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2020.01.25

【中田英寿に・ほ・ん・も・の外伝】有名シェフも足を運ぶ日本のハーブ畑<茨城⑤>

2009年から’15年の約6年半、のべ500日以上をかけて、47都道府県、2000近くの場所を訪れた中田英寿。世界に誇る日本の伝統・文化・農業・ものづくりに触れ、さまざまなものを学んだ中田が、再び旅に出た。

にほんもの外伝

ハーブのふるさと 「シモタファーム」

旅をしていると、決して有名人とはいえない”市井の偉人”に出会うことがある。たとえば、取手市のシモタファーム社長・霜多増雄社長がそうだ。現在100種類以上のハーブを中心にさまざまな野菜を栽培する約8haの広大な畑をバックに、茨城弁丸出しで話す霜多社長が日本の農業や料理に与えた影響は、かなり大きい。

「ハーブの栽培をはじめたのは、50年くらい前かな。イギリスで農業の勉強をしようと思って飛行機のチケットを取ったんだけど、着いた先はフランスだった。横文字がまったくわからなかったから間違えて取っちゃった。英語の辞書を持ってフランスに行ったんだよ(笑)。でもその間違えて行ったフランスでハーブをたくさんつかったサラダを食べたら、すごく美味しくてな。これを日本で栽培しようと思ったんだ」

にほんもの外伝

以来始まった日本でのハーブ栽培。当初はにおいの強いハーブは市場で見向きもされなかったというが、有名ホテルのシェフなどから直接注文を受けるようになり、徐々にニーズが広まっていったという。

「いまでもいろんなシェフがきますよ。フレンチの有名シェフも来日するたびにここに足を運んでくれるんだよ」

その茨城弁からは想像もできないが、霜多社長は意外にもグローバルだ。研究熱心な彼は、イギリスのハーブ育成で有名な伯爵に手紙を送り、教えを請うたことがあるという。

「駄目もとで手紙を送ったんだけど、いきなり返事が来て一週間後に遊びに来いって(笑)。突然だったからあわてたね。とんでもないデカい敷地に着物を着たお母ちゃんと2人で行ったんだよ。それから20年以上、伯爵からはいろんなことを教わったよ」

にほんもの外伝

彼のチャレンジは、日本になかったハーブを育てたというだけではない。それを安心、安全な無農薬・無化学肥料栽培で行っているということだ。奥様の由子さんがハウスのなかで育った真っ赤なイチゴをいくつか摘んで、それを中田英寿にわたす。

「クセがなくておいしいですね。甘みと酸味のバランスがすごくいい」

安心、安全で、しかも美味しい。そんな野菜をつくりあげているのは、単なる経験値や勘ではない。彼は「味を安定させるにはエビデンスが大事」と敷地内に大手企業顔負けのラボをつくり、土壌や肥料の研究を続けているのだ。

にほんもの外伝

敷地内を散歩しながら、そこで育っているハーブや野菜を説明してくれる。ミントやローズマリー、タイム、バジルなどおなじみのハーブから、イタリアンやフレンチの特定の料理でしか使われないような珍しいハーブまで、どれも青々と元気に育っている。ときどき葉っぱを摘んで食べてみると、いずれも爽やかでエグさをまったく感じさせない。

「いろんなシェフからあれをつくってくれ、これをつくってくれっていわれるからどんどん増えていったんだよ。なかには年に1回だけソースに使うだけってハーブもあるよ(笑)」

シモタファームでは毎年インドネシアの大学からの留学生を受け入れ、農業を実地で教えている。もう20年以上続くというこの取り組みで学んだ学生は、本国に戻って研究者や農業の普及員になっているのだという。彼女たちがいれてくれたハーブティを飲むと、やはりクセのない爽やかな味わいだった。最近はスーパーなどでもいろいろなハーブを見かけるようになったし、それをなんとなく当たり前のように思っていた。だが、その多くがこのシモタファームを出発点として全国に広がっていったのだ。豪快な見た目や話し方は茨城のどこにでもいそうな“昭和のオジさん”だが、霜多社長はすごい人なのだ。こんな出会いがあるのも旅ならではといえるだろう。

「に・ほ・ん・も・の」とは
2009年に沖縄をスタートし、2016年に北海道でゴールするまで6年半、延べ500日以上、走行距離は20万km近くに及んだ日本文化再発見プロジェクト。”にほん”の”ほんもの”を多くの人に知ってもらうきっかけをつくり、新たな価値を見出すことにより、文化の継承・発展を促すことを目的とする。中田英寿が出会った日本の文化・伝統・農業・ものづくりはウェブサイトに記録。現在は英語化され、世界にも発信されている。2018年には書籍化。この本も英語、中国語、タイ語などに翻訳される予定だ。
https://nihonmono.jp/

中田英寿
1977年生まれ。日本、ヨーロッパでサッカー選手として活躍。W杯は3大会続出場。2006年に現役引退後は、国内外の旅を続ける。2016年、日本文化のPRを手がける「JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」を設立。

COMPOSITION=川上康介

PHOTOGRAPH=淺田 創

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