師匠か、恩師か、目をかける若手か、 はたまた一生のライバルか。第 34 回は、取引相手から プライベートな付き合いに発展したふたり。
VAIO代表取締役社長・吉田秀俊が語る、永瀬哲郎
5年ほど前、前職の取引先としてお会いした時、ある商品の値上げの話をされたんです。でも、穏やかな表情とは裏腹に、なかなか鋭さも持ち合わせていて。それで「日本酒はお好きですか? 一杯どうですか」とお誘いしてゆっくり話をしたら、とてもウマが合った。会社が変わった今も、年2回は一緒に飲んでいます。
会った時は常務だったんですが、会うたびに肩書きが上がっていき、専務、副社長、社長、そして副会長。でも、学生時代、映画を撮られていた、なんて話も聞いて驚きました。しかもチーム意識やシナリオづくりなど、その経験をマネジメントに生かされていると感じました。実際、部下の方も知っていますが、皆さん本当に仲がいい。人をとても大切にされていて、周囲から慕われているのが、よくわかりました。
次はどんな店に連れて行こうかな、と交互の店選びも楽しみのひとつになっています。今後もおいしい日本酒を楽しむ飲み友達を、続けさせていただきたいと思っています。
連れて行ってもらって印象に残っているのは、歌舞伎座の裏の店でしょうか。窓を開けたら、歌舞伎座が見える。滅多に予約が取れない店だと後で聞いたんですが、とても印象に残っていますね。
大坂なおみ選手の活躍に感動して、久しぶりにまたテニスを始められた、という話も永瀬さんらしいと思いました。映画もそうですけど、何か好きなことに夢中になって打ちこめる、というのは、本当にうらやましいんです。とても刺激にもなります。でも、ケガだけは気をつけてくださいよ(笑)。
佐藤商事 代表取締役副会長・永瀬哲郎が語る、吉田秀俊
VAIOの社長に就任されたのは、やはりびっくりしました。新聞にも大きく取り上げられていましたし。前の会社でお世話になったわけですが、きちんと一段落された状態でバトンタッチをされましたから、なるほど、と思って。それで、すぐにVAIO本社の安曇野にも行かせてもらったんです。吉田さんはとにかく明るい。下を向いて歩く人ではなくて、常に上を向いている人。だから、会社も明るくなると思いました。
飲む時は、たわいもない話をしていますが、要所要所でまじめな話もします。そうすると、時々ドキッとするような話も出るんです。いろんな苦労をされてきたんだな、とやっぱりわかる。だから、とても紳士的だし、とてもフェアな接し方をされる。値上げの話をしに行ってもちゃんと話を聞いて、きちんと向き合ってくださる。たくさん学ばせてもらいました。
そしていいお店をよくご存知なんですよ(笑)。乃木坂のお肉屋さんもおいしかった。また時間をつくって、長野にも行きます。
何社も経営者という立場をご経験されているわけですが、印象に残っているのは、現場をよく見ていらっしゃるところ。海外にもよく行かれる。社長だからとデンと座っているわけではない。ご自身で現場に入り、製造プロセス含めてよく勉強されている。そして何より、社員をとても大事にされますよね。
日本酒も、吉田さんに学ぶ一方です。日本酒が大好きな部下ともども、いろいろ教えてください。あとはお互い、いずれは終活もやってきます。そんな話も、この先は一緒にしていけるかなぁ、なんて思っているんです。
Hidetoshi Yoshida(左)
VAIO代表取締役社長。1956年生まれ。大学卒業後、日本ビクター入社。2008年、代表取締役社長。オプトレックス取締役副社長、エルナー代表取締役社長を経て、’17年より現職。
Tetsuro Nagase(右)
佐藤商事 代表取締役副会長。1957年生まれ。大学卒業後、佐藤商事入社。2009年、常務取締役。専務取締役、取締役副社長を経て、’14年に代表取締役社長。’18年より現職。