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2024.09.23

選手のモチベーションを高めるために必要な「ペップトーク」とは【ロッテ吉井監督】

現・千葉ロッテマリーンズ監督の吉井理人が就任1年目だった2023年に、監督とは何かを考え、実践し、失敗し、学び、さらに考えるという果てしないループから体得した、指導者としてのあり方。選手が主体的に勝手に成長していくための環境を整え、すべての関係者がチームの勝利に貢献できる心理的安全性の高い「機嫌のいいチーム」をつくることこそが重要だと、吉井氏は説く。プロ野球の世界とビジネスの世界に共通する、「強い組織」に必要なリーダーの姿とは。『機嫌のいいチームをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】

青空
Unsplash / marcos-paulo-prado ※画像はイメージ

選手を鼓舞するミーティング

毎日行われるミーティングは、戦略や戦術を徹底するためのものが多い。しかし、戦略や戦術だけを徹底しても、チーム力が高まるわけではない。選手のモチベーションを高めることも重要だが、このモチベーションというのが曲者だ。

プロ野球選手とはいえ、常に高いモチベーションでプレーできているわけではない。ときにはモチベーションを上げるための「ペップトーク」が必要だ。ペップとは、元気、活力、活気を意味する言葉である。

2023年シーズン、私はモチベーションを上げるミーティングを何度か行った。あまり得意な分野ではないが、監督としてやるべきときはやらなければならない。

前半戦、若手が思うように結果を出せなくても、チャンスを与えていた時期がある。しかし、結果にかかわらずチャンスは与えられるものという意識になってしまい、プレーに覇気が感じられなくなった。

具体的には、内野に凡打を打ってしまったとき、全力疾走せずにバットを持ったまま走る選手が出た。そこで、そういうプレーで本当に優勝できるのかと問いただした。

8月20日は当時3位だったソフトバンク、首位オリックスとの6連戦が始まるという難しい局面で、選手たちをグラウンドに集めて、炎天下のミーティングを行った。

「自分たちの目的は何なのか」
「勝つためにできることは何なのか」

改めて自覚してもらうために、質問を投げかけた。「優勝」という言葉も何度か出して、気持ちを引き締めるきっかけを作った。

自分の言葉で語らせる

シーズン終盤、9月20日にオリックスに優勝を決められた試合で、選手があまり悔しそうにしていないように見えた。少なくとも、私にはそう思えた。シーズンは終わっていないのに、諦めているように見えた。私は悔しさを持つことの重要性と、次にまだ目標はあるという意図を込めて、あえて少し強めの喝を入れた。

京セラドームでの試合後、選手たちを三塁側ベンチ裏にある食堂に集めた。食堂にいても、優勝に沸くオリックスファンの地鳴りのような歓声が聞こえてくる。

「お疲れさん。これで優勝が決まった。見てた? あれが勝者の音だ。われわれは経験したことがないけど、覚えておいてくれよ」

私は、こう言ったあと、近くにあったゴミ箱を放り投げた。それがむなしく転がる音を選手たちに聞かせ、続けてこう言った。

「そして、これが敗者の音や。覚えておいてくれよな。これから、クライマックスシリーズでやり返すチャンスはあるから、みんなも気持ちを切り替えて頑張っていこう」

いつもより強い調子で言葉を並べた私は、選手を見渡し、こう言った。

「なんか言いたいことある人いる? この際だから何でも言って」

そう言って、中村奨吾選手、横山陸人投手、安田尚憲選手を指名した。「申し訳ないっていう気持ちしかないです」「不甲斐ないです」など、彼らはそれぞれの悔しい思いを言葉にしてくれた。

私が指名したのは、この試合のキーマンと、シーズン通してのキーマンだった。キャプテンはチームをまとめる存在として、語らせなければならなかった。

横山投手は、オリックスの優勝がかかったゲームで、勝っている場面で出たのに、球場の雰囲気にのまれて気持ちが揺れ、失点を重ねてしまった。しかし、まだ22歳の伸びざかりの若手で、これから勝ちパターンの一角として頑張ってもらわなければならない。

最後に指名した安田選手は、マリーンズを背負って立つ大砲候補で、彼が打たないと勝てないという選手になってほしいので話をさせた。

重要なのは、やはり語らせることだ。自分で言葉にしないと、すぐに忘れてしまう。ただ訓示を垂れるだけのミーティングにしないよう意識した。ちなみにゴミ箱を投げたのは演技で、チームスタッフには「こういうことをするけど気を悪くしないでほしい」と事前に伝えてあった。

マリーンズでは、これまでの監督でペップトークをするようなミーティングを開いた監督はあまりいなかったようだ。

そもそも、日本のプロ野球では、監督が選手たちを集めて毎日ミーティングをする習慣はない。私は、区切りのポイント、負けが混み出したときなどにモチベーションを高めるミーティングを行った。

すると、選手は忘れていたものに気づいたり、刺激を受けたり、諦めそうな気持ちが奮い立ったりして、動きが変わった。

TEXT=吉井理人

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