ドイツのプロサッカーリーグ、ブンデスリーガにて10年間、第一線で活躍。 サッカー日本代表チームではキャプテンを務める長谷部誠、34歳。 その溌剌とした若さは、ストイックでアグレッシブな精神に裏打ちされていた。
「精神が肉体を凌駕する感覚がある」
日本人はやはり若く見られますが、そもそもドイツ人は他人の年齢をあまり気にしない。チームメイトの年齢を聞いても、誰も知らないんです。先日自分が 34 歳になったと言ったら、みんなとても驚いてましたが(笑)。それも年齢で人を判断しないということでしょう」
今年で渡独10 年目の長谷部選手。欧州での暮らしは、若さや年齢に対する考えだけでなく、さまざまな変化をもたらしたという。ファッションについても多方面から影響を受けたそうだ。
「ドイツから行きやすく、雰囲気も好きなのでパリへよく買い物に行くのですが、パリの人は近所のカフェで食事する時でさえお洒落。そして男性も女性も仕事や家庭だけに生涯収まることなく、いくつになってもみな着飾って“外”へ向かってオープンに生きていると感じます。それは離婚をネガティブに捉えないことが象徴するように、“失敗してもやり直せる”という風潮がフランスに根付いているからかもしれない。そうしたアグレッシブな姿は若々しいし、お洒落の大切さを再認識するとともに刺激となっています。それとファッションでは、現在のチーム(アイントラハト・フランクフルト)のニコ・コヴァチ監督にも影響を受けました。いつも服装に気を遣っていて、シンプルな服ばかりですが、サイズがきちんと合っていて格好よく見える。上に立つ人間は、服装も大事だと思わせられますね」
長谷部選手自身も日本代表のキャプテンとして、今は人の上に立つ立場にある。そんな重責を全うできるのも、日々の鍛錬とこれまで培ってきた強きメンタルがあるからに違いない。
「日本代表ではキャプテンをやらせてもらっていますが、それは自分で決めたことではなく、周囲から評価していただいた結果です。そうした結果を得るには、努力し続けるしかない。サッカー選手は 30 歳を過ぎたら下り坂といわれます。激しいスポーツなので肉体の衰えは仕方ないですが、鍛錬をやめなければ精神は成長し続け、より強くなる。最近は精神が肉体を凌駕する感覚が、確かにあるんです。そういう意味では自分でも年齢を気にしなくなったし、下り坂という固定観念をぶっ壊していくことに、やり甲斐も感じます。そしてパリの人々のように、死ぬ瞬間まで何かにチャレンジし続けたいと思っています」
そう、評価も若さも他人が決めること。長谷部誠は誰が見ても、若々しくアグレッシブだ。