1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウエアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた熱き男たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「男を起動させる眼鏡#27」。
PERSON 27
作家/石原慎太郎
「着る眼鏡」をコンセプトとした“アイウェア”のトップブランド
石原慎太郎氏とアイウェアといえば、都政時代、公の場で縁の細いシンプルな眼鏡をかけた姿が印象深い。それが実は「こだわりがなくて、ずっと街の眼鏡屋さんで適当に作っていた」というから驚きだ。
「もともと両眼の視力が2.0はあって、眼がよかったんです。ヨットのレースでもクルーの誰より先に次のマークを見つけられたくらい」
肉体が躍動する物語を数多く生みだし、スポーツを自らの趣味としてきた作家にとって、視力がよいことは重要な意味を持っていた。
「ヨットはね、眼がよくないと駄目なんですよ。マークだけじゃなく、遠くの沖を眺めて新しい風が来ていることをほかの船より先に見つけないといけないから。年とともに眼が悪くなってしまったんだけど、白内障の手術をしたら両方1.5まで戻ったんです。それもこの頃は左右の眼でバランスが崩れてきてね」
今回、アイヴァンの実店舗で初めてしっかりとした検眼を受けたという。
「いろいろ珍しい機械があって、多角的に検査をしてもらいましたよ。この眼鏡も軽くて、本当に素晴らしい。感謝しています」
若い頃から一貫して、身につけるものに大きなこだわりは持たない。
「時計も眼鏡も、高いものを買うのはバカバカしい。3000万円もする時計を買うなら、ヨットを買いますよ。昔、デパートでプラチナ万年筆をまとめ買いする時に値切ったら断られたことがあった。『さすが石原さんですね、デパートで値切ったのはあなただけですよ』って言われたね(笑)。Make your best priceっていうのは買い物の要領で、値切ることは卑しいことじゃないんですよ」
男にとって眼鏡とはどういう存在だと思うか、と尋ねると「かけないで済むなら、ないに越したことはない!」と断言する石原氏だが、何を隠そう、アイヴァンにとって石原氏は深い縁のある存在だ。アイヴァンが視力矯正を目的とした“眼鏡”の専門店から、「着る眼鏡」をコンセプトとした“アイウェア”のトップブランドになったきっかけのひとつは、映画『太陽の季節』における石原裕次郎氏のサングラス姿。スポーティな黒いサングラスをかけた姿が、アイウェアというファッションのあり方を当時のアイヴァンの社長に意識させたという。そう伝えると、「あいつより俺のほうがサングラス姿もよっぽどカッコよかったけどねぇ」とニヤリと笑ってみせるのだった。
Shintaro Ishihara
1932年兵庫県神戸市生まれ。一橋大学卒。’55年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」で第1回文學界新人賞を、翌年芥川賞を受賞。ミリオンセラーとなった『弟』や2016年の年間ベストセラー総合第一位に輝いた『天才』、『法華経を生きる』『老いてこそ人生』『子供あっての親 息子たちと私』『男の粋な生き方』『凶獣』『救急病院』『老いてこそ生き甲斐』『新解釈現代語訳 法華経』など著書多数。最新刊に『男の業の物語』(幻冬舎)がある。
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