
愛犬のルロワは、ワインを抜栓するとその香りにかならず寄ってくるという。
ワインで身上潰しかけた!? 稀代のマニアかく語りき
200本以上のワインがセラーに詰めこまれ、これまで空けたボトルが所狭しと並ぶ。週1の休みと、給与のほとんどをワインに注いできた歯科技工士・尾島知明氏の部屋だ。
「ワインは知識だけではなく、経験が必要。身銭を切らないと肥やしにならないんです」

空けてきたなかには、購入金額の10倍以上になったものも。
もともとオタク気質、酒屋に通いつめ、ワインのいろはを学び、買い集めること25年。ほかの趣味をすべてやめ、財産を投じてきた。その経験から得た知識にワインマニアたちも舌をまく、一目おかれる存在だ。
「私は普通のサラリーマンですから、正直こわいと思うこともありますよ。有り金叩(は)たいて手に入れたものを大事に寝かせたのに、いざ開けてみると酸化していたりということも。でも挫折せずその経験を肥やしにしていけるかどうか。周りにもそういう仲間が多いんです」

ノイジーワインで最初に買った、シャトー・ラフィット・ロートシルト1972のラベルは額装。
土曜の夜はワインを通じて出合った異業種の仲間たちと、熱中して語り合う。
「ヴィンテージ好きから、コンビニのものを飲み比べる人まで、それぞれ愛好家。敷居が高いと思われがちですがワインの前で人は皆平等なんです」

尾島氏がワイン会を開く宇都宮の「レストラン カクライ」。ブルゴーニュを中心にストックは北関東随一。
尾島知明のWine Profile
好きなワインの傾向
所蔵している99%はブルゴーニュ。
ワインの師匠
埼玉の酒店ノイジーワイン店主・原 道郎氏
“ワインホリック”なエピソード
飼っているゴールデンレトリーバー2頭にワインの生産者の名前をつけている(ルロワとラルービーズ、通称ラリー)。
自分へのご褒美

エシェゾー 2018 ドメーヌ・ジョルジュ・ルーミエ
約¥80,000
日本には数えるほどしかなく、まだ尾島氏も飲んだことがない。飲み頃を待って将来のご褒美に。
ツウな人に振る舞う

ヴォーヌ・ロマネ ラ・コロンビエール 2018 ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレール
約¥22,000
ロマネ・コンティに近い地層の畑と呼ばれ濃密な味わいと気品を備えるこのワインをツウと。
生涯最後に飲むなら

ヴォーヌ・ロマネ クロ・パラントゥ 1994 アンリ・ジャイエ
約¥1,200,000
20年前地元の酒屋で発見。奥様が当時5万円で購入、プレゼントしてくれたアンリ・ジャイエ。
今注目の1本

ジュヴレ・シャンベルタン クレピヨ 2018 リシャール・スガン
約¥16,000
オリヴィエ・バーンスタインの元栽培長リシャール・スガン氏が起こしたドメーヌが今注目。
Tomoaki Ojima
1971年栃木県生まれ。歯科技工士。25歳でワインに開眼。以降飲み続け、修行をつむ。その膨大な知識と正確な舌で、ワインマニアたちの注目を集め続けている。