旅のデスティネーションとなり、至福の時間をもたらしてくれるホテル。自由に旅ができるその日のために、真のもてなしが体感できるホテル選びの神髄を達人が伝授! 【シン・男の流儀】
徹底的にリサーチし、スペシャルを味わい尽くす
ホテルの開発や運営を行うTRUNKを率い、プライベートとビジネス合わせ、ここ15年だけでも1500軒以上の世界各国のホテルに滞在しているという野尻佳孝代表。
「僕が好きなのは、オーナー色が強く、コンセプトが明確な、独創性の高いブティックホテル。情報は、僕の嗜好やライフスタイルを知る友人や知人をはじめ、TRUNKが加盟しているデザインホテル所属のオーナー達から得ることが多いですね。逆に、オンライントラベルサイトの口コミは参考にしません。どんなアクティビティや設備があるのか、周辺地域の特色についてなど事前にジェネラルマネージャーやコンシェルジュに聞くことで、サイトには載っていない情報を得ることができます。これは、プライベートでも、視察旅行でも同様。気になった情報をまとめると100ページを超えるほどの『旅の栞』ができることもあります(笑)」
スペシャルを体験すべく予定を変更することも
ホテルにチェックインした後も、情報収集は怠らない。ホテルスタッフやゲストと積極的に交流し、そのホテル、場所ならではの楽しみ方を探る。
「ホテルに集う旅好きと、お互いの“UNKNOWN(未知のこと)”を教え合うのは、すごく楽しい。ブティックホテルは、それぞれスペシャルがありますからね。それをいかに引きだし、体験するかが、醍醐味だと思います。郷に入れば郷に従え、です」
2年前、家族でオマーンのデザート・ナイツ・キャンプに滞在した時は、砂漠ならではのバギーバイクやキャメルサファリを楽しんだうえに、シェフから「この土地ならではの名物料理を食べてほしい」と言われ、予定を変更して宿泊を延ばしたという。
「2日間かけてつくる料理だったので延泊に(笑)。スタッフの家にも招待され、オマーンの伝統文化に浸り、忘れがたい経験ができました」
ホテルステイを堪能するため、TPOを意識した装いをするのも野尻流。たとえ荷物が増えても、その場でどんな体験をしたいかによって服や靴を用意する。
「滞在の目的や場所によって変わりますが、間に合わせ的なファッションだと、なんとなく居心地が悪い。それよりは、シーンに合わせラフにしたり、フォーマルにしたり、その時々のお洒落を楽しむほうが好きです」
手間や時間を惜しまず、どん欲に遊び尽くす。ホテルを楽しむ最大の秘訣は、その心意気なのかもしれない。
スローライフを満喫するなら
メドゥファルー島に位置するヴィラタイプのホテル。水上ヘリコプターから降りてチェックインし、靴を預け素足で施設内を過ごす。水上ヴィラにはラグーンにつながるスライダーが設けられ、ベッドルームの屋根はオープンに。「日中は童心に返ってアクティブに遊び、夕暮れ時は、海上に設けられたスクリーンで映画を見ながらチルタイム、夜はベッドの上で満天の星を眺める。最高にリラックスできるホテルです」
いつかこんなホテルを営みたい
1910年築の邸宅をオーナー夫妻が購入し、6年の歳月をかけてホテルへとコンバート。「とにかく洒落ていて、居心地も抜群! 客室にレストラン、ラウンジまで、どこをとってもオーナーのセンスを感じますし、活けてある花からおやつまで、すべてが行き届いています。家として住むのも素敵ですし、仕事場やゲストハウスとしても魅力的。老後は妻とふたりで、こんなホテルを営みたいですね」
デジタルデトックスをするなら
コンセプトは、「地球に泊まり風土から学ぶホテル」。アイヌ民族の伝統建築をモチーフにしたものなど、5棟の宿泊棟は、どれもユニークかつサステナブル。「家族で訪れ、大根を収穫して自分たちで調理したり、釣りや乗馬をしたり。五右衛門風呂を造ったのも楽しい思い出です。ホテルに趣味嗜好を伝え、アクティビティをアレンジしてもらうと、より楽しく、充実した滞在になると思います。デジタルデトックスにも最適」
大自然と一体になれる
アフリカの自然と野生動物を保護するエコツーリズムを、タンザニアなど4ヵ国で、15のラグジュアリーロッジ&キャンプを展開するシンギタ。「ヌーの大群の移動に合わせてキャンプ場所が変わるなど、移動型。大自然の中にありながら、設備も食事もホスピタリティも極上。リゾートホテルの進化版です。タンザニアのセレンゲティ国立公園の滞在はコロナで断念しました。終息したら真っ先に訪れたい」
パーティを開くなら
元銀行だった歴史的建造物をリノベーション。1階には複数のレストランやラウンジ、カフェが入り、金庫だった地下はバーフロア、その下にスパや室内プールが併設される。「金曜の夜は、1階中央で生演奏が行われクラブ状態。それ目当てに長蛇の列ができるなど、エンタテインメント性が高いホテルです。毎年誕生日に友人・知人を招いてパーティをするのですが、50歳の誕生日はここを狙っています」
クールなルーフトッププール
「ウエストハリウッドの住宅街にあって、とにかく洒落ています。僕が一番気に入っているのはルーフトッププール。朝食をとり、まったりと読書をし、夜は生演奏を聴きながら酒を飲む。宿泊者以外でも、ホテル側が認めたヒップスターはルーフトップに出入りできるのですが、場所柄、役者志望のスタッフが多く、オーディション会場のように見えてしまう(笑)。そんなところも楽しいです」
野尻佳孝のホテルの流儀
1. 旅先の情報は仲間や現地の方から収集
2. 「郷に入れば郷に従え」の精神で
3. TPOに合わせたお洒落を楽しむ