師匠か、恩師か、はたまた一生のライバルか。第30回は、経営における弟子と師匠。
葉葺正幸が語る、小阪裕司
実はおむすびは好きじゃなかったんです。仕事を始めた時、嫌いな女性と結婚した感じだった。もともとやりがいを感じない商材だったんです。始めたおむすび屋は、まったくうまくいきませんでした。早朝から夜遅くまでひとり働きどおし。でも、全然売れない。
あまりにもお客さんが来ないので、レジを締めて本屋さんに走って、商売の役に立つ本の立ち読みをしました。そこで見つけたのが、小阪先生の本。ただ売り上げが上がるのではなく、楽しくて、お客様に喜ばれる商売。まさに、そんな商売がしたいと思ったんです。立ち読みでは読み切れないので、本を買って(笑)。
でも、いくつか読んでいると、本によって角度が違う。面白いと思って先生の会に入ることにしました。早く事業をよくしたい、と。そうしたら仕事が楽しくなり、生きるのも楽しくなった。おむすびを売るのではなく、おむすびを通じて日本の文化を伝えることが自分の事業なんだと気づけた。人生が変わったんです。
(これよりWEB版限定テキスト)
僕や社員にとっても大切なのは、哲学の共有です。どんな価値観で仕事をしていくか。それを社内でいかに共有できるか。これがあれば、事業はどんどん大きくなる。
でも、最初はひどい状況でしたが、小阪さんはまったく否定から入ることがなかった。ホールディングスを率いる立場になって、見習わないと、と思っています。否定から入らない。小阪さんの立ち居振る舞いを見ながら身を修めたい。僕はずっと弟子だと思っていますので。
そういえば、スターウォーズの凄いコレクションは、小阪さんの知られざる一面です(笑)。
小阪裕司が語る、葉葺正幸
12年前、業績で悩んでおられて私の会にお見えになりました。私は具体的にこうしなさい、という指導はせず、普遍的なことと、その具現化の仕方を教えているんです。それを受け取って、葉葺さんは結果につなげていかれた。セミナーにも熱心に出られ、皆勤賞でしたね。それからお酒や味噌の事業も手がけられて。
本人は飄々として爽やかで、ポンポンと成功しているように見えますが、裏側では懸命な努力があったと思います。大事な工場が焼けてしまったこともあった。でも、周りが応援したくなるような人柄なんです。
ただ売りたい、という人ではない。悩んでいる時は、そのよさが前に出ていなかった。でも今は、関わった人たちがみんなハッピーになっていく。だから、事業もどんどん大きくなっていく。
規模を作れる経営者って、そんなに多くないんです。でも、彼はそういう器だと思う。5年、10年経つともっと大きな企業グループを率いた豪商になられていると、僕は信じています。
(これよりWEB版限定テキスト)
ビジネスの結果を生みだすには、感性的な要素も必要だし、緻密に組み立てる必要もあります。それが両方できないと結果はでない。ただ、彼が面白いのは、あらゆることが緻密というわけではない、ということです。人間的にはけっこう抜けている(笑)。うっかり、をよくやる。でも、こういう抜け具合がまたいいんです。
業績に悩んでいた頃から、自分なりにミッションに気づかれて、それを自分で次のステージに持っていかれました。もうひとかどの人物になられていますから、私も彼から学ぶことも多くて。葉葺さんが名実ともに豪商になるまで、お互い成長し続けていきたいですね。
Masayuki Habuki(右)
和僑商店ホールディングス代表取締役。1973年生まれ。大学卒業後、NSGグループを経て起業。おむすび銀座十石を展開。古町糀製造所、今代司(いまよつかさ)酒造、越後味噌、小川屋の代表も務める。
Yuji Kosaka(左)
オラクルひと・しくみ研究所代表博士(情報学)。大学卒業後、大手小売業入社。1992年に独立し、「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。2000年、ワクワク系マーケティング実践会を創立。