旅は、日常を離れた視点から、自分を俯瞰する機会をくれる。今季も各地に次々とオープンする個性派ホテル。そこには、脳内をリセットし、クリエイティヴな思考が刺激される、極上の非日常空間がある。ホテルを追いかけ世界中を駆け巡るホテルジャーナリスト・せきねきょうこが、リーダーたちのための最新リゾートを厳選する。【特集「旅して、遊ぶ」】
創造力を磨くリゾート案内。旅して、遊ぶ。
初夏の太陽が輝く時期を迎えると、日本の北から南まで、さらに世界へと臆せず旅を続けてきたシーンを思いだす。特に、毎回、帰国の途に就くや否や、翌日から次の旅を計画し、18年間で20回も行き来していた国がある……、中米メキシコだ。
優れた古代文明のDNAを継ぐ誇り高きメキシコ人気質に触れ、“遊び”の天才たちに心奪われた日々。
見知らぬ町のホテルでは、ホテリエの屈託のない笑顔に何度も救われ、三千種類もあるメキシコ料理に舌鼓。
「彼女は魔法にかかってしまった」そう言われながらも通い続けた国だ。
今、自由に世界の空を飛べないまま、こうして2年以上が過ぎている。“もう少しの我慢”と言い聞かせ、じっとその時を待ち続けてきた私たちトラベラーも、そろそろ限界。毎日、悶々とするだけで、時は追いつけないほどのスピードで過ぎていくのに動けない不条理を感じる。
そんな状況下、メキシコから奇跡の知らせが届いた。ホテルを経営する友人からの“新規ホテル開業”のメールは、ジャングルに佇むエコリゾート「Hotel Terrestre」への招待だ。
そんな折、改めて我が国の状況を見直してみたら、日本各地からも続々と開業の知らせが届いていた。
日本の新しいホテルは、世界のどこにも負けず繊細で個性的、地域の奥深い伝統や文化を継承し、西洋文化との融合ももはや匠の域に。和食はとうに世界が認める遺産だ。
本特集では、私たち日本人でさえも憧れる古都、京都の新規開業を始め、穏やかな瀬戸内海の極上ホテル、競輪場と一体型の画期的なホテルなど、満足度の高いホテルを選び、その斬新なコンセプトを紐解いてみた。
旅は人生のエッセンスでもある。
いつかまた、空を自由に飛べる時が来たら、平和な翼に乗り、ホテル目的の贅沢な旅に出よう!
残りの人生、世界の秘境ホテルや、国内のひっそりとした隠れ宿を訪れ、学び、遊び、ホテルが宿す秘話や興味深いストーリーを綴りたいと細(ささ)やかな夢を描いている。
ホテルジャーナリスト
せきねきょうこ