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2019.05.10

【日比谷音楽祭】なぜ亀田誠治は無料で参加できる音楽祭をつくりたかったのか?<前編>

「野音」の名で親しまれ、数々の伝説的ステージが繰り広げられてきた日比谷公園大音楽堂。公園内には日比谷公会堂や日比谷公園小音楽堂などの施設もあり、日比谷公園は日本の音楽の聖地としてその名を轟かせてきた。今年6月、そんな日比谷公園を舞台に新たな音楽祭「日比谷音楽祭」が誕生する。本音楽祭の開催を呼びかけ、実行委員会の委員長を務める音楽プロデューサー亀田誠治氏に話を聞いた。

NYの「サマーステージ」を日本へ

ニューヨークのセントラルパークでは、毎年6月から10月まで「サマーステージ」という催しが開催されます。会場内のステージでは連日コンサートが行われ、さまざまなアーティストが登場します。ロックやポップスはもちろん、新進気鋭のジャズバンドだったり、クラシックの楽団が登場したり。エルビス・コステロやマライア・キャリーといったスーパースターの出演も。「サマーステージ」では、こうしたアーティストの演奏が無料で楽しめるのです。

音楽ジャンルもさまざまですが、訪れる客層も実に幅広い。夜のコンサートは8時頃の開始になりますが、コンサートを見るための整理券が朝の10時から配られます。その整理券をもらうために、朝8時くらいから人が集まり始めます。老夫婦だったり、ジョギング姿のカップルだったり、ワンちゃんを連れた家族連れだったり。年齢や人種も多彩で、なかには観光客の姿も見られます。彼らは整理券をもらうと、夜のコンサートまでセントラルパークでピクニックをしたりして1日を過ごします。その様子を見て、「これが、人々の生活に音楽が根付いているってことなんだ」と感じていました。

世代の縦軸、ジャンルの横軸をつなぐ

「サマーステージ」を見るたびに、僕の中で「こんな音楽祭を日本でもやってみたい」という気持ちが大きくなりました。日本にも、フジロックやサマソニなど、音楽フェスはたくさんあります。海外の有名アーティストの参加も多く、ある意味、日本は”フェス大国”といえます。でも、僕がやりたいのはそうしたフェスではありません。音楽ジャンルを超え、おじいちゃんから孫の世代まで、誰もが参加できる音楽祭です。世代の縦軸と、音楽ジャンルの横軸をなだらかにつないでいくような音楽祭を実現したいと考えたのです。

そうした思いを募らせて、周囲に「ニューヨークのサマーステージみたいな音楽祭をつくりたい」と話していると、2年前に日比谷公園サイドから声がかかりました。「亀田さん、日比谷公園を使った音楽祭をプロデュースしてくれないか」と。これは「天命だ」と思いましたね。それに、日比谷公園は東京の中心部に位置する都民の憩いの場。セントラルパークに似ていると感じました。日比谷公園の丸の内側には帝劇や日劇、宝塚といった劇場が建ち並び、ブロードウェイを連想させます。サマーステージと日比谷公園での音楽祭のイメージが重なりました。

2年間の準備期間を経て、「日比谷音楽祭」が6月1日・2日に開催されることが決まりました。石川さゆり、布袋寅泰、JUJU、ミッキー吉野&タケカワユキヒデfromゴダイゴら、錚々たるアーティストがコンサートを開きます。すべてのプログラムは無料で楽しむことができます。

人気ミュージシャンのライブが無料

「無料」での開催は、絶対に譲れないフィロソフィとして当初から決めていました。有料になると、お金を払ってでも見たいというファン層が中心になります。それでは、僕が描いていた「世代の縦軸と、音楽ジャンルの横軸をなだらかにつなぐ」という理念が実現しにくくなります。音楽ジャンルや世代、さらに国籍、人種、性別、言葉をボーダーレスに越えていくためには、無料であることが重要なのです。

僕は少年の頃、自宅の居間で家族そろって音楽を聴き、親に連れられてコンサートへ出かけました。でも、いまの時代は音楽の親しみ方が多様化且つ細分化しています。家族で音楽を楽しむ時間が減り、YouTubeなどの登場により生演奏に触れる機会も少なくなっています。このままでは、生演奏というものがなくなってしまうのではないか。聴く人が減り、生演奏できる実力ある音楽家も減ってしまう。音楽の未来に対して、そんな不安を感じています。

さらに現在は、音楽産業の景気が思わしくありません。使える経費が少なく、レコーディングにかけられる時間や人材が減少。ミュージシャンの生演奏ではなく、コンピューターを代用するようなことも行われています。

そんな時代だからこそ、音楽を身近なものとして取り戻したい。そのために「無料」にこだわったともいえます。ただし、音楽祭の開催には、アーティストの出演料や運営のための経費がかかります。僕の周囲には「無料での開催は不可能だろう」という人もたくさんいました。でも、僕は実現できると信じ続けました。だって、ニューヨークのサマーステージは成功しているでしょう。アメリカにできることは、日本にだってできるはずです。こうして「日比谷音楽祭」実現に向けての、資金集めが始まりました。

後編へ続く


日比谷音楽祭
日時:6月1日(土)、2日(日)10:30~20:30
開催場所:日比谷公園(東京都千代田区)
料金:無料 ※日比谷公園大音楽堂(野音)でのスペシャルコラボレーションコンサートは、観覧チケット(無料・抽選)が必要になります
参加アーティスト:The Music Park Orchestra with 石川さゆり、KREVA、coba、The Third Herd Orchestra(同志社大学)、THE SOULMATICS with TSM GOSPEL ENSEMBLE、JUJU、SKY-HI、堂珍嘉邦、ナオト・インティライミ、新妻聖子、布袋寅泰、ミッキー吉野&タケカワユキヒデ fromゴダイゴ、山本彩、よよか、梁邦彦、Rei(50音順)/大島花子、オオヤユウスケ、岡部磨知、小倉博和、GAKU-MC、金子飛鳥×林正樹、北野里沙、警視庁音楽隊、琴音、四家卯大、Smooth Ace、洗足学園音楽大学フレッシュマン・ウインド・オーケストラ & TRUE(from 響け!ユーフォニアム)、DJみそしるとMCごはん、DEPAPEPE、東京消防庁音楽隊、⻑須与佳/清野樹盟/清野さおり/佐久間杜和/樋口千清代、平井秀明、南里沙、RIO(50音順)
https://hibiyamusicfes.jp/

Seiji Kameda
1964 年生まれ。音楽プロデューサー・ベーシスト。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAY、いきものがかり、JUJU、エレファントカシマシ、大原櫻子、GLIM SPANKY、 山本彩、石川さゆり、東京スカパラダイスオーケストラ、MISIA など、数多くのプロデュース、アレンジを手がける。2004 年に椎名林檎らと東京事変を結成し、2012 年に解散。’07 年の第49回、’15年の第57回日本レコード大賞にて編曲賞を受賞。近年はJ-POP の魅力を解説する音楽教養番組『亀田音楽専門学校(Eテレ)』シリーズが人気を集めた。

TEXT=川岸徹

PHOTOGRAPH=太田隆生

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