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2020.12.12

【中田英寿/にほんもの外伝】名シェフが惚れ込む『NOTO高農園』の自然農法で栽培された野菜<石川②>

2009年から’15年の約6年半、のべ500日以上をかけて、47都道府県、2000近くの場所を訪れた中田英寿。世界に誇る日本の伝統・文化・農業・ものづくりに触れ、さまざまなものを学んだ中田が、再び旅に出た。

中田英寿/に・ほ・ん・も・の外伝

脱サラして“土”から作り上げた奇跡の野菜畑

ワニの口のように日本海に伸びる能登半島の、ちょうど口にあたる七尾湾に浮かぶのが能登島。長閑(のどか)で風光明媚なこの島は、能登半島との間に橋がかかっていることもあり、石川県の人にとっては手近な観光地として知られているようだ。高 利充さんは、20年ほど前、この能登島に移住し自然農法を始めた。金沢出身ながら当時は福岡で営業の仕事をしていたという高さんと鹿児島出身の妻・博子さんは、この島の自然と“土”に魅せられ、脱サラして農業の道を歩きはじめた。

「『安心・安全でおいしい野菜を作りたい』という思いで能登島に来ました。でも最初の5年間はほぼ収入がなかったので、漁師のアルバイトをしながら畑を耕していました」

高農園

能登島の土は、鉄分やミネラルを多く含む赤土。だが、そのままでは野菜づくりに適さない。高さんは土壌検査を繰り返しながら、草や緑肥をすき込み、微生物の力を借りて、徐々に地力を上げていったという。そんな努力が身を結び、高農園の無農薬野菜は徐々に人気となり、現在では東京や大阪など全国120店以上のシェフからの注文が入るようになった。

「実は今回訪問したのも、いろんなシェフから高農園の野菜がおいしいという評判を聞いたからなんです」(中田)

「僕も妻も食べることが好きなので、いろんなレストランに行って、料理のことはもちろん、皿やカトラリーにあう野菜はどんなものなのかということを教えてもらっていたんです。そのうちにシェフのほうから日本にまだない野菜を作ってみないかというようなリクエストをいただくようになりました」(高さん)

そんなリクエストにこたえているうちに、品種はどんどん増えていった。20haあるという畑で育てられている野菜は約300種。カブだけでも伝統種から西洋種まで15種類以上あるという。

「日本では誰も作っていないといわれると、よしやってみようと(笑)。それを繰り返しているうちにどんどん品種が増えていったんです」(高さん)

高農園

一見、同じような葉が並んでいるように見える畑だが、引っこ抜いてみると、赤や白いろいろなカブや大根が姿をあらわす。

「地力を維持するためにどんな工夫をしているんですか?」(中田)

「ひとつの土地で同じ野菜を続けて育てないで、ローテーションするようにしています」(高さん)

コロナ禍の自粛期間中は、飲食店用の出荷がパッタリと止まってしまった。だが、個人向けの通信販売をはじめたところ、口コミで人気を呼び、多くの注文が入るようになったという。

「お付き合いのあるシェフの方々がレシピ紹介などに協力してくださいました。本当に感謝しています」(高さん)

高農園

石川の旅から東京に帰って、すぐに高農園の野菜を注文した。しばらくして届いたのは大きなダンボール箱。そこに入っていたのは、加賀れんこん、赤土紅はるか(サツマイモ)、男爵いも、小松菜、万願寺とうがらし、コールラビ、赤たまねぎ、赤土カブ、ケール、からし菜、白菜など、15種類以上の野菜たち。それぞれの調理法を記したメモも同封されている。サラダ、煮物、炒めもの……食べても食べてもダンボールには野菜が溢れている。そして言うまでもないが、どの野菜も香りや味が力強い。味が濃いから、調味料も最低限。まさに主役級の野菜たちだ。シェフたちがこぞって取り寄せるのも納得だ。こんな野菜を食べてしまったら、普段買うスーパーの野菜が物足りなくなってしまうではないか。

 

「に・ほ・ん・も・の」とは
中田英寿が全国を旅して出会った、日本の本物とその作り手を紹介し、多くの人に知ってもらうきっかけをつくるメディア。食・宿・伝統など日本の誇れる文化を、日本語と英語で世界中に発信している。2018年には書籍化され、この本も英語・繁体語に翻訳。さらに簡体語・タイ語版も出版される予定だ。
https://nihonmono.jp/

COMPOSITION=川上康介

PHOTOGRAPH=淺田 創

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