師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。 第13回は、Bリーグ随一のチームに導いた経営者と、 レジェンドの呼び声高い選手兼オーナー。
島田 私はバスケットボールの世界を知らずに経営者になりました。最初に周囲から、同年代でオーナー兼現役選手の元日本代表のレジェンドがいる、と教わってびっくりしたんです。
折茂 同い年ですからね(笑)。
島田 40代後半ともなれば、階段を上り下りするのもつらいのに(笑)。しかもコートに入ると空気が一変するわけです。対戦したら、本当にゲームに出てほしくない選手で(笑)。
折茂 島田さんについて印象深いのは、ジェッツとの試合を観にきた妻の言葉です。試合会場で誰よりも動いているのは、経営者の島田さんだよ、と。経営者はああじゃなきゃダメだ、と。
島田 いやもう必死でしたから。
折茂 ただ、チームは最初、大変でしたよね。弱すぎて試合にならなくて。それが今や観客動員ナンバーワン。チケットは取れないし、スタンドはチームカラーの赤に染まる。数年で、よくぞここまで、です。本当に。
島田 4年前の天皇杯の後でしたよね、お話ししたいとお誘いしたのは。飲みに行って、日本のバスケはこのままじゃいけない、と熱い思いをお聞きして。
折茂 僕は頭のいい方だな、と思いました。腰もとても低いし(笑)。いろいろ話してみて、この人になら、どんな話でもできる、と思いました。
島田 それから、ホーム&アウェーで飲むようになって(笑)。
折茂 試合に行くたびに夜、飲んでますよね(笑)。
島田 さすがに試合の前だと申し訳ないなぁと思っていたんですが、遅くまで飲んでも顔色ひとつ変わらないし、シュートも外さない(笑)。これで思い切り誘いやすくなりました。
折茂 僕は憧れの選手もいなかったし、誰かに学ぶ、ということにはまったく興味がなかったんですが、島田さんは違う。本当に勉強になるんですよ。やることは早いし、アイデアは大胆だし、有言実行の人だし。
島田 こちらこそレジェンドに大いなる刺激をもらっています。
折茂 リーグの会合でも、言いたいことをガンガン言っていると早くから聞いていました。こういう人がいないと、日本のバスケはよくなっていかない。
島田 自分のチームが、という以上に、Bリーグ全体をもっともっとよくしたいんですよね。
折茂 チームとしては敵ですけど、そういう意識、お互いにまったくないですものね。あ、コートの中では別ですよ(笑)。
島田 いえいえ、ベンチにゆったり座っててください(笑)。
(これより、WEB限定テキストです)
折茂 自分たちだけじゃない、リーグ全体をよくしたい、というのも本当に実践されているのが、すごい。うちの社員もお邪魔した「島田塾」で何もかも包み隠さずオープンにされて。
島田 全部出しますから。出しすぎじゃないか、と社員からは叱られました(笑)。それこそ、評価の仕組みまで教えちゃってますから。でも、それによってBリーグが盛り上がって、最終的にバスケ界がよくなれば、自分たちにもいいことですから。
折茂 日本はすっかりプロ化に出遅れてしまった。サッカーと同じくらいの立ち位置を目指すには、まだまだ改革していかないと。そのためには、僕たちの世代が頑張らないといけない。
島田 でも、バスケ界はちょうど、この世代がやんちゃですね(笑)。これからが楽しみです。
折茂 僕もいつまでも現役ではいられませんが、選手目線でも、経営者目線でも、変えないといけないことを主張したいです。
島田 現役引退したら、間違いなく僕は泣くなぁ(笑)。セレモニーには絶対、駆けつけます。
折茂 いつやめても思い残すことはないんですよ。ずっとやりたかったプロリーグでもプレイできたし。ただ、身体はまだまだ全然、平気なんですよね(笑)。
北海道バスケットボールクラブ 代表取締役兼レバンガ北海道選手 折茂武彦(左)
1970年生まれ。日本大学卒業。トヨタ自動車などで活躍。2011年より現職。16年に日本人選手初の通算9000得点を達成。
千葉ジェッツふなばし 代表取締役 島田慎二(右)
1970年生まれ。日本大学卒業。 旅行会社を経て起業。事業売却後、コンサルティング会社設立。2012年より現職。ジェッツをリーグ随一の人気チームに育てた。