ、突っ走った。
「もう5、6脚買いました。ブラジルでも、ポルトガルでも、アゼルバイジャンでも。同じものも3脚買いましたから」
海外暮らしでチームを替えるたび、都市を転々とする生活をもう13年近く続けている。引っ越しの際には毎回、新生活で買い揃えた家具などを、お世話になった人にあげてしまう。次はどんな国に行くのか、契約するまでわからない。世界を渡り歩く本田さんにとって、ここからの人生は、椅子こそが、なくてはならないものとなる。
「今後、仮にどこかへ行くとします。例えば、ハワイに旅行に行くとなって、滞在期間が3週間となれば、僕は(現地で)椅子を買います、初日に」
いいものはいいと、勧めたくなるタイプ。テーマは、魅了された椅子についてのはずだった。しかし、最後は、本田さんらしくいつの間にか、壮大な話へと飛躍。「日本再生論」となって、締めくくられた。
「椅子は本当に大事です。『改革、椅子革命です』。日本再生の鍵は、椅子にあると言っていいかもしれないですね」