ドジャースとkanzai、大正製薬とプロゴルファー、MLBとセブン-イレブン――。数々の大型スポンサー契約を単独で実現してきたスポーツエージェント・金子真育。難題大型契約をたった一人で締結してきた、その信頼はいかに築かれたのか。著書『GRIP MLBやドジャースから全幅の信頼を得た「ザ・エージェント」』から一部抜粋して紹介する。今回は、日本管材センターとドジャースのパートナーシップ契約の舞台裏⑤。【その他の記事はこちら】

半信半疑が確信に変わった日
――編集部 「方針が固まったことで、契約に向け、一気に話が進みましたね」
――金子 「2023年のクリスマス休暇の前にドジャースとの交渉を急ピッチで進めました。当時の自分のスケジュールを確認すると、めまぐるしく事態が動いているのがわかります」
2023年12月10日に大谷選手のドジャースへの移籍が正式に決まった。年が明けて、2024年1月16日、関根社長がドジャースとの3年契約を最終決断、17日にはドジャースも承諾。19日、関根社長とドジャースのロン・ローゼン上級副社長(マーケティング最高責任者)を含む計3人が初めて対面することになった。金子がこの日、帰国予定だったドジャース関係者に急遽、時間を取ってもらっていたのだ。時間は午後3時から15分間。場所はフォーシーズンズホテル東京大手町の39階にある「ザ・ラウンジ」。天井から床までガラス張りで、東京の高層ビル群と皇居の緑豊かな森が見渡せる。晴れていれば富士山も望める抜群のロケーションだ。ドジャースの面々はチームカラーのブルーのスーツで身を包んでいた。顔合わせの直前まで金子も関根社長も「本当にドジャースは現れるんだろうか」「本当に契約できるんだろうか」と半信半疑で、そわそわしていたという。金子が振り返る。「何しろ、相手はドジャースです。その幹部と会うことなど普通はできません」。身が震えてもおかしくない。
――編集部 「どんなやりとりだったのですか」
――関根(日本管材センター社長) 「誰がどのくらい偉いのかわからない状態でしたが、彼らのプレゼンが手際よくて素晴らしかった。球団の歴史や哲学などを話してくれました。私には、日本管材センターがどんな会社なのかを尋ねました。アメリカとの取引があるのかとか、競合する会社はどこかとか。当社と同じ業界の企業をパートナーにしてはいけないという配慮からでしょう」
「なぜドジャースと契約したいのだとも聞かれました。日本人選手が活躍することになるだろうし、日本管材センターのカンパニーカラーもブルーなのですと伝えました。それは何かの縁ですねと喜んでくれました」
人生で一番の鳥肌
――関根 「そうしたやりとりを終えると、コングラチュレーションとお祝いの言葉をいただいたので、えっ、これで決まったんですねと、つい念を押してしまいました」
――金子 「そこで、サプライズプレゼントですよね。ウェルカム・トゥ・ドジャースファミリーという言葉とともに」
――関根 「あれにはびっくりしたね。ドジャースがブルーの箱を出してきて、どうぞ開けてくださいと言うんですよ。そうしたら大谷選手のユニフォームが出てきたんだから。人生で一番の鳥肌が立ちました」
実は、金子はこの日の記憶が曖あいまい昧だという。「完全に舞い上がってしまって、覚えているのは自己紹介をしたあたりまでです。何しろ、All-Grip を設立したときには想像できなかった光景ですから」。胸が高鳴り、頭が真っ白になった様子が思い浮かぶ
――金子 「それにしても、あの演出は粋な計らいでした。ドジャースは相手を喜ばせ、人の心をつかむ術(すべ)を心得ています。こういうことを含めて、すべてをエンターテインメントとして考えているのだなと思いました」

