師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。連載「相師相愛」第37回は、どん底を経験した経営者ふたり。OWNDAYSグループCEO 田中修治×フュービックCEO 黒川将大
OWNDAYSグループCEO 田中修治が語る、黒川将大
典型的なO型で、好き嫌いが激しかった当時の僕に、「きっと合いますよ」と銀行の人に紹介されたのが、黒川さんでした。会ったら、なんたって細かくない(笑)。その後2年くらいして、OWNDAYSの買収話に出合い、ビジネスの案件として彼に提案しようとしたんです。
実は心のどこかに、自分でやる選択肢もあると思っていました。売り上げ20億円で借金14億円の会社。無茶だからこそ面白いんじゃないか、と。どこかで誰かに背中を押してもらいたいと思っていたのかもしれません。それを、黒川さんがしてくれたんです。
ただ、それからはお互い本当にひどかった。会えば資金繰りと金策の話ばかり。年末に生きているかどうか、電話で確認し合って(笑)。僕にすれば、苦しいのは僕だけじゃないんだ、と救われる存在でもあった。偶然の失敗はない。勝つこと以上に負けないことが大事。自分のダメさ加減を理解して行動する……。そういう大事な価値観が共有できる人です。
海外展開のきっかけは、黒川さんと一緒にシンガポールに行ったことでした。ここに店を持ちたい、と思ったんですね。大当たりするなんて思っていない。オープンの日、夕方から一緒にバンコクに遊びに行きました。ところが、初日から様子が違っていて。活況が続き、すぐに海外展開の拡大を決断しました。
黒川さんもすばやく海外展開されたのは、さすがです。僕もそうですが、これだと思うことは、きっちり真似します(笑)。これからも、「オレもやりたい」と黒川さんに羨ましがられるようなことをやっていきますよ(笑)。
フュービックCEO 黒川将大が語る、田中修治
初めて会ったのは15年前。素のままの印象でした。僕は気を遣われるのが好きではないので、とても気が合ったんです。仕事の話ではなく、ダイビングの話を熱弁。行ってみたかったので、後に一緒に行くようになりました。
当時、マッサージチェーンを展開していたんですが、ある時会社を買わないか、と持ちかけられました。それがOWNDAYSだったんです。ただ財務諸表を見て、僕では99%うまくいかないと思いました。でも、修治くんは再生計画を持っていた。じゃあ自分でやったら、と言ったんです。その頃から天才的な風格が漂っていたし、何かしでかしそうな雰囲気があった。
とはいえ、やっぱり大変で。僕もリーマンショック後、詐欺にも遭い、大変なことになり、お互い悲惨な2 年間を送ります。後にDr.ストレッチを始め、ふたりとも軌道に乗っていきますけど、今でも一番盛り上がる話題は、最新の倒産情報です(笑)。お互いとんでもない経験を経た、本当にレアな関係なんです。
OWNDAYSが海外進出をして大成功していた時、修治くんに言われたのが「日本企業は絶対に海外に来ないとわかった。何でも積極的にやる黒川さんですら出ないんですから」。これにはムッとしまして、絶対に出てやる、と(笑)。まだ全国への展開が途中だったのに、その年にシンガポールに2店出しました(笑)。
また、お酒を飲まない飲み会をやりたい。出張ついでの海外にも行きましょう。このゆるい感じが、なんとも楽しい。職業人としてのバイオリズムがものすごく合うんだけど、最近のOWNDAYSの勢いはすごい。ついていきますよ。
Shuji Tanaka(前)
1977年生まれ。起業家として再生案件を中心に事業拡大。2008年、巨額の債務超過に陥っていたアイウェア企業「OWNDAYS」の筆頭株主になり急成長させる。
Masahiro Kurokawa(後)
1971年生まれ。クルマの営業マンなどを経て2010年にストレッチ専門店「Dr.ストレッチ」を開業。業界トップシェアの130店舗を展開し海外進出も果たす。