幾多の試練を乗り越えながら、着実にスーパースターへの階段を上り続けるメジャーリーガー・大谷翔平。今だからこそビジネスパーソンが見習うべき、大谷の実践的行動学とは? 日本ハム時代から”大谷番”として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。
大谷翔平は担当記者をよくいじる
11月某日。メジャー3年目を終えたエンゼルス・大谷に単独インタビューを実施した。大谷の肉声を聞くのは9月27日のレギュラーシーズン最終戦以来。パソコンの前でそわそわしていると大谷は画面に登場した。筆者の顔を確認するやいなや「なんでいつも代表(インタビュー)なんですか?」「(画面と筆者の顔が)近い、近い!」」と大笑いしながらソファーに座った。この柔らかい表情はオフならではだろう。
「なんでって、そりゃ担当なので……」といきなりたじろいでしまったが、いつものことといえばいつものことだ。日本ハム担当時代から大谷を見続けて早7年。大谷は筆者に限らず担当記者をよくいじる。本人に直接尋ねたことはないが、よく人を見ているのだろう。いわゆる「大谷担当」のメディアは今も昔も大谷より全員年上。「この人はいじっていいかどうか」。そこまで深く考えてはいるか定かではないが、直感的に、それはいきなりやってくるのだ。
コロナ禍で無観客開催の今季は当然、メディアの取材規制も厳しくなった。感染拡大が激しくなり、キャンプ取材中だった私も途中帰国を余儀なくされた。その後の取材は全てオンラインになった。クラブハウスの雰囲気などを直に感じられないもどかしさはあったが、シーズン中に私が最後の質問を任された時に大谷は「ちゃんと締められるんですか?」と爆笑。画面越しでも「記者いじり」は健在だった。
今回の単独インタビューでも将来的な慈善活動への意欲を問うと「公表するかしないかは僕の勝手ですけど」とニヤリした表情を浮かべ「柳原さんが気にするところではないので安心して下さい。(取材は)ダメですね、ハハハ」と笑い飛ばしていた。恒例の結婚の質問を投げかけると「柳原さんに心配されなくても大丈夫なんで。遊んでばっかりいないで。ちゃんと僕の耳にも届いていますからね」とカウンターパンチを食らう始末だった。
最後にオンラインインタビューで難しいのが「絵作り」。いわゆる紙面のメイン写真だ。インタビュー中の画面のスクリーンショットでは工夫が足りないと考え「ボールを持ってこうやって(ポーズを決めて)くれますか?」とお願いすると、大谷は「(ボールは)ないです。(ここは)家なんで僕」と拒否。だが、直後に「あー!」と何やら叫びながら立ちあがって画面の外に消え、数秒後にはボールを持って戻ってきて、しっかりポーズも決めてくれた。
野球に全てをそそぐストイックな男として知られるが、普段は少しシャイでユーモア溢れる今時の26歳。記者をいじって「ツンデレ」な態度を取るのも大谷らしさであり、野球ファン以外にもファンを増やしている要因の一つなのではないかと感じている。「遊んではいません」ということだけは強く伝えたいが……。