ホテル海外旅行が制限されている今、日本のよさを見直す旅への注目が高まりつつある。ひっそりとプライベート感に溢れ唯一無二の体験ができる滞在のスタイル。自分の時間を取り戻せる空間でゆったりと過ごす、そんなホテル&宿を紹介。
建築家・石上純也氏が約4年かけて造りあげた「水庭」
豊かな自然と美しい渓流に恵まれた栃木県・那須横沢。静かな時間が流れるこの場所にアートビオトープ那須はある。2007年のオープン以来、自然とアートをテーマに掲げた文化リゾート施設として数多の宿泊者を虜にしてきた。
人々が目当てに訪れるもののひとつが、建築家・石上純也氏が約4年かけて造りあげた「水庭」だ。318本もの落葉樹を取り囲むようにして配置された大小160の池、地面を覆いつくす苔、随所に置かれた飛び石――。
これらが織りなす景色は季節の移ろいを感じさせる。緑が芽吹く春夏の時季はもちろんだが、乙な楽しみ方はまさにこれから。木々が色づく秋や純白の雪の中に池が鮮やかに浮かび上がる冬は実に風情があり、しみじみと心に染み入るのだ。宿泊者は好きな時間に散策できるので、靄(もや)が立ちこめる朝、木々の間から光が差しこむ昼、満月に照らされる夜など、さまざまな表情を見せる水庭に身も心も預けてしまいたくなる。
魅力はこれだけではない。’20年にはレストランと、建築家・坂ば(ん)茂氏の設計によるスイートヴィラが新たに加わった。清らかな渓流を楽しめるよう、傾斜を生かして配置された14棟15室のヴィラは完全独立型。テラスやバスルームの窓は収納でき、完全に開放することで室内からでも眼前に迫る自然と一体になった気分に浸れる。客室が独立しているため、他の宿泊者と鉢合わせすることがほぼないのも特筆すべき点だ。さらに部屋の一角には厳選した美術品を展示する棚もあり、アートと一緒に過ごす時間も体験できる。
レストランガイド『ゴ・エ・ミヨ』にも掲載されたレストラン「μ(ミュー)」では、千葉拓海総料理長を中心に、20代のシェフたちが腕を振るう。若い感性がほとばしるフレンチコースを彩るのは、近隣で採れた素材だ。
40キロ圏内で生産された食材を活用する「25マイルフード」の考え方をもとに、栃木を表現するようなアートフードの可能性を追求することこそが、「μ」のモットーである。五感を刺激する魅惑のハーモニーを、ぜひ味わってみてほしい。
観光地として人気の高い那須には、レジャースポットも数多くあるが、旅行の楽しみ方はアクティビティだけに限らない。自然に包まれた自分だけの空間で暮らすように旅をすることこそが、アートビオトープ那須が提唱する「贅沢な時間の過ごし方」なのだ。
栃木 那須
アートビオトープ那須
住所:栃木県那須郡那須町高久乙道上2294-3
TEL:0287-74-3300
客室:15室
料金:ひとり¥60,000~(1泊2食つき、税サ別)
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