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2020.10.30

JRA競走馬「ゲーテ」号が誕生! 雑誌・GOETHE[ゲーテ]に閃いた。父はあのディープインパクト

競走馬の「馬名」は、誰が、どのようにして決めているのか?
ディープインパクトは”強い衝撃”と直訳できるが、まさに、その活躍は世界中に衝撃を与え、後の競馬界に深く影響を及ぼしている。2020年秋。突然の出会い、会話から生まれた”ゲーテ号”の馬名申請に立ち会ったサントス小林(筆者)とGOETHE[ゲーテ]編集部。「ゲーテ」号とともに夢を追いかける物語が今、始まった――。

2006年、凱旋門賞に挑戦したディープインパクトと武豊氏。Licensed by Getty Images

京都の夜に

2020年9月下旬、GOETHE[ゲーテ]の取材(12月発売号・武豊特集)にて、京都を訪れていた。
武豊邸で、取材アイテムの時計、靴、鞄などを本人と一緒に「何を読者に届ければ面白いのか?」と考えながら選び、無事にアイテムの撮影取材も終わり、最後の撮影場所、武豊氏行きつけのレストランへ移動する時だった。

この頃の武豊氏は、翌週に競馬界最高峰ともいえるフランスのレース「凱旋門賞」(後に、残念ながら騎乗せずに帰国することになったが)を控え、慌ただしく、騎乗する馬のオーナー・松島正昭氏と渡航準備を整えていた。コロナ禍故に、騎手と馬主の2人だけの旅路となるだけに、クルマでの移動中も電話で密な確認をしていた。

武豊

本誌GOETHE[ゲーテ]の取材でインタビューに答える武豊氏

武豊:「今日ですか? 今、ゲーテの取材でコバ(筆者)が京都に来てるんですよ。……。ハイ、わかりました!」

松島氏との電話を終えた車内で、武豊氏が「どう? 松島さんが”もし良かったら一緒に食事も”って」と言った。筆者は、今から15年以上も前に琵琶湖カントリークラブで初めて松島氏とお会いした。もちろん、武豊氏の紹介だった。京都のクルマ屋さんで、武氏とは「家族ぐるみで仲がいい」というサラッとした紹介だった。後で調べると、売上何百億円のクルマ屋さんだと知ったが……(笑)。

いわゆる威勢や虚栄心なる雰囲気は微塵も感じさせず、目配せと繊細な所作をされていたのを覚えている。後に馬主になり、「武豊騎手の夢(凱旋門賞)を追いかけるのが僕の夢」と公言する”粋”な京都の社長さんである。

『ゲーテ』ってどういう意味?

レストランに到着し、ゲーテの編集部員とカメラマンが撮影を始めた。

松島:「もうええんちゃう(笑)。今日、東京に帰らはるん? 新幹線の終電まで時間あるから、どう? 一緒に食べていったら? せっかくやし」

粋な計らいではあるが申し訳なさが先立った。2人(松島オーナーと武豊)の日程的には、この日しか渡航前に食事をする機会がなく、壮行会を兼ねていたはずである。

筆者:「スミマセン。何か………」

松島:「ええんよ、そんなの」

武豊:「今、アブミを作ってるじゃないですか。その連載もゲーテなんですよ」

松島:「おっ? アレか、知ってる。ゲーテかぁ」

松島:「ゲーテってどういう意味? あの、人の名前?」

編集部:「ハイ! ドイツの有名な文豪なんですけど、その生き方というか人生訓みたいな感じが、誌面作りの軸でして」

松島:「どんな?」

編集部:「作家であり、学者でもあり、政治家もやり……。とにかく人生、死ぬまで仕事も遊びも追い求めた人でして」

松島:「……ふ~ん。武ちゃん(笑)、どうや? 来年の馬、ゲーテって名前は?」

武豊:「いいですね! 面白いですね。多分いけますね(申請が通るかどうかの話)。これまで聞いたことないですし」

松島:「編集部としては、ええんか? 雑誌名とかぶるけど、権利がどうとか……(笑)。まっ、人名やもんね」

こうして決まった競走馬「ゲーテ」なる馬名。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの生き様に共感したことが、雑誌GOETHEの命名由来。
同じく、その生き様に自身の馬主ストーリーを投影した松島オーナー。
物語はこうして始まった。

武豊氏と松島オーナー

凱旋門賞壮行会で乾杯する松島オーナー(左)と武豊氏(右)。この場で「ゲーテ」号の命名が決まった。

お父さんは今は亡きディープインパクト

筆者:「いいんですか? 馬の名前って、何かよく分からないですが、そんなにパッと決めちゃって」

編集部:「GOETHE的には、1円もお金払ってないですが(笑)。自分の馬のような得した気分ですね……」

松島:「ゲーテって男やから、武ちゃん、やっぱりアノ馬かな? いや、でも、せっかくやからディープの仔かな?」

競馬界に疎い筆者は、2人のやりとり、種牡馬と母馬の名前が飛び交う会話についていけない……。競走馬はブラッドスポーツ、とよく言われるが、パズルのような無数の組み合わせがあると聞く。実に楽しそうである。

2人の会話を聞いているだけで、馬主としての”愉しみ”である血統考察。将来の可能性に何千万円、何億円もの”夢投資”を行い、そして、馬名を決めるのもオーナーであり、競走馬がデビューする前から、もうワクワクが始まっているのだと思った。

松島:「決めた! じゃあ、ディープの仔にしよう、ねっ、武ちゃん! 11月に入る(生まれた牧場から育成牧場へ)から」

筆者:「あの~、松島さん、GOETHEで追っかけさせて下さい!」

松島:「いいよ! せっかく同じ名前なんだし(笑)」

松島オーナーが、おもむろにスマホを取り出し、何か作業をしている。

筆者:「武さん……。まだ分からないことだらけなんですが、この先、どういう段取りっていうか、いつ、その馬は走るんですか? スミマセン……」

武豊:「まだ1歳の馬だし、デビューは来年かな」

松島:「よし、OK!」

武豊:「もう馬名申請したんですか?」

松島:「うん」

筆者:「?? えっ? もう?」

ワクワクが止まらない。正直、母馬の名前も興奮のあまり忘れてしまったが、お父さんが、あのディープインパクト、というだけでソワソワした。2019年、あまりにも突然にこの世を去ったディープが遺した仔は、残り2世代。最終世代は指で数えるほどしかいないため、来年デビュー組が実質的な最終世代ともいえる。

ディープインパクトと武豊

無敗で3冠を達成するなどG1は7勝。種牡馬としても8年連続でリーディングサイアーに輝くなど、ディープインパクトの血はまさに伝説として遺る。Licensed by Getty Images

そして、ディープと言えば武豊。武豊の夢は、ディープで果たせなかった凱旋門賞に勝つこと。
そして、その武豊の夢を叶えるのが松島オーナーの夢であり、その為に、馬主になった。
翌週には、2人だけで渡仏し、その夢を追いかける。その壮行会での出来事という場面も興奮した。

この日、もう1つのキーワードを改めて感じることができた。「行動力」「決断力」なる話だ。
筆者は、仕事柄多くの経営者と会うが、いつの時代も、業種や年齢を問わず成長し続けている会社(組織)、その経営者は、スピード感をとても大切にしている。
お金では買えない唯一無二の、そして、平等に与えられている資産が「時間」であるから。この壮行会場面にいた武豊騎手、松島オーナーとも、”行動力の塊”である。波長が合うのもよく分かる。
決断力は常に責任を伴うが、不安さ、怖さが無いのではなく、責任(結果)を受け入れる”覚悟”があるのだろう。

凱旋門賞を終えて

凱旋門賞における武豊氏の騎乗馬、ジャパン号。出走取消という、その無念のニュースを聞いた時、2人の悔しさと無念さを多くの関係者の顔がよぎった。そんなことを考えると、筆者は帰国後の週末、国内の競馬中継は見れなかった。
前週(の壮行会)、騎乗馬ジャパン号の話は、もちろん話題の中心だった。

松島:「楽しみやなぁ。頼むで武ちゃん!(笑)」

武豊:「ハイ! チャンスだと思ってますから!」

できれば、武さんからの電話を待ちたい。こっちからかける勇気がなかった。しかし、進行中のアブミプロジェクトのこと(詳細はこちら)で進捗報告、共有事項もあったため、思い切って電話した。

武豊:「おう(笑)。疲れてないけど、皆に”お疲れ様”って言われるわぁ」

筆者:「……。何て声かけていいか、スミマセン、悩んじゃって……」

明るく、朗らかな声を聞いた時、声が詰まった。彼からの関係者への”優しさ”でしかない。

「終わったことだし、まっ、しょうがないね」と武氏は言うが、一言で片付けられるはずもない。「この悔しさを必ず喜びに変えよう」という松島オーナーの公式コメントもまた、思慮深い内容であった。外野がもう何も言うことはない。当事者達が心の奥底に、その思いを込めたのだから。

武豊:「ところでゲーテって名前、雑誌的に大丈夫だった?」

もちろん、京都に同行した担当編集者が、翌日、午前中に社内調整し、快諾を得ていた。スピード感に遅れを取ってはいけない。学んだことは即実践しないと!

武豊:「楽しみがまた増えたね」

楽しみ(愉しみ)しかない。GOETHEとは「仕事が楽しければ人生も愉しい」がテーマであるのだから。

こうして始まった、競走馬「ゲーテ」号のドキュメンタリー連載。競馬誌ではない目線で、読者とともに”夢”を乗せて、レポートを開始する。

「ゲーテ」号(2019年誕生)
母「プラスヴァンドーム」。
父「ディープインパクト」。
早ければ、来年夏にデビューを迎える。

<第2回>
「夢は続く」
育成牧場へ移動し、競走馬がどうやって育ち、成長していくのか?

Santos Kobayashi
1972年生まれ。アスリートメディアクリエイション代表。大学卒業後、ゴルフ雑誌『ALBA』の編集記者になり『GOLF TODAY』を経て独立。その後、スポーツジャーナリストとして活動し、ゴルフ系週刊誌、月刊誌、スポーツ新聞などに連載・書籍の執筆活動をしながら、映像メディアは、TV朝日の全米OP、全英OPなど海外中継メインに携わる。現在は、スポーツ案件のスタートアッププロデューサー・プランナーをメイン活動に、PXG(JMC Golf)の日本地区の立ち上げ、MUQUゴルフのブランディングプランナーを歴任。

TEXT=サントス小林

PHOTOGRAPH=鞍留清隆

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